orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

一輪の廃墟好き 番外編その7

ゴールデンウィークの語源の由来には諸説あるのだけれど、ネットで調べて多く見かけるのは、ラジオで最も聴取率の高い時間帯である「ゴールデンタイム」に習ったもので、当初は「黄金週間」と言われていたが、インパクトに欠けることから「ゴールデンウィー…

一輪の廃墟好き 第69話 離島

僕は結局、田舎の実家に着くまで一睡もすることなく起きていた。 父の実家は鹿児島県のとある離島に在り、最後は一日に4、5回しか往復しないフェリーに車ごと乗り込み、島に入って10分と経たないうちに辿り着いた。 祖父母が子供の時から暮らすその家は、漁…

一輪の廃墟好き 第68話 田舎の実家

実のところ、僕が人魂(ひとだま)を拝見するのはこれが初めてではない。 かと言って飽きるほど見たことがあるわけでもなく、25年というまだまだ短い人生の中で今回が通算二度目となる。 確か初めて人魂を見たのは小学三年生の夏休みだっただろうか... 遠い…

一輪の廃墟好き 番外編その6

またやってしまった... 僕は常日頃から貴重な時間は大切にと思っているのだけれど、本当に時間を費やすべき物事の選択を誤ってしまう。 悲しいかな、いつも後悔は先に立ってはくれない... 時間は絶対的に有限なもの。 頭に叩き込んで生きねば先に待つのは時…

一輪の廃墟好き 第67話 絶句

此処、燈明神社と淀鴛の家は井伊影村の中心部から離れた森の奥に位置している。 ライフラインの水道やガスが通っていないこの土地の周囲には、その不便さからか人家は一軒も存在せず、野生の鳥や虫達の鳴き声がしなければ、「しん」と静まり返った空間の広が…

一輪の廃墟好き 第66話 推理

「想いの線」のは一度発動させるとたった一分ほどで具現化した光の線が消え去ってしまう。 決して都合よく無制限に効果を発揮するわけではないけれど、光の線が指し示す距離に関してだけは無制限に伸びるのである。 無制限に伸びる光と聞けば「それは凄い!…

一輪の廃墟好き 第65話 思念

「未桜、僕達は肝心な場所を調べていなかったようだ」 僕はその「肝心」だと思った場所を彼女に指で指し示す。 「あっ!?本当だ!その中はわたしも調べてなかったぁ」 「灯台下暗し」と言ったところだろうか、僕達は釜戸の中に残っていた灰や炭を調べていな…

一輪の廃墟好き 第64話 調べる

現場を探索すると言っても、焼死体発見当時、警察によってじっくり検証されたであろう現場で何かしらの物証が見つかる可能性は限りなくゼロに等しい。 だが曲がりなりにも探偵稼業を生業とする僕としては幼児期の淀鴛さんのために、是が非でも物証になりそう…

一輪の廃墟好き 番外編その5

早くも5回目を迎えた番外編。 確か「死」について語っていたと思うのだけれど、今回も例の如く時間が無いの一つだけ語らせていただこう。 ロシアとウクライナの虚無な戦争が始まって結構な時間が経過した。 YouTubeで24時間戦争のニュースを流しているチャン…

一輪の廃墟好き 第63話 平凡

大人も大人の35歳となった現在では、刑事という特殊な職に就きベテランの粋に達しているであろう淀鴛さん。 さっき初めて会ったばかりなのだから当たり前なのだが、彼がここまでの30年間をどのように過ごしてきたかのかを僕は知らない。 だが僅かな時間彼と…

一輪の廃墟好き 第62話 トラウマ

僕は心の片隅でそう決め込み、もはや彼女には目もくれず現場へと足を運んだ。 「ちょっ!?ちょっと待ってよぉ」 「うるさい。さっさと現場を観に行くぞ」 足早に歩き出した僕に気付いた背後の未桜が慌てふためきついて来る。 歩いて十歩もあるかないかとい…

一輪の廃墟好き 第61話 例の方

「未桜、とても細やかな頼み事があるのだけれど、僕には視えない何かを、僕が視たくない何かを君が見かけたとしてもそこは黙し、よしんば現場検証が済んだあとで伝えてくれないだろうか?」 例えば、霊感の強い未桜がこの不気味な雰囲気の裏庭で何か視たこと…

一輪の廃墟好き 第60話 悪天候

年間に数回しか降らないような国は別として、「雨」なるものは人が日常生活を送る上であって当たり前の天候の一つである。 敢えて説明する必要は無いのかも知れないけれど、晴れの日、雨の日、雪の日、台風の日などなど、自然の気まぐれに起こす天候によって…

一輪の廃墟好き 番外編 その4

友人などに「いつの日かまた会おう」と挨拶して別れ、次の日に予期せぬ場所でバッタリと会ってしまった経験は無いだろうか? こういったケースに出会した場合、お互いに「あれっ!?」などと言って一瞬気まずい空気が流れることが多い気がする。 今まさに僕…

一輪の廃墟好き 番外編 その3

「死」。 それは意識しようがしまいが、抵抗しようとしまいと、残念なことにいつかは誰もが必ず到達してしまう事象である。 もちろん地位や名誉、所得の多さに影響されることなく平等に... 人に「死」が訪れた時、果たして人はどのようになってしまうのか? …

