orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第230話 益虫

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第229話 益虫
 お銀の身体にまとわり絡みつき自由をほぼ完全に奪っているのは、壁から生えているかのように見える無数の巨大なミミズであった。
 
 ミミズといえば土を食べ、そこに含まれる有機物や微生物、小動物を消化吸収した上で粒状の糞として排泄し、それによって、土壌形成の上では、特に植物の生育に適した団粒構造の形成に大きな役割を果たしている。そのため、農業では一般に益虫として扱われ、土壌改良のために利用され、表層性ミミズよりも土中性ミミズの方が土壌改良効果が高いとされているらしい...


 現代においても野菜などに被害をもたらす害虫扱いではなく、どちらかといえば人間のに対してメリットだらけである。

 

 ただ、その見た目は間違っても美しいとは言えず、大抵の人間は「気持ち悪い」という感情が湧き出てくることであろう。

 

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第229話 危機

 と、仙花が相槌を打った刹那!

 

 居眠りしていたかに見えた雪舟丸が「カッ!」眼を開け!

 

「上だっ!!」

 

 お銀と仙花が雪舟丸の一言に反応し、部屋の天井に素早く目線を移す!

 

「バリバリッ!バリバリッ!!」

 

 突如としてけたたましい音を立て天井の板を突き破り、鍾乳洞にあるような大きく長い鋭利な氷柱が二人に向かって落ちて来た!

 

「なっ!?」

 

「っ!?」

 

 決して意識したわけではなく、不意に襲いかかって来た危機に直面した二人は、ほぼ条件反射的に身を起こし後方に跳んで氷柱を避けた!

 

「ドスドス!ドスドスドスドスッ!!」

 

 二人が避けて無人と化した畳の表面に氷柱が次々と突き刺さる!

 

 二人の超人的反射神経と運動能力によって何とか命拾いをしたのも束の間、頭の回転がずば抜けて速いお銀が状況を把握する前に何者かの腕らしきものが、彼女の上半身に絡みついた!

 

「こっ!?このっ!!」

 

 自分以外の四人が視界に入ったことを即座に確認したお銀は、その上半身に絡みつく腕らしきものが仲間のものではないことを咄嗟に判断するや否や、懐からクナイを取り出そうと腕を動かすも、既に両腕にも絡みついたついた何者かの腕によって自由を奪われ、身動きの取れない様となってしまっていた。

 

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第228話 洞察

 
 はてさてはてさて。

 

 思い返さずとも随分とまぁ物語ることを止めてしまった語り手の私めにございますけれど、無論、語ることを永久に止めてしまったわけではなく、それなりに事情があってのことでございますれば、特段の説明をする必要性も無くは無いが、やはり不必要と勝手ながら判断し、前話の続きから語ることと致しましょう...

 

 取り分け「大工」について長く語るのは捨て置き、仙花一味が田舎のお粗末な宿屋の部屋に「雨風を凌ぐ屋根と壁」があるという点においてご満悦なところ、感の鋭い仙花を始めとして、常時警戒を怠らないくノ一のお銀と、凄腕の剣聖にして居眠り侍こと雪舟丸に関しては、この部屋から異様な、否、異様すぎる空気を感じ取っていたものである。

 

 残念ながら三人と比して、人間離れした怪力を持つ蓮左衛門と、薬師で並の人間である九兵衛はその「異様すぎる空気」を微塵も感じ取ってはおらなんだが...

