orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ71

「...こやつ...己の世界に浸っておるのか...」 寂しいかな。完全に存在を忘れられた仙花。黙して足元の瓦屋根の瓦を徐に一枚抜き取り... 「こらこらこら、儂を無視するでなーーーいっ!!」 「ブン!」 一人ごとを続ける韋駄地に狙いを定めて思い切り瓦を投…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ70

頭領同士である仙花と韋駄地の戦いは何十合と打ち合っても尚続いていた。 「島原の乱」の終結後より歳を重ね、今や七十近くである筈の韋駄地の剣術は歳相応と成らず、年齢を重ねて鈍るどころか技や体術はより洗練され、「鬼武者」という二つ名の広まった当時…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ69

「ガシィッ!!」 「なにっ!!??」 あろうことか蓮左衛門は強烈な六角金棒の攻撃を両手で掴み止めてしまった! 予想外の展開に鷲尾雷角が動揺する。 「俺様の金棒を素手で止めるなんて...あり得ねぇ...」 鷲尾雷角渾身の一撃の破壊力は計り知れない。或い…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ68

蛇腹の中央社前では、蓮左衛門と鷲尾雷角による激しい、否、一方的な一騎討ちが展開されていた。 「わっ!?っと!」 「ズン!!」 芥五人衆最後の生き残り鷲尾雷角が扱う六角金棒は巨大な鉄の塊のような物であり、それを人間が扱えるなどとは到底思えぬ重さ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ67

可惜夜会心の剣技「月光抜刀牙」は、まず左右に素早く動きながら相手との間合いを縮めて動揺させ、両刀のうち左腕で上から振り下ろす上段斬りが初撃となり、間髪入れず利き腕の右腕による右切り上げの一刀が発動し、相手の身体へ先に到達するは速度に優る二…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ66

「...お主も若くしてその強さとはなかなかのものだぞ」 雪舟丸が決闘相手に賞賛の言葉をかけるなどというのはかなり稀なことであった。 これは彼の人間性云々ではなく、戦う相手のほとんどが瞬殺されてしまうからなのだが... 「嬉しいなぁ...では、お褒めの…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ65

韋駄地が長槍を雑に放り投げ、先程抜いた刀一本で構えを取る。 「貴様は殊の外素早い。この刀で勝負するとしよう」 相手の実力を認めたのは仙花だけではなかった。 彼女の速い動きに対応するには攻撃範囲の広い長槍も、速く鋭い攻撃を展開できる刀が適当と韋…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ64

「.............俺の名を知っているのか小娘...ならば俺の過去についても知っているのか?」 無表情で問いかける韋駄地の声は存外若かった。普通に計算すれば現在七十近い老人の筈である。重く渋い声質だとはいえ、とても老人の出す声には聴こえない。 「そ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ63

「島原の乱」は多くの死者を出したものの、幕府軍の力によって鎮静し終わりを迎えたのだが、二人の重要人物の生死、若しくは行方が謎のままであった。 一人は討伐隊の前から忽然と姿を消した韋駄地源蔵。そしてもう一人は、指揮官であり指導者でもあった天草…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ62

残った討伐隊の十数人は百人居た兵士達の中でも精鋭の者達である。 彼らは今までの人数に頼った闇雲な戦い方ではなく、韋駄地源蔵の攻撃をかわしながら隙を作り、そこを攻めて討ち取る作戦に切り換えて応戦した。 この作戦には、此処まで激しく動き縦横無尽…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ61

こうして、並の武士とは遥かに一線を画した彼の戦いぶりにより、幕府軍の兵士は次々と返り討ちに遭い、指揮官を合わせ十数人にまで減ってしまっていた。 戦場には幕府軍兵士達の屍が散乱しており、ポツポツと降り出した雨の中に大量の返り血を浴びた鎧武者が…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ60

左から五人、右から八人。 瞬時に人数を把握した韋駄地源蔵は人数の多い右側を選択し駆け出す。 八人の兵士が横一列に並び、彼に向かって一斉に長槍を突き出した。 だがその攻撃は虚しくも空を切ることとなる。 彼は重い鎧を纏っているのにも関わらず、一斉…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ59

八方塞がりの紛れもない絶対的窮地に追い込まれた韋駄地源蔵。 しかし、彼はこの如何ともし難いはずの土壇場で不敵に笑う。 自害、又は降伏という選択肢もあったろうが、そのような不甲斐ない道を選ぶような彼ではなかった。 手に持つ刀を鞘に収め、戦場に落…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ58

鷲尾雷角は元々が山賊上がりの荒くれ者であり、これといって語るような人物ではないけれど、芥藻屑の大将である韋駄地源蔵は武士の身分であった者であるため少し素性を語らねばなるまい。 かつて、江戸時代初期に起こった一揆とも戦争とも伝えられる大規模な…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ57

「蓮左衞門!無事かっ!?」 射られた蓮左衞門を気遣い今度は逆に仙花が前面に立つ。 「骨には当たっておらぬゆえ心配無用にござる」 骨に当たっていなければ擦り傷。とはいくまいが、蓮左衞門はさほど痛そうにもせず左腕に刺さった矢を軽く引っこ抜き、身に…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ56

