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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ76

 と、韋駄地への攻撃範囲に到達しようかという直前、仙花が高く跳躍し身体を自転させて吠える!

「烈風竜巻斬りっ!」

 十六の少女が生まれて初めて繰り出した技の名は安直な名称だったが、自身の腕力に体重と遠心力を加え強烈な一撃を生み出す!

「パキィン!ザンッ!」

「ぬおっ!?」

 韋駄地が防御するため反射的に出した刀を木の枝でも折るように容易く叩き折り、勢いそのままに鎧ごと生身の胸を斬り裂いた!

「ザンッ!ザンッ!ザザン!」

 さらに仙花の勢いは止まらず胸にもう一太刀浴びせ、回転しつつ横をすり抜ける際に脇腹、最後に背中にも一撃を浴びせると、韋駄地との間合いが空いたところでようやく回転を止めた。

 斬り裂かれた傷からは血が噴き出し、堪らず片膝をつく韋駄地。

 仙花の方は少し目が回ったようで揺れる身体を上手く止めることができず、酒でも呑み酔っているかのようにフラついている。

「ハハハ、こ、これはぶっつけ本番でやるべき技ではなかったかな。も、もっと三半規管を鍛えねば、なるまい...」

 仙花に「助太刀無用」と釘を刺され、心配しつつ眺めていた蓮左衛門が拍手して歓喜する。

「仙花様!素晴らしい技にござる!」

 隣りで同じく傍観していた雪舟丸が呟く。

「韋駄地に深傷を負わせた技は確かに素晴らしい...だが、まだ決着はついておらぬ.....」

 雪舟丸の見解は正しかった。
 並の人間ならば二度と立ち上がって来れぬであろう深傷を与えたにもかかわらず、曲げていた膝を真っ直ぐ戻して韋駄地は立ち上がった。

 よく見ればあれだけ勢いよく流れ出していた出血も止まっている。

「くくく、何十年振りか、久しく己の血を見たわ。さっきまで戦っていた娘とはまるで別人のような動きに単純な発想の技だったが見事な威力よ。この短時間で腕がかなり上がっているようだ...」

「お、おう。だから一味も二味も違うと言ったであろう...と言うかお主、やはり肉体が鬼化しておるな。あれで死なぬとは途方もない回復力よ」

 目の焦点が合い出した仙花は冷静にそう分析していた。

 実際のところ韋駄地は遠い昔の幼き頃より、自身の肉体と引き換えに「鬼」と契約し人間離れした力を手に入れていた。だからこそ島原の乱を生きの残り、「鬼武者」と称されるほどの強さを身につけ、七十近い年齢にも関わらず若々しい肉体を保つことができているのである。
 仙花が一騎討ち前に彼へ向けて言った見立ては、傷を短時間で癒してしまう回復力を除いては概ね当たっていたというわけだ。

 

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