沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい! [恋の病]
あれ!?胸がドキドキしてくる...
と言うかわたしは一体どうしてしまったのだろう?
人のことを想い浮かべるだけでこんなに胸がドキドキするなんて...ま、ま、まさか...これが恋というものなの?
自慢ではないけれど、この歳になるまでわたしは恋というものを体験したことがない。
もし、樹様を想うこの気持ちが恋だとするならば、これがわたしにとっての「初恋」になってしまう。
いやいやいや、ちょっと落ち着いて考えてみないとだめよ...これを初恋だと決めつけるのは早すぎる。
ちょ、ちょっと整理してみようかしら...初めて樹様と逢った時の印象は最悪だったはず...それから師匠と闘う姿に惹かれ...沈着冷静で無表情からの笑顔に胸が高鳴った...
やっぱりだめねぇ。
一人で考えても埒が開かない。
...よし!決めた!
暫くは樹様のことを忘れてしまおう!じゃないとどうにかなってしまいそうだ。
「司様~!樹様がお風呂から上がられました~。どうぞお入りになってください!」
おお!グッドタイミングです真琴さん。お風呂に入って気分転換でもしよう♪
暖かい湯船に浸かってリラックスすれば、きっとモヤモヤした気持ちも洗い流せるのでは?などと期待を込めてお風呂場へ。
色々な事を考えないようにするため少し意識しながら、鼻歌交じりに汗の染みた道着を脱いでいく。
お湯で身体を綺麗に洗い流し湯船に足を伸ばして浸かった。
お湯の程よい温度でリラックス状態になり、天井をぼ~と見ていてふとお見合いの話を想い出す。
まだ予定も立っていないのだけれど想像力豊かなわたしは、お見合い当日に行うであろう剣術の試合の場面を想像していた...
道着を身に纏いシャキッとしたわたしが道場の真ん中に正座して、集中力を高めながらお見合い相手の殿方を待つ。
光の差し込む道場の入り口に目を向けると、遠くから人影がゆっくり歩いて来る...
道場入り口まで近づいてもまだ顔がハッキリしない...
その人影が一言も発せずにこちらへ更に歩み寄る...
遂にわたしの目の前まで来て人影が口を開く...
「お見合いを了承してくれてありがとう。司さん」
いっ!?樹様が笑みを浮かべてそう言った。
「どっ、どういう事なのっ!?」
わたしは思わず声を上げ想像の世界から抜け出した。
樹様のことを考えないようにしていたに顔を想像してしまうなんて...
そう言えば本で読んだか聴いたのかは忘れてしまったけれど、「恋の病」という言葉が頭の中に浮かんだ。
剣士たる者、こういう場合はどうするべきなのかしら...
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