orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ41

前にいたもう一人の男が背後の気配を感じて後ろを振り返る。 「ヒュン!」 男は雪舟丸をしかと認識する間もなく首を刎ねられ命を断たれた。 「引っかかってくれるものだな...何とも間の抜けた奴らよ...」 「チン」 雪舟丸はボソッと悪口を呟き納刀すると、門…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ40

「仙花様にもご武運があらんことを」 と仙花に返した雪舟丸が、普段とは別人のような顔つきをして誰よりも早く目的の西門へと走った。 「あたしらも行くよ!」 「へ、へい!」 気合いの入ったお銀の声に若干気圧された九兵衛焦って応じると、二人は仙花に指…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ39

四人は仙花の策に同調し各々が了承の意思を示す。が、護るべき仙花の単独行動となるこの策に、お銀や蓮左衞門の心中は正直なところ穏やかではなかった。 仙花の考えた策は、各個人の圧倒的戦力と不確かな敵情報を踏まえての確率論からのものであろう。 同じ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ38

とまぁこんな阿呆な一幕もあり、やや緊張感に欠けるとも云えたけれど、道中気がピンと張り詰めっ放しだった一行の面々からすれば、命懸けの戦前に気の抜ける一幕でもあった方が丁度良かったのかも知れない。 一行は、九兵衛が自身の治療を終わらせたあと、道…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ37

気絶したまま雪舟丸に引き摺られる九兵衛を他所に、仙花の一行は早歩きというかほぼ駆けると言っても良いくらいの速さで夜道を進み続け、遂に芥藻屑の拠点があるであろう小さな山の麓に辿り着いた。 黙々と歩き続けていた一行の中でも超人的体力を誇る蓮左衞…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ36

九兵衛と仙花のやり取りに何か言いたそうな顔のお銀が我慢せずにやはり物申す。 「お言葉ですが仙花様、今は僅かな時間でも惜しい事態にございます。休憩をするのであればあと三里は歩いた時点で一回とるのが妥当ではないかと...」 「...う~む、しかしのう…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ35

「たっ、度重なるご厚意、感謝してもしきれませぬ。山窮水尽の村にとってはこの上なく有り難き幸せにございまする」 郷六が感謝の意を表して頭を下げると、後ろに居る村人達もこぞって頭を下げ感謝した。 「うむ、大いに有効活用してくれ。おっとそうそう、…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ34

なるほど、確かにお銀言う通りであると思い至ったからである。 同じ日に二度もこの村を訪れた雅楽奈亜門と沙河定銀の目的は、今朝方村を急襲した折に深追いし逸れてしまった芥五人衆が一人、四谷流甲斐の探索であったではないか。ならば、首領である「鬼武者…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ33

「郷六、其方は未だ儂のことを分かっておらんようだのう...」 微妙に怪訝な表情をする仙花。 その表情の変化に気付いた郷六が少し焦る。 「も、申し訳ございません。手前は人心把握が少々苦手なものでして...」 「村長のくせに人心把握が苦手とは...其方、正…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ32

「食事会」などと言えば聴こえが良すぎるかも知れないが、実際は焚き火を囲い木や石に座って馬肉を喰らう傍目にはお粗末なものである。 しかし、村人達にしてみれば馬肉は一生に一度ありつけるかどうかというほど貴重なものでもあった。 仙花一行の面子なら…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ31

そう言われはしたものの、目の前起こった急展開に思考が追いつかず、郷六はへなへなと腰を抜かしてその場にへたり込んだ。 よく見れば郷六の顔はげっそりとしてやつれ、実際の年齢よりも重ねて十は老けているかのようである。その原因としては、仙花の家臣ら…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ30

仙花の言葉に郷六が輪をかけて慌てふためく。 「仙花様に責任をとっていただくなどめっそうもございません。我ら村の者達なら一晩や二晩を飲まず食わずで過ごすことも耐えられますゆえ、どうか馬を斬るような御無体はおやめくだされ」 必至の形相で止めよう…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ29

たった二頭の馬では仙花の一行全員が乗って旅をするには数が足りない。 あわよくば荷物持ちとして己の負担を軽くするためでは?との期待を込めて蓮左衞門は訊いたのである。が... 「こいつらを捌き、村人達と儂らの食料にするのだよ。そうすれば今宵の飯の心…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ28

喉に触れる短刀の冷たさに恐怖を覚えた沙河定銀がゴクリと喉を鳴らす。 「おめぇ、知らぬうちにわての背後を取るとは...さては忍びの者か?」 背後を取られた彼には見えていないが、お銀はその美しい顔で不敵な笑みを浮かべていた。 「フフフ。死ぬあんたに…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ27

「キッイィッーーーーーーン!!!!」 「なっ!!??」 なんとなんと!仙花は己に向けられた高速の剣を背中で受けたのである!そして背中からザックリ斬られたのかと思いきや、雅楽奈亜門の刀は何かにぶつかり鉄と鉄が鉢合わせたよう音を立てて大きく弾か…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ26