 

 お銀と自然に目の合った仙花が口を開く。

 

「これは淀めに嵌められてしまったのかう?」

 

「...私めの洞察眼からすればぁ、淀殿は恐らく此奴らの存在には気付いておらぬかと。それに、お言葉ながら今は嵌められたかどうかは問題ではなく、此奴らにどう対処すべきかを判断すべきかと」

 

「うむ、そうじゃな」

 

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第227話 大工

 仙花が宿屋でゆるりとできることにご満悦のところで、建築について、というか建物の建築において必要不可欠な大工について少しばかり語ろうではないか。


 かつては一般の木造建築の職人を「右官」と呼んでいたが、江戸時代頃から一般の職人も大工と呼び、統率者に対しては、棟梁と呼ぶようになった。江戸の発音では「デエク」である。

 

 飛鳥時代に今も使われている「さしがね」を考案したとも言われる聖徳太子が組織し、都造りのため天皇のそばで建築の「木」に関わる職を「右官」、「土」に関わる職を「左官」と呼んでいたという説もある。 現在の建設業で「左官」以外の職種は設計も含め、「大工」より派生したものが非常に多い。 最近よく使われる「意匠」というのは、「匠(大工)」が「意図する(考えた)」という意味でデザイン性を表す昔ながらの言葉であるらしい...

 

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小生おるたなWritten by Orutana Nagarekawa shouseiorutana.com


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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第226話 劣化

 腹を空かせ疲労の溜まる仙花一味が、宿屋を一人で切り盛りする女である淀に案内された部屋は、襖を初めとした腰掛けなどの備品の劣化が激しく、まるで部屋の中を台風が通り過ぎたかのように酷い有り様であった。

 

 部屋はちゃぶ台に立てられた二本のか細いロウソクによって灯されてはいたけれど、隅々まで明かりが行き届くことはなく、その薄暗さが否応無く部屋の不気味さを醸し出す。

 

 だが、ここ一週間ほどを野宿で過ごして来た仙花一味にとっては、見上げれば屋根があり、風をしのぐ壁があるだけでも有り難いと感じるだけに、部屋の不気味さなどどうでも良いことである。

 

「やはり外と違って部屋の中はどうにもこうにも気が落ち着くもんじゃのう...」

 しみじみと現状の気持ちを述べる仙花であった。

 

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第225話 辞儀

「では今より御食事のご用意をさせていただきますが、ご存知の通り、この宿は私一人で切り盛りしておりますゆえ多少のお時間をいただきとうございます。手が行き届かず汚い部屋にございますが、食事の準備が整うまでごゆるりとお過ごしくださいませ」

 

 淀が丁寧にそう言うと微笑を浮かべたお銀が口を開く。

 

「淀さんや。何か手伝えることがあれば遠慮なく言っておくんなまし、ここは歴とした宿屋かも知れぬが五人の客を相手にたった一人では大変であろうに」

 

 お銀の思いがけぬ言葉に淀が初めて笑顔を見せる。

 

「ご心配によるお気遣い、大変嬉しく存じます。しかしながらお客様に手伝いをされたとあっては申し訳無さすぎて私めの気が収まりませぬ。そのお気持ちだけで十分に嬉しゅうございます。ではこれにて一旦失礼致します」

 

 淀はお銀に向かってお辞儀をし、さっと踵を返すとそそくさと一階へと降りて行った。

 

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第224話 体重

 お銀が宿屋の女の涙を拭ってやったあと、その優しさを感じたのか、宿屋の女は落ち着きを取り戻し仙花一味に名乗った。

 

 宿屋の女の名は杉村淀(すぎむらよど)といい、年齢は二十代半ばといったところである。

 彼女は仙花一味の希望通り宿屋に一泊させることを快く承知し、階段を昇って二階の部屋へと案内した。

 

 部屋へと通ずる木製の階段と廊下は古いためか、歩を一つ進めるごとに「ミシミシ」と不気味な音が鳴り、今にも壊れ穴が空いてしまうのではないかと心配するほどあった。


 体重の軽い女である仙花やお銀などは気にもしなかったが、この中で一番体格の良い蓮左衛門に至っては、かなり神経を尖らせて歩いたものである。

 

 既に外の陽は暮れ、太陽の光が差し込まない宿屋の中は尚一層暗さをまし、まるでお化け屋敷を連想させるが如き不気味さが漂っていた...

 

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