orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

一輪の廃墟好き 第154話 第一部最終話

一瞬であったとはいえ、刑事である淀鴛さんに疑いの気持ちを抱いたのは事実。 だが新川夫妻殺人事件の犯人の手がかりとしては今のところこの小さなヘアピンのみであり、事件に僅かでも関係を持つ人物を疑うことは探偵として間違いではない筈だ。などと、細や…

一輪の廃墟好き 第153話 レーザー光線

「あ、あぁ、信じられ光景だが、青白いレーザー光線のようなものが俺の胸に当たっているのが見えている...」 そうか、見えちゃってるのか... 「それでこの突然現れた光の線は何なんだ?」 よほど気になるのか、否、気にならならない方がおかしいだろう。淀鴛…

一輪の廃墟好き 第152話 発動

掌に乗ったヘアピンに人差し指と中指を揃えて触れる。 そして僕は静かに呟いた。 「想いよ、導け」 「ポッ!」 ヘアピンからアポロチョコ大の青白口小さな光球が現れ、掌から10cmほど上に浮かび上がり例の如く一直線に光の線が伸びる。 光の線が新川頼子の方…

一輪の廃墟好き 第151話 結ぶ

考えている時間も勿体無い、か... 「淀鴛さん、今から僕のやることは地味ではありますが常軌を逸した行為になります。もし、何かが見えたとしても他言無用でお願いします」 僕は特に言葉を選ばず、自分でも思っているがあからさまに変なことを言い放った。 …

一輪の廃墟好き 第150話 所有者

僕は助手と同じ轍を踏まないよう髪の中へ慎重に手を入れた。 頭皮の根元から髪先までそっと手を動かし、髪をといて洗うように繰り返す。 「おっ!?」 三回目にして御目当てのモノが手に触れ、思わず声が漏れた。 その御目当てのモノを右手の指で慎重に掴み…

一輪の廃墟好き 第150話 所有者

僕は助手と同じ轍を踏まないよう髪の中へ慎重に手を入れた。 頭皮の根元から髪先までそっと手を動かし、髪をといて洗うように繰り返す。 「おっ!?」 三回目にして御目当てのモノが手に触れ、思わず声が漏れた。 その御目当てのモノを右手の指で慎重に掴み…

一輪の廃墟好き 第149話 放置

不運にも指を切って痛がっている未桜。 そんな傷ついた女性を放置し一目散で新川頼子の遺体へ歩み寄る。 僕にとって彼女の指が切れてしまったことは、野生の象が道を歩く過程において、無造作にもアリを踏んづけ全く気付かないのと同様レベルで関心が向かな…

一輪の廃墟好き 第149話 放置

不運にも指を切って痛がっている未桜。 そんな傷ついた女性を放置し一目散で新川頼子の遺体へ歩み寄る。 僕にとって彼女の指が切れてしまったことは、野生の象が道を歩く過程において、無造作にもアリを踏んづけ全く気付かないのと同様レベルで関心が向かな…

一輪の廃墟好き 第149話 放置

不運にも指を切って痛がっている未桜。 そんな傷ついた女性を放置し一目散で新川頼子の遺体へ歩み寄る。 僕にとって彼女の指が切れてしまったことは、野生の象が道を歩く過程において、無造作にもアリを踏んづけ全く気付かないのと同様レベルで関心が向かな…

一輪の廃墟好き 第148話 得たり

とはいえ、調査すること事態にまで影響が及ぶわけではない。 だから集中して黙々と被害者の衣服を調べることはできている。 だが目を見開き綿密に確認したのだけれど、残念ながら犯人への手がかりになるようなモノは一切出てこなかった。 新川武治の妻である…

一輪の廃墟好き 番外編 その14

ちょっとあいだを空けてしまうと話の内容を忘却してしまう可能性があることを否定できない。 よって番外編、前回の続きである。 世の中にはそうそう旨い話しなんぞ転がってはいないというのは、もはや周知の事実であろう。 ならばどうやって収入を増やす? …

一輪の廃墟好き 番外編その13

誰も期待してはいないのは承知の上だけれど、かなり久々の番外編である。 いやなにね。 わざわざ改めて云わせてもらうと、僕は廃墟ビルの屋上に建てられた廃墟家屋、探偵事務所兼自宅に男の一人暮らしを展開しているのだが、昨今のあらゆる属性の物価上昇が…

一輪の廃墟好き 第147話 抵抗

未桜は相変わらず新川頼子さんの遺体を念入りに調べていた。 期待値は底をつくほど低い彼女だけれど万が一があるかも知れないの取り敢えず放置し、被害者の衣服は僕と淀鴛さんの二人で調べることにした。 壁際に置かれた折り畳み式のテーブルの上へ、一人一…

一輪の廃墟好き 第146話 看護師

ほどなくして遺体安置室のドアをノックする音が聴こえ。 「お二人の衣服をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか?」 「どうぞ」 看護師の断りに淀鴛さんが応え、ドアを開けて白衣を着た若い女性看護師が衣服の入った透明なビニール袋を抱えて入って来…

一輪の廃墟好き 第145話 老化

確かに、男性が歳を取って薄毛が進行し、場合によってはハゲ散らかしてしまう悩みと同等、否、女性にとっての老化というものは、男性の「ハゲ散らかし問題」とは比較にならないほど悩ましいかも知れない。 だが冷静的でも情熱的でもどちらでも構わないが、な…

