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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ77

 人と、得体の知れぬ怪異との非現実的な命懸けの契約。
 幼き頃より「鬼」と契約したであろう韋駄地が、果たしてどういった経緯でそれを成した得たのか?それとも、自らの意思とは無関係に結んでしまったのか?いずれにしても当の本人に訊かなければ謎のままである。

 好奇心旺盛な仙花が訊くという流れもあろうが、ここは語り手として誰に言われずとも語っておかねばなるまい...


 
 韋駄地源蔵の生まれは、将来「九州地方」と呼ばれることになる西海道(さいかいどう)所属の薩摩国であった。

 由緒正しき武家の五人兄弟の長男として生まれた彼は、韋駄地家の跡取りとして厳しくも大事に育てられた。

 彼は十三の歳になるまで身体は人並み以上に丈夫であり成長が早く、頭も周りの子供達とは一線を画し、周りの大人達からは「神童」と呼ばれたほどである。

 無論、彼の両親は優秀な長男をたいそう可愛がり、下の弟や妹達にも自慢できる兄を見習い精進するよう教えていた。

 弟二人に妹二人の五人兄弟であった韋駄地は、両親の思惑を知ってか知らずか弟や妹達の面倒をよく見て可愛がり、彼らからも信頼され大いに慕われていたものである。

 人柄は朗らかで責任感が強く、いつも柔かに見える顔つきだったものだから、大人達からも好かれる方言で云うなれば「ヨカニセ」な男であった。
 
 そんな将来有望であった筈の韋駄地源蔵がなぜ、側から見れば悪夢の如き人生を歩むことになってしまったのか?

 勿論、天草四郎の下で戦った「島原の乱」の敗戦が影響していることもあったが、真に人生を左右する出来事があったのは十三歳になった夏の頃である。

 この夏は例年に比べ日照りの日が長く続き田畑の水不足が深刻化し、ただでさえ食糧不足な時代に追い討ちをかけ、影響をもろに受けた町や村では多くの餓死者を出した。

 韋駄地の住まう町でも多くの餓死者が現れ、最悪というか当然の流れというか、様々な種の疫病が大流行してしまう。

 彼は持ち前の体力と正義心から、病にかかった人々に声をかけて元気付け、日常の家事などを手伝うこともしばしばあった。

 この行為は助けを受けた人々から感謝され、賞賛すらされたものだが両親としては鼻が高い反面、彼自身が病にかかってしまうことを懸念し恐れていたものだが、不幸なことにこれが現実化してしまう。

 病に倒れた韋駄地は家族の居る屋敷から少し離れた小屋に隔離され、家族の誰とも顔を合わすことのない闘病生活へと入ることになる。

 少年の人生を狂わせてしまう長く孤独な時間...

 

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