orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第73話 超大物

 小学3年生になり平均的体重だった僕の身体が一気に持っていかれそなほど引きが強い!

 「ピン!」と張った釣り糸が握る手の指に喰い込む。

 もし軍手を装着していなければ恐らく指の肉は切れていたかも知れない。

 「爺ちゃん!やばいっ!!」、僕は突如として我が身に降りかかった緊急事態に耐えきれず、咄嗟に叫び、僕に背を向けて釣りをする祖父に助けを求めた。

 即座に気付いた祖父が僕の元へ駆けつけ、躊躇せず釣り糸に素早く手を伸ばして握った。

 お陰で僕の手に掛かっていた負荷はゼロに等しくなり、「もう離して良かぞ」と言われ「パッ」と手を離し選手交代。

 今でも決してお大袈裟ではないと言い切れるのだけれど、この命を救われた出来事以降、僕は祖父に感謝し尊敬の念を抱くことになる。現在でいうところのリスペクトといった感じだ。

 敢えて「たられば」の話しをするなら、祖父が少しでも反応が遅れ行動の判断を躊躇していれば、僕は掛かった魚の力と勢いに負け、海に引きずり込まれていたかもしれなかった。

 完全に釣りの主導権を譲り渡し、僕は呆然としながらも「勇者様」の頼もしい後ろ姿を眺め続ける。

 釣り歴60年を超える達人が10分以上も格闘して釣りあげた魚は、出世魚として有名な鰤(ブリ)であった。

 成長と共に呼び名が変わる出世魚
呼び方は地方によって異なり、関東では「ワカシ・ワカナゴ→イナダ→ワラサ→ブリ」、関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」(もしくは「モジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」)となるようである。

 ともあれ船上に引っ張りあげられた鰤は、かつて僕が目にしたことのないほど巨大な鰤で、漁業を営む祖父の見立てによれば、三年以上生き、重さ10kg以上は確実の超大物とのことだった。

 ピチピチの小学三年生にとっては荷が重すぎる相手だったわけである。

 

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