orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

やしあか動物園の妖しい日常 14〜15話

[双子の猫娘


「そっか、ごめんごめん。僕の考えが浅はかだった。人間社会で魔法なんか使って見つかったら、日本中の話題になって普通に暮らせなくなるよね」


「理解して貰えたみたいで良かったです」


 今朝の通勤もホウキで飛んで来れたらどんなに楽だったことか...折角の能力を活かせないのは残念で仕方がない。


「それで黒川さんはお金を貯めてどんな車が欲しいの?」


「あ、まだ具体的には決まってなくて、買えるようになった時に軽自動車で可愛いのを探すつもりです」


「じゃあ仕事を頑張らないとだね」


 そんなたわいもない会話をしていると、ドアを「コンコン」と叩く音が聴こえた。


 久慈さんが席を立ちドアを開ける。


「日替わり定食持って来たよ〜」


 顔がそっくりな高校生くらいの少女二人が、注文した日替わり定食を持って部屋へ入りテーブルに置いた。


「黒川さん、この二人は世にも珍しい双子の猫娘でワラとカヤ。赤いリボンを着けてるのがワラで、こっちの青いリボン
の方がカヤだよ」


 なるほど、双子だから顔がそっくりだったのか。猫娘は漫画やアニメなどで良く出て来るので知ってる。二人の人間の姿はとても可愛いらしかった。


「今日初出勤したばかりの黒川紗理亜です。ワラさん、カヤさんよろしくお願いします」


「あたいはワラ!よろしく〜」


「あたいはカヤ!よろしく〜」


 笑顔の二人がハモるように返してくれる。


「ごめん久慈っち!今はバタバタしてるから仕事に戻るね!」


 ワラさんがそう言って二人は慌しく部屋を出て行った。


「お、美味そうだ早く食べよう。いただきます」


「ですね、いただきまーす!」


 わたしが定食を食べる時は、必ず一番最初に味噌汁を飲む。


「美味しい!」


 思わず声に出してしまったけれど、本当に驚くほど美味しかったのだ。


 因みにわたしは料理の味に少しうるさいグルメだったりする。


 飲食店で定食に付いている味噌汁の味が薄かったり、濃ゆ過ぎたりするとガッカリするし、ましてやインスタントを提供するいい加減な店には二度と行かなかった。


 そんなわたしをうねらせるほどのこの味噌汁。とにかくだしが上品で作り手のこだわりを感じる。


 次にチキン南蛮を口の中に入れた。


 激うま!肉の上に乗っているタルタルソースが堪らなく絶品!


 チキン南蛮と言えば、肉の質や揚げ具合も重要だけれど、やはりこのタルタルソースの出来次第で評価が大きく変わるだろう。
 具材のたまごや玉ねぎと調味料のバランスが素晴らしく、今まで数多く食べたタルタルソースの中でもトップクラスだった。

 

 


[絶品!日替わり定食]


 肉自体の味と食感も良く抜群に美味い!


 これはエビフライにもかなり期待してしまう。


「サクッ」


 う~、期待通りの味と食感でエビの旨味もしっかりしている!


 なんだこの定食...最高か!?と思うほどの完成度の高さ。


 わたしが至高の日替わり定食で幸せなひと時を堪能していると。


「ご馳走様」


 早っ!?久慈さんが手を合わせて食事の締めをしていた。


「久慈さん食べるの早過ぎじゃないですか?もっと味わって食べたら良いのに」


 おっと、気持ちが入ってしまい、人のペースについ余計な口出しをしてしまった。


「いやあ、黒川さんが幸せそうな顔して食べてるから、声も掛けづらくて黙々と食べるしかなかったんだよ」


 うっ!?何だか非常に申し訳ない...


「すみません。夢中になると自分の世界に入り込んでしまって、周りが見えなくなる事があるんです」


 久慈さんがわたしの顔を見てニコッとする。


「うん、そうみたいだねぇ。食事するのを見てて良く分かったよ。でも、決して悪い事では無いし、僕も嬉しい気分になれたから良いんじゃないかな?」


「そう言って貰えると助かります。あの、もう少し時間掛かりますけど良いですか?」


 この絶品日替わり定食をゆっくり味わって食べたい。


「僕はスマホでもいじってるから、黒川さんのペースで全然構わないよ」


「では、お言葉に甘えさせていただきます」


 わたしは食事を再開してゆっくりしと味わいながら食べた。


「ん~!美味しい!」


 


 たっぷりと食事を堪能して休憩を取り、リフレッシュして午後のお仕事開始!
 と言っても何をするのかすら知らない。


「午後は1時間ほど担当の場所に戻って、観覧に来るお客さんに動物の紹介などをするんだ。黒川さんは初日で勝手が分からないだろうから、僕が実際に接客してるのを見て勉強すると良いよ」


「はい!しっかり見て勉強します!」


 わたしと久慈さんはやしあか食堂を出て、徒歩で担当の場所へと向かった。


 仕事とは関係無いけれど、歩きながらやしあか食堂について訊いてみる。


「あの、やしあか食堂の料理ってどんな人が作ってるんですか?美味しすぎて気になったんですよねぇ」


「ハハハ、黒川さんもやしあか食堂を気に入ってくれたみたいだね。え~っと、料理はスタッフ三人で作ってるんだけど、その中の料理長をやってる妖怪が凄いんだ」


「あっ!?そうですよね。作ってるのは妖怪ですよね」


 妖怪が料理するイメージが全く持って湧かない。
 それに一瞬だけど忘れていた。園内で働いている人間はわたし達だけで、あとはみんな妖怪だということを。


===============================
過去の作品はこちらにまとめてあります!
https://shouseiorutana.com  

小生おるたなWritten by Orutana Nagarekawa shouseiorutana.com


===============================