一輪の廃墟好き 第59話 小雨

台所の流し台とくれば普通は蛇口が付いているのが当たり前だが、この廃墟にはそのあって当たり前の蛇口が無い。 淀鴛さんの話しを聞いていなければ、僕は大いに違和感と疑問を抱いたことであろう。 廃墟に蛇口が無いのは水道が通っていないのが理由であり、…

一輪の廃墟好き 第58話 宇宙規模

丁度良い機会だから云っておこう。 廃墟探索を趣味というか好んで行う者の奇特な心理についてであるが、単なる好奇心、怖いもの見たさ、果てはお宝発掘的な希望などなど正に十人十色である。 因みに僕の場合は廃墟探索の現場で不思議と感じてしまう、「哀愁…

一輪の廃墟好き 第57話 醍醐味

「その年季の入ってる年寄りの古時計、流石に動いてはいないようだな」 幼かった頃の淀鴛さんに時間を知らせていた振り子式の掛時計。錆びれて歪んだのか裏の留め金が緩み斜めに傾いており、振り子は力学的エネルギーを完全に失い、死んだように静止していた…

一輪の廃墟好き 第56話 足跡

取り敢えずあれが山猫だったかどうかは兎も角として、僕達は淀鴛家の廃墟探索を再開した。 燈明神社にも多くの足跡があったけれど、淀鴛家の居間と寝室の畳にも多くの足跡が見受けられた。 この足跡の主がどのような目的で家の中に入り、果たして人物像は如…

一輪の廃墟好き 第55話 山猫

「助手よ、見えたか?」 「うん、ほとんど見えた。あれは絶対に猫だったよ」 「僕もハッキリではないが猫にしか見えなかった。しかし、普通の野良猫では無く、恐らくは山猫といったところだろうな...」 「そう言われればそうかも知れない、かなぁ...」 目に…

一輪の廃墟好き 第54話 鳴き声

物置の襖は風化して所々が破けており、出来た穴から物置の不気味な暗闇が目に映る。 雨雲が太陽の光をほぼほぼ遮断し薄暗くなった外よりも、家の中は当然の如くさらに暗くなっていた。 真剣な表情をした未桜が、にわかに目撃したと思われる何かの正体を見極…

一輪の廃墟好き 番外編その2

人生は決して平等なものではない。 だが地球上の生物としてこの世に誕生した者達全員に、一切の漏れなく、絶対的に平等で確実なものがある。 それは全ての人間にとって最も重要なことであり、ある程度の年齢に達すれば誰もが知ることとなるのだが、日常生活…

一輪の廃墟好き 第53話 襖の隙間に

廃墟となる以前の用途などによって異なるのだが、僕がこれまで約30以上の廃墟探索を行った経験上、廃墟というものには共通した独特の匂いというものがある。 上手く言葉で表現できないのだけれど、大まかに言ってしまえば謎めいた「異空間」の匂いであり、通…

一輪の廃墟好き 第52話 生活臭

何はともあれ、彼女の突飛な奇行が曲がりなりにも功を奏し、僕達は淀鴛家の居間へ入ることが出来た。 雨風などの様々な要因によって汚れに汚れまくった畳張りの居間は、30年という長い年月と風が通り抜けていた所為か、人が住んでいた頃の生活臭は完全に消え…

一輪の廃墟好き 第51話 ルール

僕は事件のあった早く現場へ行きたいという気持ちを抑え、一旦、目の前の半壊した家の入り口から中へ入った。 埃被った見窄らしい玄関を、申し訳ないと思いながらも土足で上がらせてもらう。 「ぬぬぬ、なんだ、この戸は?全然開かない...」 障子紙がほとん…

一輪の廃墟好き 第50話 30年前の事件

神殿の鍵が壊されたドアを抜けて外へ出ると、夕方近い時間帯となっていたことも手伝い、空を見上げれば灰色の雲が覆って淀んでおり、薄暗い空間の中にボロボロで今にも崩れそうな一軒家。 誰も住まなくなって30年という長い月日が流れ、すっかり風化してしま…

一輪の廃墟好き 第49話 淀鴛家

さて、番外編で僕が述べた、というより願った言葉からある程度は推測できることと思うけれど、あの日、僕の身に何が起こったのかはまた、別の話。 懐中電灯で神殿の中を照らしながら探索を続けていると、外の方から「ゴロゴロゴロ...」と雨雲が雷を蓄える嫌…

一輪の廃墟好き 番外編

もはや時間が無い... 限られた時間の中で精一杯やって来たが今日はこれが限界だ。 だが僕は声を大にして言いたい! 「明日は良いことしかありませんように!!!!」 ===============================過去の作品はこちらにまとめてあります!https://shousei…

一輪の廃墟好き 第48話 御神体

備品などが破壊されたり消失してしまったがらんどうな拝殿は、廃墟独特のある意味寂しげな情景を醸し出していた。 散々、破壊者や盗人のことを云っておいてなんだが、人が廃墟へ侵入して悪戯に害を成したであろう形跡も、この空間にノスタルジックな雰囲気を…

一輪の廃墟好き 第47話 腐食

人口の減少が加速度的に進むこの日本において、数多と存在する他のどの廃墟にも同じように云えることだが、悲しいかな、廃墟を荒らし破壊する者達があとを絶たない。 高校生時代に廃墟の素晴らしさを初めて知った時から、廃墟というものをこよなく愛して止ま…