「みっ、皆様方聴いてくださいませ~!あっしはとある高貴な身分のご主人に使える薬師の泰時九兵衛(やすとききゅうべえ)と申しやす!...もうお察しかとは存じやすが、あっしらはあなた方を救うとともに芥藻屑を滅ぼすために蛇腹を訪れた次第でしてぇ、あな…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ55

距離を取った二人が互いに一呼吸おき次なる一手を考える... はてさて、この決闘の結末や如何に?といったところで場面は変わり、此方は囚人を誘導していた九兵衛が座り込む静かな森の中。 九兵衛の眼前には、各地から囚われていた人々が同じく地べたに座り休…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ54

「いやいや雪舟丸さん。人の実力を推し量るのは構いませんけれど、現時点で僕の実力が絶頂期かどうかを勝手に決めつけられるの心外というものです。さもすれば僕は早熟で今が絶頂期かも知れませんし、そもそも貴方に負けるつもりで決闘を申し込むような馬鹿…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ53

飄々と喋る可惜夜千里に若干調子を狂わせられた雪舟丸だったけれど、持ち前の絶対的な集中力でもって軽くいなす。 「...くく、是非ともそうあって欲しいものだな。ときに、念のため聞いておくがお主、芥藻屑の人間ではないのだろう?」 雪舟丸の意外な問いか…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ52

正面に剣術の極達人を見据えた可惜夜千里(あたらよせんり)が薄い笑みを浮かべる。 「とんでもないお人ですねぇ、あなた。たった一人でこれだけの人間を殺せる方は早々いませんよ...でもまぁ、これくらいの事なら僕でもやってしまえそうな気がしない、でも…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ51

雷龍の消えた場所には、うつ伏せで倒れたままの果綱紅樹の身体がピクピクと痙攣を起こしている。 「ふ~ん。かろうじて息はしているようだねぇ。あれを喰らって生きてるだけでもご立派だわぁ」 口では褒めているけれど、お銀の口調と表情は極めて冷たい。 実…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ50

「分身の術かっ!?」 「そうだ!」 くノ一のお銀が不可思議な現象を忍術の一つである「分身の術」と分析し、即座に判断するや否や、背後から果綱紅樹の低い声が聞こえ斬りかかって来た! 「ドンッ!」 「ぐっ!?」 ほぼ反射的に反応したお銀が向きを変えず…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ49

「おっと残念!此処から先は絶対に通さないよぉ...あんたぁ、あからさまに忍者の格好をしているけれど...ふ~ん、どうやら駿河の者のようだねぇ」 お銀の登場に一瞬怯んだ紅樹が即座に冷静さを取り戻し、相手が何者かを探ろうと会話を合わせる。 「...里は捨…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ48

「あっちにはてめぇらの仲間が居るんだな?」 「...はて?何のことやら。せいっ!」 鷲尾雷角の問いに対して適当な返答をした仙花が風鳴りを振りまた一人の命を断つ。 と、西の騒動に目を奪われたままの鷲尾雷角の横へ、白の羽織を着た侍風で顔の整った少年…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ47

「蓮左衞門!」 「合点承知にござる!」 声のみで意思疎通を図った仙花と蓮左衞門は、互いに背中を合わせる立ち位置に構え、複数人で襲いかかって来る賊に応戦する。 芥藻屑は数において比較するまでもないが圧倒的優勢である為、そこに明らかな油断が生じ揃…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ46

突如として現れた少女の物言いに訝しげな目を向ける坊主頭の男。 「...小ちゃい娘。てめぇが門番を殺ったてのかい?」 「ああ、一刀のもとに斬り伏せてやった。因みにお主が言うほど儂は小さくないぞ」 「小ちゃい」の一言に過敏な反応を示す仙花。彼女の背…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ45

光圀の西山御殿から出立して運が良いのか悪いのか...いやいや、自ら首を突っ込んでいるのだから運が云々の話しではないのだけれど、たった一日で数回の戦闘に出会したのにも関わらず、此処までただの一度も戦果を挙げていない蓮左衞門は鼻息も荒く気合が入っ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ44

一方、お銀の次に蛇腹への侵入を成した得た雪舟丸。 彼は侵入するまでの勢いこそあったのだが、今の今まで西門を潜って最初の家屋付近で進めるべき脚を止めいていた。 門番以外の敵を一人も葬らずに、である。 状況からしてまた居眠りでもおっ始めたのだろう…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ43

男の叫び声は早朝のシンとした静けさと相まって蛇腹の隅々まで響き渡る。 当然、男が敵の襲来を最も伝えたかった中央社の見張りには確実に届いた。 この蛇腹に外敵が訪れるなど早々あったことではなかったが、何処ぞの山賊やらが無謀にも何度か攻め入った過…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ42

見張りを一掃したお銀は、三軒並ぶ見窄らしいが大きい社のうち外側端の一軒の戸の前に立ち、周りに人気が無いことを確かめそっと戸を開ける。 「うっ!?」 少し開けただけで漂って来た鼻のもげるような異臭に思わず声が漏れた。 「....この臭いは人の肉が腐…