一輪の廃墟好き 第144話 場違い

無論、と言っても良いだろう。 僕の試したいこととは、犯人が意図せず残したかも知れない手がかりを探し出し、特殊能力である「想いの線」を発動させることであった。 僕に訊かれた淀鴛さんは僅かなあいだに遺体安置室を一通り見渡し。 「...ちょっと待って…

一輪の廃墟好き 第143話 弾力

被害者夫婦の二人がどんな人生を送って来たのかなんてこれっぽっちも知らないし、加えてどんな人間性だったのかすら知らない。 しかし、不本意ながら正に一期一会となってしまったこの夫婦に、僕は情の湧くような感覚を自然に覚えていた。 それはきっと、僕…

一輪の廃墟好き 第142話 被害者

「二日酔い」というお粗末な結果ではあったけれど、井伊影村の悲惨な事件現場にて、彼女は見るからに体調を悪くし現場を離れてしまった。 結果はどうあれ、僕はこの時に気配りが足りていなかったことを反省していたからこそ訊いてみたのだが... 「ご心配あり…

一輪の廃墟好き 第141話 黙祷

ほどなく遺体安置室へ赴きすぐさま僕たちの視界に入ってきたのは、パイプベッドに横たわり白い布をを顔面に覆い被された被害者夫婦の二体の遺体であった。 普通に考えて当たり前だけれど、室内は静かなもので音楽など流れておらず、シーンと静まり返る室内に…

一輪の廃墟好き 第140話 蘇生

車が再発進して5分と経たないうちに国道へ入ると、車道を走る車の数が一気に倍増、否、比較にならないほど増加した。 淀鴛さんも「有言不実行」なことにはならず、山道での荒々しくアグレッシブな運転が嘘だったかのような安全運転を継続してくれた。 かくし…

一輪の廃墟好き 第139話 治外法権

彼女が人並み外れているところがあるのは特段驚くべきではないのかも知れないが、たまに鈴村未桜に現れる事象には驚いてしまうのが心情と言うべきであろう... そんなことより。 「淀鴛さん、病院まではあとどれくらいで着きそうですか?」 井伊影村の中心か…

一輪の廃墟好き 第138話 新鮮

ぐったりした僕たちを見かねたのか、淀鴛さんは車を車道の端に寄せて停車してくれた。 と言うか途中で気付いてくれたら尚よかったのだが... 「いやぁ、二人とも車に弱いんだな。意外だったよ。俺が一服するあいだに外へ出て新鮮な空気でも吸うといい」 淀鴛…

一輪の廃墟好き 第137話 気絶寸前

「むっ!?むむっ!」 「ひゃっ!?わわっ!!」 酷い揺れで絵も言われぬ哀れな姿となった僕と未桜の悲鳴が車内に響き続ける。 グラグラと揺れながらも車内中央のバックミラーを覗き込むと、運転に全神経を注いで集中し眉間に皺を寄せた淀鴛さんの鋭い目が映…

一輪の廃墟好き 第136話 鬼ドラ

淀鴛さんの愛車?かどうかは別として、僕たちは彼に促され後部座席に並んで乗り込んだ。 「時間が勿体ない。ちょっと飛ばすが我慢してくれ」 「遠慮は要りません、むしろガンガン飛ばしちゃってください。その方が時間短縮になって僕たちも助かります」 時間…

一輪の廃墟好き 第135話 予定変更

僕は考える... 今回の場合、誰からの依頼も受けていないのだから報酬は当然望めない。だが事件に一度首を突っ込んでしまったわけだから... 時刻は今や午前11時。病院へ行くとなると移動時間などを含めれば3時間を費やしてしまう... それにそこまで事件に踏み…

一輪の廃墟好き 第134話 病院

真っ当に考えれば今回の「勘違い」はプラスな方だと思うのだけれど、如何ともし難く釈然としない気持ちがやや残った。 だが、そんなくだらない想いに時間を費やすより、優先するべきことを優先すべきであり、さっさと頭を切り換えることこそが良策であろう。…

一輪の廃墟好き 第133話 結果オーライ

僕の特殊能力である「想いの線」も、犯人が使用した凶器や落とし物などの物体が発見されない以上、悔しいが何の役にも立たない。 結局のところ、事件現場ではこれといった手がかりは何も見つからないまま、僕と淀鴛さんは揃って一緒に家屋の外へ出た。 家屋…

一輪の廃墟好き 第132話 断定

探偵稼業をやっていてたまにふと思うのだけれど、人探しや物探しには集中力や洞察力が必要なのは言わずもがな、やはり運というか予期せぬ事象や視点を変化させることによって革新的に進捗する場合がある。 それを僕にもたらしてくれるのが助手の未桜だったり…

一輪の廃墟好き 第131話 死

「儚い」という言葉にはは、頼みにできる確かなところがない。淡くて消えやすい。などという意味がある。 それを踏まえて「人の人生は儚い」とはよく言ったものだとしみじみ想う。 この言葉は人間のみに限らず、一生命体としての極小なミジンコから果ては地…

一輪の廃墟好き 第130話 違い

そこから淀鴛さんは呟くようにひっそりと、現段階で知り得た事件の様相を教えてくれた。 被害者はこの家屋に30年以上もの長いあいだ住んでいた老夫婦の二人。夫も妻も共に60代で、農家を営んでいたとのことである。どうやら井伊影村に親族は居ないらしく、二…