「うむ、あの構えは間違いなく居合抜き、抜刀術だな。ならば儂も対抗してやろう」 蓮座衞門に言われるまでもなく気づいていたらしい彼女が、雅楽奈亜門に等し所作にて刀を構えた。 それは正に居合抜きの構えだった。が、急に辺りがしんと静まり返って微妙な…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ25

「...........すぅ~...はぁ~...」 継続して口にする挑発めいた言葉に対し、彼女の倍くらいは人生経験を積んでいるであろう雅楽奈亜門が大きく息を吸い込んだあと、ゆっくりと吐いて平常心を保とうと努力する。 「何処までも挑発的だねぇ。だが剣士たるもの…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ24

仙花もそれに合わせ、光圀により譲り受けけた家宝、稀代の名工「吉貞」が渾身の一振りである脇差「風鳴り」を鞘から解き放つ。 「へっへっへ。小娘相手に芥五人衆が二人がかりとあっては芥藻屑の名折れもいいところだなぁ。わては高みの見物をさせてもらうと…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ23

「お前、そこまで俺達を挑発するということは死ぬ覚悟があると思って差し違えあるまいな?」 「否、お主を殺す覚悟はあるが死ぬ覚悟など微塵も無いぞ」 先程までのひょうきんな雰囲気が消え去り、凄みを効かす雅楽奈亜門に対して平然と応じる仙花。 己を落ち…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ22

「....お主が探しておる仲間というのは、ひょっとして...いや、恐らくは芥五人衆が一人、四谷流甲斐のことだろうな」 思い起こすような素振りをほとんど見せずして仙花は答えた。 側にいるお銀は何か言いたそうだったが「フフッ」と苦笑だけで押し黙る。 予…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ21

仙花と郷六が食糧についてやり取りをしていると... 村人達がざわざわと俄に響めき始め、堰を切ったように一人の男が叫んだ! 「あ、芥藻屑が来たぞーーー!!??」 「なにっ!?」 会話の最中だった仙花は誰よりも早く反応した。 やり取りをしていた二人を…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ20

仙花が郷六へ近づき優しくそっと背中に手をあてる。 「儂は残念なことに未だ人生経験が少ないゆえ、力無き者達の真意は計り知れぬ。だが郷六、其方の無念な想いは儂の心に極めて刺さったぞ...さて、其方らは力を持つ儂らに何を望む?素直に申してみよ」 感情…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ19

光圀の名を出した途端に村人達の表情はおもしろいように一変した。 水戸光圀の名はまごう事なく天下に轟いているようであり、蓮左衞門を始め、お銀に九兵衛もホッと胸を撫で下ろした。 血相を変えて村長がいの一番に仙花の前に平伏す。 「無知な所為で存じ上…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ18

「なるほどぉ、持ってるのは蓮さんでやすかい。こりゃぁ丁度良い。仙花様、暫くのあいだお待ちを」 そう言って九兵衛は彼女の元を離れ、己の犯した失態に茫然自失中の蓮左衞門の元へせかせかと駆け寄り耳打ちする。 「蓮さん蓮さん。ここは面目躍如の良い機…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ17

村人達が「おおぉ」と唸り驚く表情を見てすっかり調子づいた蓮左衞門が、腕に力を込めて巨木の回転速度を上げていく。 「どらどらどらどらどらどらーーーーっ!!どうでござるかーっ!この怪力っぷりはーーーっ!!???っっとーっっ!!??」 「ゴッ!ガ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ16

一応彼女なりに気配りして丁寧に訊いたつもりだったのだが... 「...............................」 暗闇から突然現れた少女によるいきなりの申し出に、というか仙花の登場自体にその場に居た全員が驚き、ただ黙って十六の少女に注目していた。 誰も何も言わ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ15

灯りが目に映った一行の面々の擦り減った気力は自然と昂り、筋肉が張って重くなった脚も軽やかになっていく。 だが希望に満ちた一行を待ち受けていたものは、高揚する気分を奈落の底に叩き落とすような現実であった。 あまり役立ちそうにない能力ではあるけ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ14

辺りには人工的な建造物は一つとして見当たらず、殺風景で長閑な田舎道に佇み仙花と共に流れる朱色の雲を眺める一行。勿論、協調性零の居眠り侍は寝ているがもはや気にする者は誰もいない。 このとき仙花の流した涙はどういった感情から引き出されたものだっ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ13

昨日まで元気ハツラツで健康そのものだった人間が、今日にはこの世から忽然と消えてなくなっていたなどという悲しくも儚い事象が起きてしまう事実は、いく年月をを越えようが神以って今も昔も変わりはない。 諸文献によれば、江戸時代を生きる人の平均寿命は…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ12

「....拙者は眠くなって参りましたゆえ、話しを端折り短く語りましょう...当時の拙者と武蔵殿の実力は伯仲し、延々と百合以上刀を交えました...膠着状態が続いた決闘の行方はもはや持久力勝負となり、年老いた武蔵殿の剣速に鈍りが見えたところで若さに勝る…