orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第121話 皆伝

人は誰しも大なり小なり得手不得手というものが必ずある。 彼女に至っては身体を動かす武芸などが「得手」に当たり、逆に身体をあまり動かさずじっとしていることが「不得手」といえた。 よって、育ての親である徳川光圀の御殿で生活しているあいだに、彼か…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第120話 書物

目を閉じ己を落ち着かせた天心が云う。 「さて、たった今からお主は人間では無くなり、晴れて仙女となり得たわけだが...先ずはこの書物に目を通すのだ。この中には仙人たるものかくあるべしといった内容がこと細く綴られている。ほれ」 天心から仙花へと手渡…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第119話 驚愕

「覚醒」とは、目がさめること。目をさますこと。また、意識をはっきりさせたり興奮させたりすること。迷いからさめること。迷いをさますこと。また、自分の非に気がつくこと、らしい。 その意味からすると仙花が仙女へ覚醒するということは、表現の仕方がい…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第118話 覚醒

天心は仙花にそう問い掛けられると、瞼を閉じ「どうにかしてまたからかってやろうか」と思案した。 だがここまで彼の思惑通りいった試しもなく、中途半端に仕掛けても己が不愉快になるだけだと思い直し口を開く。 「まぁそう慌てるな、超覚水を呑んだだけで…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第117話 気絶

「早うせい」と言わんばかりの顰めっ面で睨みつける仙花の前に、天心が「こやつには侘び寂びというものが無いのかと」思いつつ懐から握り拳大の瓢箪を取り出す。 「ほれ、これは『超覚水(ちょうかくすい)という貴重な代物でな。まずは呑み干すがいい...なぁ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第116話 心底

「童よ何を笑う?」 仙花の高笑いに怪訝な表情をする天心。 「お主が無意味な選択肢を言うからじゃ。これが笑わずにはおられようか。儂がこの先成さなければならぬ怪異どもの殲滅、それに加え打倒『雲峡』という途方なく大きな目標ができたのだから、仙人よ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第115話 末路

「そんなもん知ったことか!相手が誰であろうと我が母を殺めた者を放っておくわけにはいかぬのじゃ!」 ある意味、天心の仙術は仙花に絶大な効果をもたらしたようである。それは彼女のあまりにも真っ直ぐな性分ゆえであったろうが... 「ケッケッケッ、お主の…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第113話 実力

不意に喉を突かれた天心が息を整えて口を開く。 「さぁてねぇ。事実か否かはオレにも分からん。分からんが、オレがお主に施した仙術はお主自身の深層心理に働かき掛け呼び起こすもの...まぁ現実で体感したものが夢となって現れたりもするものだが、真実は己…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第113話 真実

訊かれた仙花は気分が優れないのか、上半身を起こすも俯いたまま応えない。 その様子を眺めながら、今まで受けた屈辱を晴らすかのように笑う。 「ケッケッケッ、流石の童も今度ばかりは相当堪えたようだな。どうだ、恐ろしい悪夢を見ても尚、仙人になりた!…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第112話 記滅

よもやよもや... 真実か否かは現時点において分かりかねるところではあるけれど、目の前で己の母を殺した人物が仙女の雲峡であったとは... 仙花は根本的に楽観的な人格をしており、常人よりも心に痛みを覚えることは極端に少ない。だが夢の中とはいえ、あま…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第111話 愕然

言わずもがな、これは天心の仙術によって見せられた仙花の夢の中... しかし、母の身体の焼けた臭いが仙花の鼻を現実のようにつん裂く... それが彼女に夢の中であることを忘れさせ、まるで現実に起きているかの如く体感させられていた... 故に、彼女にとって…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第110話 無惨

「で、では、せめて娘の目が届かぬ場所でお願い致します」 小さな娘に己の酷い死に様を見せるわけにはいかぬと懇願する... 「それは無理だ」 「ズッ!ザン!」 何者かは言葉を発した瞬間、手持ちの刀で母の胸を一刺して間髪入れずに首を刎ねてしまった... 二…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第109話 覚悟

煽れんばかりの大粒の涙を浮かべた己の母が、顔面を畑の土に擦り付けての命の懇願... 何処ぞの誰に向かってやっているのかは知らぬが、尋常ではないその様子に仙花はいてもたってもおれられず、母の側へ近寄ろうとがむしゃらに走り出す... 「はっ、母上ーー…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第108話 確信

幼い仙花はそんな母の手伝いになればと、母と少しだけ距離を取り畑の草むしりをしていた... 健気な我が子の姿を見た母は、額の汗を手拭いで拭きつつ声をかける... 「仙花ぁ、あんまり無理はしなくて良いからねぇ」 「これくらい平気だよぉ」 幼い仙花が呼び…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第107話 母親

彼女は思う、「これが母上の優しさ、愛情というものか...なんとも居心地の良いもんじゃな...」と。 10年ほど前、彼女は山道をたまたま通りかかった光圀に拾われたわけだが、それ以前の記憶を完全に失ってしまっていたため両親のことはおろか、己の名前すら思…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第106話 愛情

