orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2021-01-01から1年間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ69 砕ける音

残酷にも噛み砕かれた身体の一部から大量の血が流れ、両者の周囲が血の濁りで曇り始める。 水中に血の濁りが大きく広がる中、不思議なことに城太郎を襲った側のザンギの動きがピタリと止まった。 そして「バキバキバキ」と骨の砕ける嫌な音と共に、ザンギの…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ68 ザンギ

釣り糸を引く力は殊の外凄まじく、城太郎が湖へ引きずり込まれる前に釣竿を手放すか否か考え始めた直後! 「ザバァァァッ!!!」 確実に五メートル以上はあろうかという大魚が水中から飛び跳ね、漆黒のギョロッとした眼を城太郎へ向けた! 彼が釣り糸の先に…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ67 人喰い魚

因みに琵琶湖の半分くらいの広さであるこの湖にも、一応と云っては何だけれどしっかりとした名称が付けられていて、西の湖が存在するのか否かは分からないが東雲湖(しののめこ)と云う。 東雲湖には数こそ少ないものの数種類の淡水魚が泳いでいて、仙人達は…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ66 歳の差

城太郎が売り物としていたのは、持ち運びにも便利な裁縫などで使用する「針」である。 売り物にしていたのは全て手作りの針であり、男ながらにして裁縫が得意であったため、人々の前で実演しては良く売れたものであった。 彼の年齢は二十五歳という若さであ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ65 商人

城太郎と名乗った男が微笑を浮かべる姿を見た真如が胸をときめかせ、うら若き乙女のように頬を赤らめる。 一応断っておくけれど、彼女が仙女に覚醒したのは二十八歳の頃であり、今の若く美しい容姿はほぼ当時のままで老化は進んでいない。 と云っても、仙女…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ64 美青年

長いあいだ固まったように座り込み、首を回す以外の動きをほとんどしなかった真如が、ゆっくりと訪れた睡魔に抵抗せず瞼を閉じる... そして頭をコックリ、コックリと縦に揺らし出したその時! 「っ!?」 今まで微塵も引きを感じさせなかった釣り糸に、まる…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ63 釣果

近年、すっかり日本に定着したがいこイベントであるハロウィンを過ぎ、聴けばそれとなく味わえる馴染み深い音楽も増え、人を心地よくさせてくれる雰囲気のクリスマスも終わりを迎えようとしている... 我らが日本におけるクリスマスの歴史は、1552(天文21)…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ62 時には

そう、真如に話しかけた仙人の二人は、たまたま人間界から取り寄せた「将棋」なる知恵比べの遊戯を嗜んでいたのである。 それも百年のあいだ、雨の日も風の日も、雷雨の日も台風の日でさえも一日とて休むことなく... わたくし語り手も、ある意味ではこの二人…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ61 仙水(せんすい)

そんな理由で寝起きに食事を摂るのは稀であった。その代わり、仙人達はこれまた特別な味と成分を含んだ「仙水」と呼ばれる冷水を飲む。 仙水ならばたった湯呑み一杯分の量で満腹感を得られるため、たぷたぷになる腹と味はともかく仙人界では至って重宝されて…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ60 新たな人生

「貴方ぁ、ちょぉっと酒癖が悪いようねぇ...まぁ仙桃を与えてしまった我にも責任があると言えばあるけれどぉ...そいっ!!!」 「ズドムッ!!」 「っ!!??...........」 雲峡は言葉尻に伊乃の鳩尾へ肘鉄をかまし、地味な動きに反して強烈過ぎるその一撃…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ59 泥酔

仙桃を受け取った伊乃は、ここ数日のあいだ何も口にしていなかったことを思い出し、甘く美味そうな桃色の大きな桃に齧り付く。 「甘い!美味しい!」 実に単純かつ素直に食の感想を述べる伊乃。 仙桃を一口食べただけで彼女の肌がみるみるうちに薄い桃色に染…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ58 仙桃(せんとう)

「...一度は死んだ身、仙人に成る試練、是非とも受けさせてください」 雲峡の仙気溢れる雰囲気に流されたのか、それとも「新たな人生を送れる」という言葉に惹かれたのか、理由はどうあれ、ついさっきまで人生に絶望を感じて生きる気力すら失い、実際に行動…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ57 千載一遇

たったそれだけで至極御満悦となった喜怒哀楽の分かりやすい仙女が問う。 「ところで貴方は何で死のうとしてたのかなぁ?」 命を救った者の特権、などとは産毛ほども関係なく、ずけずけと人の闇に遠慮なく踏み込む。 「...........」 問われた伊乃が俯いたま…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ56 カルデラ

「きゃははははは♪ん~、それにしても爽快だわね~♪底なし沼の泥を根こそぎ放出させるってのはぁ♪」 底なし沼をすっからかんのカルデラの如き地形へと変形させたことに雲峡は満足していた。 仙花らと出会った場面においても30メートルはあろうかという崖の上…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ55 雷鳥 羅狗佗(らくた)

雲峡が行った所業を悪く云うなら「馬鹿」、良くは云わずもっと悪く云えば「大馬鹿」であろう。 後先を考えて放ったのか?否、恐ろしいことに何も考えずぶちかました大技は、泥の中に沈んでいた伊乃をも豪快に吹き飛ばしたのだった。 だが、大馬鹿者だと過大…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ54 時代を越えて

