orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

一輪の廃墟好き 第125話 人だかり

「...わかった...じゃぁ短めにというかストレートに訊いちゃうけれど、さっきさぁ、女将さんの後ろに...」 「ストップだ!」 僕は突如として目の前に飛び込んで来た情景に、どうしようもなく車の運転に集中せざるを得ない状況となり、ほぼ反射的に未桜の言…

一輪の廃墟好き 第124話 現場

「本当に素晴らしい民宿でした!女将さん、身体に気をつけて頑張ってください!」 「うんうん♪最高でしたぁ♪」 「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」 僕達は村で起こった事件について女将さんから知る限りの情報を聴き出し、暗くな…

一輪の廃墟好き 第123話 殺人事件

「あっ!そうそう...ちょっと言いづらいのだけれど...」 テキパキとした女将さんにしては珍しく歯切れの悪い物言いをする。それに「ちょっと」の意味合いとは程遠い深刻な面持ちになった。 そんな姿を見せられては言いかけた言葉を聞き出さないわけにもいく…

一輪の廃墟好き 第122話 一択

お急ぎで朝食を済ませ2階の自室へ移動し、僕達は荷物の整理を始めた。 チェックアウトという言葉が相応しいのかどうかは別として、この「民宿むらやど」の部屋に居られるのは10時までと決まっているのである。 それほど多くない荷物を一通りまとめ終わり、一…

一輪の廃墟好き 第121話 朝食

朝っぱらからのつまらぬやり取りはさて置き、僕と未桜はお出かけモードの服に着替えそれなりに身なりを整え、朝食を摂るため一階の食事場へ降りて行った。 確か民宿の案内によれば、朝食の時間は「7時から9時の間でお好きにどうぞ」との記載があったはずであ…

一輪の廃墟好き 第120話 カチン!

朝食を食べたいがためであろう、未桜は二日酔いの症状など一切見せずリュックから着替えを取り出すと、僕がそばに居るのを忘れているのか、はたまた夢見心地で寝ぼけているのか、普通に着用している服を脱ぎ始めた。 「こらこら、僕がそばに居ることを忘れる…

一輪の廃墟好き 第119話 寝起き

翌朝、カーテンの隙間から差し込む太陽の優しくも眩しい光で目を覚ます。 「つっ!?」 若干重く感じる上半身を起こした際に、昨晩のツケが頭痛という置き土産を残してくれていて、頭にちょっとした嫌な痛みが走った。 「...後悔先に立たず、ちょっと調子に…

一輪の廃墟好き 第118話 有意義な時間

後から聞いた話によれば、淀鴛さんは井伊影村に来ることを決めてから、「ハイボール」を作れるセットを準備していたらしい。 僕から言わせてもらうと、「既製品の缶のハイボールでよかったのでは?」と思うのだけれど、本人いわく「それじゃぁ詰まらないだろ…

一輪の廃墟好き 第117話 ハイボール

人によって偏見や好みはあろうけれど、僕は男同士、しかも一対一での呑み会にはなんの抵抗も持っていない。 軽くそうは云ったものの、無論、無条件で誰が相手でも抵抗が無いわけでもない。 今回の場合、相手が刑事という特殊な職に就く人間であり、人生経験…

一輪の廃墟好き 第116話 泥酔

泥酔とは、正体がなくなるほど酷く 酒 に酔うこと。 泥酔の「泥(でい)」は、中国の『異物志』に出てくる空想上の虫のこと。 「でい」は南海に住み、骨が無くて 水 が無いと 泥 のようになると考えられていて、その様が酷く酔った状態に似ていることから、…

一輪の廃墟好き 第115話 ヒロイン

いくら泥酔してしまっているとはいえ、この甘ったれた成人女子を二階の部屋までおぶってやることはいささか不本意なところである。 とは言え、このまま彼女を放置していては漏れなく女将(確定)さんの迷惑となしまうだろう... 時間も無いことだし。 「えぇ…

一輪の廃墟好き 第114話 小娘

淀鴛さんとの酒を嗜みながらの会話はさらに続いていたが、ふと時間が気になったのでスマホで確認すると、既に22時を回っていた。 「民宿の食事場で流石にこの時間をまずいだろ」と思い。 「淀鴛さん、これ以上ここに居ては女将さんのご迷惑になりますのでそ…

一輪の廃墟好き 第113話 存在

「完全否定こそしないものの幽霊なんてものは見たことも無いし、にわかには信じ難いが...そうか、俺のご先祖さんの霊、か...」 僕と未桜が燈明神社での出来事を一通り伝えると、淀鴛さんは真剣な面持ちでそう呟いた。 「あ、何だか信憑性に欠ける話をしてし…

一輪の廃墟好き 第112話 面接

25才という若輩者である僕の経験上、霊感がある人は自ら「霊感がある」などとという主張はしては来ないと思っているのだけれど、助手の未桜だけは平気で僕の想定を飛び越えてくる。 彼女が霊感のある人間だと知ったのは、初対面の時、それも僕が初めて助手を…

一輪の廃墟好き 番外編 その12

番外編をニ夜連続というのは流石に怠惰なのでは無いか?などと「何処かの誰かさん」を疑ってしまう気持ちはあるけれど、そんな時もあるさ、だって「人間だもの」。 ところで、楽しい夢を見ている最中に睡眠から目覚め、その夢の記憶が一瞬にして吹き飛ぶとい…