果たして幾らかの時間は経過したのだろうか? 仙花は夢の中で眠りついたのち、夢の中で目を覚ます... 「いただきま〜す」 眠りにつく前は母の温かい腕に包まれていたはずだけれど、突如として母と食卓を挟む場面へと移り行き、と同時に己の姿が赤ん坊だった…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第105話 父親

己を抱き抱える母親であろう女が、子守唄を止めて男に応える。 「...はい、長く考えた末、この子には仙人のように長く生き、可憐な花のある子に育って欲しいから、『仙花』と名付けることに致しました」 「ほう、それは良い名だ...お前の夫は不運にも早死に…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第104話

意識を失った仙花の脳内は「夢現(ゆめうつつ)」の状態となっていた。 実際は通常の睡眠状態で夢を見るのと変わらなかったのだが、そこには天心の精神仙術「悲壮霧中」の一差しが組み込まれている... 仙花の耳には何処か聞き覚えのある優しい落ち着きのある…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第103話 霧中

「どのような試練でも受けて立つわい」 いよいよ最後の試練とあってか、仙花が今まで見せなかった意気込みを表情に現す。 「その意気や良し。じゃぁこいつを両の眼でジッと見つめるんだ...」 天心が仙花との距離をグッと縮め、懐からさり気なく取り出した菱…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第102話 認識

保坊天心なる仙人は、人間から仙人へと覚醒した者ではなく、歴とした仙人同士の間に生を受けた純血の仙人であり、繰り返しにはなるけれど、仙人界でも飛び抜けた仙術の才覚と、人と接することを好まない上に偏屈な人格を柚須灘に見込まれた者でもある。 仙人…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第101話 最後

仙術を解いてもなお身体の震えが止まらない天心。 「いいい良いだろう。だだだ第二のししし試練は、ごごご合格だだだ」 「...お主、まがいなりにも仙人なのであろう?そんなに寒ければ仙術でどうとでもすれば良いものを」 「!?。こここごえて、あああたま…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第100話 鼻水

「...確かに冷んやりしておるわい。じゃがこの程度では儂の身体を凍えさせるのは不可能、じゃな」 仙花の肌は凍るほどの冷気に晒され、人が触れればその冷たささに仰天するであろうくらいに冷えてはいた。 だが常人が凍えた時に見せる血の毛が引いた青白さは…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第99話 限界

「ど、どうだ。そ、そろそろ手足の感覚も無くなって、きたんじゃないか?」 仙花と同じ空間にいるがゆえ、天心の仙術の効果は発した当人の身体にもそのまま影響があるらしく、寒さによって唇が思うように動かず天心の言葉が震える。 彼の計算上では、仙花の…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第98話 命名

「やっと仙人らしいところをお披露目させてもらえるなぁ。今までのオレとは一味も二味も異なるゆえ覚悟せよ!」 などと彼は己を卑下しているようだが、暗闇に中で仙花に素早く放たれたクナイを素手で受け止めたあたりは「神業」と言っても過言では無かった。…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第97話 屈指

基本的なつくりは統一されているとはいえ、人間の人格や姿形が千差万別あるように、仙人界の仙人達にもそれは当然当てはまるわけだが、この保坊天心と名乗る仙人は人格もさることながら、実は仙人界でも屈指の仙術使いであった。 さらに云えばこんなに狭くて…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第96話 才能

人がにらめっこでする変顔というのは不思議なもので、ある程度そういったことに抵抗のなさそうな顔をした者がしたならば、それなりに可笑しく笑ってしまうこともあるだろうが、美しく整った顔の者が変顔をした場合、少しは面白い反面、崩れてしまった顔と元…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第95話 変顔

「うむ、どんな試練でも万事乗り越えてやる。早う言え」 天心がいつもの奇妙な笑い声をあげず、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ懐から一つの紅い小さな盃を取り出した。 「まずはその場に正座し、この盃をを両手でかざすように持つのだ」 素直に天心の言うことを…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第94話 動揺

そう、意外なことに、である。 天心の姿を一目見た仙花は今までの会話から察し、言葉は悪いかも知れないけれど「醜き者」を想像していた。 だから彼女が一瞬動揺し硬直したことは不思議でも何でもない。 仙花が天心の顔面をしっかり拝もうと提灯を前に突き出…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第93話 内容

「パシッ!」 クナイを投じた暗闇の中で、それを手で掴んだか弾かれたかの音が聴こえた。 「...ほ、ほぉぉ。見た目と口の悪さの割にやるじゃないか。まさかこのオレを逆上させ、岩肌の壁を利用して反響させていた声を己に向けさすことを狙っていたとはな...…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第92話 至難

「ケッケッケッ...随分とまぁ簡単なことのように思っているようだが、この真っ暗闇の空間でオレを探し当てるのは至難の業だぞ」 「...至難の業ねぇ、それより少しばかり気になると申すか不快なのだが、お主の『ケッケッケッ』という笑い方はどうにかならんも…