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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ35 迷いの森

「危険...か、だがどのような試練が待っていようとも儂は乗り越えていかねばならぬ。して、その魔窟とやらで何をすれば良いのだ?」

 仙花一行の旅の最終目的は各地で目撃され、現在は薩摩の地に集っているであろう百鬼夜行を形成している怪異達の討伐である。
 光圀は百鬼夜行に関する情報を秘密裏に仕入れ、この事態を放っておけば必ずや全国規模で多大な被害が生じることと想定し、仙骨と仙血という普通の人間とは異質な体質の仙花に希望を託したのだ。
 この任務が命懸けになることを彼女は当初より理解している。だからこそ、生死を分けるほどの試練が来ようとも決して挫ける訳にはいかないのである。

 真如は初めて仙花と目を合わせた時、その余りにも真っ直ぐで純粋な瞳が眩く感じて目を逸らしたけれど、今は互いに言葉を交わし打ち解け、目と目を合わせて会話することが出来ていた。

「未だ若いというのに強い女じゃて...魔窟の中は蜘蛛の巣のように複雑な造りをしておる。おまけに怪異やら何やらが潜んでおってのう。情けない話しじゃがぁ、儂は怖くて怖くて兎に角叫びながら走りに走ったものじゃった。そうしたらばいつの間にやら灯りの灯る部屋にたどり着いてのう...っと、儂が話せるのはここまでじゃな。この先の話はお主自身が身を持って体験し乗り越えねばならぬ試練になるのじゃから...」

「...承知した。だがあと一つだけ教えて欲しいのだけれど、出雲大社の森に魔窟があるのは良いとして、大凡の場所を教えては貰えぬだろうか?」

「...それがのう...残念ながら分からぬし覚えてもおらんのじゃよ。余り世には知られておらぬのじゃが、魔窟の存在する森は『迷いの森』とも呼ばれておってな、どういうわけか分からぬが、あの森には人を惑わす不可思議な力が働いておってなぁ、一度足を踏み入れた者を困惑させ迷いに迷わせてくれおるのよ...儂は魔窟に辿り着くまでに三日三晩もの時間を要したものじゃった。だからのう、正直なところ場所はさっぱりなんじゃなぁ...」

「ふむふむ、魔窟に辿り着くまでも一筋縄ではいかぬということじゃな。極めて承知したぞ。おっと...真如様...心より感謝致します」

 仙花は長椅子から立ち上がり、礼儀正しく畏まってお辞儀した。
 その姿を眺めていた真如が初めて柔かな笑顔を見せる。

「くっくっくっ、よいよい。儂も何十年ぶりかに楽しい時を過ごさせてもらったからのう。それに、奢って貰った串団子も未だ半分以上残っておる。実に愉快な吉日じゃわい」

 

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