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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ11

 お銀が二人に近づくにつれ、徐々に会話が聴き取れて来る。

「...それで其方自ら武蔵に決闘を申し込んだのだな?」

「左様にございます。しかしながら武蔵殿は全盛期をとうに通り過ぎ隠居しているようなものでしたので、決闘を渋られ何度も足を運びましたが...五度目にしてようやく受けてくれた次第で」

 どうやら仙花と雪舟丸は宮本武蔵との決闘の話しをしているらしい。

「してどうだったのだ?武蔵の実力のほどは?」

 仙花は学問を学んだりすることも嫌いではなかったけれど、武術やこういった類の話しには一際興味を示す。

「互いに剣を構えた時点で武蔵殿から凄まじい覇気を感じましたな。全盛期を過ぎているとはいえ、通って来た修羅の道より蓄積した経験値は想像を絶するもの。僅かでも目を離せば瞬殺されてしまうのではと思うどの隙の無さでした...」

「ほうほうそれでそれで」

 ここで歩み寄ったお銀は仙花の横に並び、雪舟丸の武勇伝を黙して聴くことにした。

「当時若く血気盛んだった私はその覇気に臆することなく先手を打ち、出し惜しみせずいきなり奥義の蓮撃をたたみ込み攻め立てたのですが...武蔵殿は老体とはとても思えぬ動きで、その全ての攻撃は受け流し弾かれたのです」

「ほほぅ、老いて益々盛んなお人だったのかな?」

「...いえ、気力は兎も角、身体の衰えははその外見からも衰えは明らかでした。手足にあったであろう強靭な筋肉は姿を消し去り、華奢と言っても過言ではなかったでしょう。もし、全盛期の武蔵殿であれば拙者の攻撃を弾いたのち、そのままの勢いで反撃転じたかも知れませぬ...」

 雪舟丸がそこまで話すと、黙って聴いていたお銀も興味が湧いたのか質問する。

「しかし、芥藻屑どもを斬った雪舟丸殿の剣技を見れば、あれだけの剣速の攻撃をそのような老体で受けきれるとは正直思わないのだが?」

 お銀の問いにずっと無表情だった雪舟丸がフッと笑う。

「拙者と武蔵殿が勝負したのは十年も昔の話。拙者は武蔵殿に勝ったからといって満足などせず、強気者を求めながら修行を積んで来てこその今があり、己の全盛期は未だ来ておらぬものと思い及んでいる。当時の拙者と今では比較にならぬ強さを身につけたという自負は持ち合わせているよ」

「なるほどのう。して決闘の決着はどのようにしてついたのだ?」

 仙花は決闘の顛末を知りたくて知りたくてそわそわしていた。居眠り侍がそれを話し終える前にまた寝てしまうのではないかという危惧もある。

 

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