orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第66話 推理

 「想いの線」のは一度発動させるとたった一分ほどで具現化した光の線が消え去ってしまう。

 決して都合よく無制限に効果を発揮するわけではないけれど、光の線が指し示す距離に関してだけは無制限に伸びるのである。

 無制限に伸びる光と聞けば「それは凄い!」と驚く人もいるだろう。だが、無制限に伸びるといっても障害物があればそこで光の線は途絶えるし、対象が付近にいるならまだしも、ほとんどの場合どのくらい離れた場所を指し示しているのか計測不能なのだ。

 「サイコメトリー能力」の方がよっぽど役に立つイメージだが僕はこれくらいで十分だと考えている。

 現状でさえ常人ではなく能力者という異質な存在なわけだし、これ以上チートな能力は僕の精神崩壊を招く恐れもあるかので不要なのである。

 調子に乗ってついつい能力の話しばかりしてしまったが、今最も重要なことは釜戸から取り出し僕の掌に乗ったこの灰と、関係性の深い人物が生きているということにあった。

 僕は光の線の指し示す方向を見ながら対象の人物を推理する...

 取り敢えず、30年前に亡くなった淀鴛さんの両親は生存していないから外すとして、息子である淀鴛龍樹の可能性が大いにあり一番可能性が高いだろう。

 だがもし違ったならば、或いは「おもしろい展開になること請け合い」と言っても過言ではない。
 
 事件のあった当時から今日までの間に、誰かが釜戸を使用したという可能性も無くはないだろうが、その形跡は現場をとことん調べた結果からして特に見当たらず、かなり低確率な可能性だと思われる。

 釜戸が現役で稼働していた頃に、淀鴛さんの家族以外の人物が使用した可能性も同じくらいの確率だろう。

 従って淀鴛さんと再会を果たし、この灰を使って「想いの線」を発動させ、彼では無く別の方向を指し示した暁には...という具合だ。

 まぁ淀鴛さんに光の線が当たる可能性の方が高いわけだから、過剰な期待はしない方が無難ではあるけれど...

 ともかく僕は持参していたビニール袋を三つほどリュックから取り出し、両手で掬った灰をそれぞれに入れたのだった。

「これでよし。さて助手よ、ぼちぼち民宿に引き返すとするか」

「もちろんそれは良いんだけどさぁ。取締役!何か忘れてやぁしませんかぁ?」

 我が探偵事務所は法人じゃないから取締役は存在しないし、彼女の言わんとしていることは百も承知だったが、僕は正直なところ急いで民宿に戻りたかった。

 だって気が付けば、時間の経った外は暗さを増している上に、小雨だった雨が勢い増し増しとなっていたのだから...

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