一輪の廃墟好き 番外編 その11

どうやら何処かの誰かさんは睡眠不足で苦しんでいるようだ... 人にとって睡眠をとる時間というのは絶対的に必要なものである。 日々の睡眠時間が短い人間は寿命が縮まってしまうとよく耳にするけれど、逆も然り、必要以上に睡眠をとることも寿命を短くしてし…

一輪の廃墟好き 第111話 滑る

「わたしたちを出迎えてくれたのは、きっとここで亡くなった前の女将さんだと思う...」 未桜に茶化された所為で、程なく驚きの感情が薄らいではいたが、彼女が不意に真面目な顔をして言うのでこちらとしても真面目に受け止めざるを得ない。 「...そうか...ま…

一輪の廃墟好き 第110話 セリフ

「君がかよわいなどという言葉とは無縁な女性だと踏まえた上で、強烈なデコピンをお見舞いしようと思うのだがいいだろうか?」 「んもういけずぅ、そんなことちっとも思ってないくせに~♪...しょうがないぁわかった、わかりましたよぉ...でもぉ、聞いて驚い…

一輪の廃墟好き 第109話 寝るな!

すき焼きは言わずもがな、それ以外に運ばれてきた料理の数々も殊の外美味であり、たわいのない世間話を助手と語り合いながら酒もグイグイと進み、僕はふと思った。 「井伊影村の小さく質素な民宿むらやど、侮るべからず」と。 「他に選択肢が余り無かったと…

一輪の廃墟好き 第108話 シンクロ

「牛肉爆食いズルズル娘」は縛らく放っておくことにして、僕が牛肉以外の素材すべてを味見し終えた頃。 「お待たせしてすみませんねぇ、生二つと白ご飯でございますぅ」 待ってました!生若女将(仮)! 僕は心の中で歓喜し小躍りしていた。 すき焼きの食材…

一輪の廃墟好き 第107話 豆腐

「こ、これは...ことのほか美味いな...」 井伊影村地産の大きめな椎茸は、良い意味で椎茸なんでどれも同じであろうとたかをくくっていた僕の予想を超ええ、そのじんわり滲み出る味と食感によって舌に個性を訴えて来た。 椎茸のおかげでイラついていた気分は…

一輪の廃墟好き 第106話 キノコ

「助手よ、たったの一日で乙女の恥じらいという希少なものを惜しげもなく捨て去ってしまったようだな」 僕は決して、土鍋の牛肉がごっそり無くなっていることに怒っているのではない。いや、少しくらいは怒っているのかも知れないけれど、嫌みを言わなくては…

一輪の廃墟好き 第105話 生卵

「もうすき焼きの方はお召し上がりなれると思いますので、お好みでそちらの卵を使ってください」 若女将(仮)がそう言って僕達の場を去ったあと、未桜は即座に土鍋の蓋を開けた。 土鍋の中はすき焼きのスープが沸騰グツグツと音を立てて沸騰しており、美味…

一輪の廃墟好き 第104話 すき焼き

目の前にある木製のテーブルの上には、火の点いたカセットコンロに蓋のしてある土鍋が置いてあった。 季節は春であり、若干シーズンは過ぎているけれど、旅先で食す鍋はその存在だけで良い雰囲気を醸し出している。 「そうか、醤油のいい香りがしていたとい…

一輪の廃墟好き 第103話 当然

若女将(仮)に教えられた通り、襖が開け広げられた和式の食事場へ入ると、食欲をそそるほんのりとした醤油の香りが漂っていた。 食事場全体は12畳ほどの面積があり、ちょっとした宴会なら十分に実行可能だという感想を持つに至る。 畳には松林の描かれた純…

一輪の廃墟好き 第102話 腹の虫

自分たちの部屋へ鍵を開けて入ると、シチュエーション的にお決まりの事態が待ち受けていた。 そう、最初に入った時には木製のテーブルが置いてあった場所に、真っ白なカバーに包まれた清潔そうな布団が二組、びったりとくっつけて並べられていたのである。 …

一輪の廃墟好き 番外編 その10

久々の番外編ということは、多分、いや完全に「何処かの誰かさん」が時間的な窮地に陥っていると思って間違い無いだろう。 例によって唐突であるけれど、我が日本において日曜休みが始まったのは1876年(明治9年)のことで、当時、官公庁で土曜半休、日曜休…

一輪の廃墟好き 第101話 上の中

改めて言うのも何だが、僕は日頃から上の中くらいのイケメンだと自負している。 上の上だと言い切ってしまわないところに、僕が決して鼻につくようなナルシストではないという事実と、ささやかなる哀愁を感じ取っていただきたいのだけれど、そんな上の中のイ…

一輪の廃墟好き 第100話 微賞賛

「温泉物語」、否、僕が主人公であるなんちゃってミステリー小説「一輪の廃墟好き」が、敢えて口に出すほど大してめでたくもないのだけれど、「ようやく」と云うか「とうとう」と云うか、まったりと100話目を迎えてしまったらしい。 どこかの誰かさんが本来…

一輪の廃墟好き 第99話 けんもほろろ

きっと彼女も露天風呂に目をつけ、同じように歓喜しながら入浴していたのだろう。 「おっ、おう助手。この温泉は想定外に大当たりだったな...って、君はなんちゅうことをしているんだ!?」 彼女は竹製隔て板(仮)の最上部からこちら側に腕を出し、当然何も…