仙女と云えばついぞ当たり前のように美形、美人を想像するものであるけれど、或いは広い仙人界においても不細工な仙女が居ても不思議ではない。 しかし、堕仙女の物語を折角にして語るなら、不細工な仙女に出て来てもらうよりも、絵になるほど美人な仙女に登…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ53 底なし沼

中に入ろうと屋敷の正門に立った伊乃は、変貌してしまった両親のことを急に思い出し、そこから足が止まり一歩も動けずにいた。 彼女が動けないまま暫くのあいだ門前に佇んでいると... 金持ち風の着物を着た貫禄のある中年男が歩いて近づいて来る。 「お前さ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ52 悲しみの果てに

どれほど稀か分からぬ確率、人の死因としては聞き慣れぬあまりな不運に見舞われた最愛の夫。 溜まった水が飽和状態になった田んぼの水面に、その亡骸は半分浮かんでいる状態で伊乃の目に写り込んだ。 天から降る雨の勢いも弱まらず、雨具も着けずに家を出た…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ51 悪戯

室町時代よりも遥か昔、地震と豪雨が引き起こした大規模な地滑りによって出来たと考えられる絶壁。正親の耕す畑の側、平地より真っ直ぐ垂直に聳え、50mの高さはあろうかというこの絶壁に、丘から流れる雨水とは別口の流れをする水脈があった。 絶壁内部の奥…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ50 不可避

このあと、難を逃れた二人は互いに名を名乗り、男は森を抜けた先にある村の農家の息子で成野川正親(なりのがわまさちか)ということであった。 今宵は滅多にしない狩りで全く成果が上がらず、獲物を追って森の奥まで入り込み、我を忘れて狩をしているうちに…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ49 光る眼

二人が暗黙の了解のもと押し黙ったまま会話もせず、森の暗闇に目を向け狼を警戒していると... 「来た...」 狼の襲来に伊乃が先に気付いた。 木と木のあいだの暗闇に、焚き火の反射によって光を帯びた狼の鋭い眼が浮かんでいる。 それが一つ、また一つと瞬く…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ48 狼の群れ

その獣は徒党を組み連携して獲物を襲い、古くから人を喰らうとされる凶暴な狼に他ならない。 不穏な遠吠えが耳に届き、伊乃の朦朧としていた意識が瞬時に研ぎ澄まされる。 「...狼か...随分と近くにいるようだな...」 彼女が焚き火をしている地点に聴こえる…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ47 森の焚き火

彼女は森の道を歩きながら久しく感じていなかった解放感に浸っていた。 幼い頃はあんなに働き者で優しかった両親からの束縛。しかも自分らの至福を肥やすため、実の子供に労働を強いるまでに変わり果てた両親との生活は、彼女にとってもはや苦痛でしかなかっ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ46 別離

柱が腐り、いつ何時天井が落ちてきてもおかしくなかった里村家の住まいは、今や何処ぞの守護大名が持つような豪奢な屋敷へと変貌を遂げていた。 又吉とトヨの二人の生活もすっかり様変わりし、自分らで農業の仕事に精を出すということも無くなり、人を雇って…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ45 怪力

「おっとう!おっかぁ!見ててくんろ~!」 っと言う間に両親から離れ、満面の笑顔の伊乃は桑を掲げたまま畑へ駆けて行く。 又吉とトヨの二人が、大事なの娘を一人にしてはおけないと慌てて追いかけた矢先。 「せ~のっ!」 「ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザク…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ44 備中鍬(びっちゅうぐわ)

畑仕事で大いに役立ち使用する鍬とて、木製の棒の先に付く鉄製の歯は、人の使いようによっては立派な凶器となり得る。 トヨと父親の又吉(またきち)が日頃から仕事で愛用する鍬は、鉄の歯が四本に分かれており、歯の先端はなかなかに鋭利なものとなっていた…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ43 里村伊乃(さとむらいの)

仙人には大きく分けて二通りの種があるらしい。 一つは仙人界で生きる男女の仙人が恋をし、やがて実を結んで産まれる純血の仙人。 そしてもう一つは、人間界で普通の人間として産まれ、至極稀だが仙人の体質に近しい者が試練を乗り越えて仙人と成る場合であ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ42 悪魔と仙女の過去

そして、雪舟丸の居る場所とは見当違いの方を向いて笑う。 「グァグァグァグァ!真如よ起きているか?仙人界よりお前が命懸けで盗んでくれた鎧がやっと役に立ってくれたぞ」 亜孔雀は自らが衝撃波で吹き飛ばした地に倒れる真如に対して言ったのだが、倒れる…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ41 連撃!

今は寝ていないけれど、これにて金色の居眠り侍雪舟丸の誕生である。 「ほう...怪異と共存いているのか、なかなかにおもしろい、これで少しは楽しめそうだ」 雪舟丸の姿が変わった瞬間に豹変させた力が怪異のものであることに加え、共存していることまで亜孔…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ40 阿修羅(あしゅら)

「グァグァグァグァ!笑わせてくれる。身の程を知らぬひ弱な人間如きがオレ様に歯向かうとは...貴様に勝ち目などミジンコの毛ほどもないわ!」 ミジンコに毛があるか否かは別としても、化学や科学の発達が遅い江戸の時代において、ミジンコという名の微生物…