orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ38 仙花の失態

亜孔雀の言い分を敢えて要約するなれば、「美味そうな匂いに釣られてわざわざ道を外してまで足を運んだ」といったところであろうか。 「...心得たぞい。その良い匂いの源であるこの串団子はくれてやる。だからお前はさっさと此処を立ち去れ」 真如はそう言っ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ37 亜孔雀(あくじゃ)

青々としている空から、それもかなりの高度から舞い降りるでもなく、あたかも隕石の如く堕ちて来た者の姿は、側から見れば人間の形と相違なかった。 しかし誰もがひと目見れば気付くであろう決定的で奇怪とも云える違いがあった。この者のそれは肌と云っても…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ36 危急!

と、丁度話が終わる頃合いに団子屋の娘が山盛りに串団子を乗せた大皿を運んで来る。 「お待たせしました~!これでご注文の団子は全部になります~」 団子屋の娘はそう言うと、長椅子に座る仙花と真如の間に大皿を置いた。 「くっくっくっ、これは爽快じゃわ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ35 迷いの森

「危険...か、だがどのような試練が待っていようとも儂は乗り越えていかねばならぬ。して、その魔窟とやらで何をすれば良いのだ?」 仙花一行の旅の最終目的は各地で目撃され、現在は薩摩の地に集っているであろう百鬼夜行を形成している怪異達の討伐である…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ34 魔窟

にしてもだ。最低の三百歳だったとしても三世紀を生きたことになる仙人の雲峡。 かの仙女に対して仙花達の持った印象を敢えて点数で云うならば、100点中おまけしても5点といったところであろう。 仙花達にとって、昨日時点での雲峡の存在価値は、降って沸い…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ33 最強級仙人

真如の口から「仙女」なる単語が出た刹那、仙花の脳裏に嫌な予感が走った。 「...まさかな」 ボソッと呟いた彼女の顔が曇り、それを見ていた真如が訝しげに訊く。 「ん!?どうしたのかのう...わしゃぁ未だ変なことは言っておらんぞい」 「あ、いやいや、気…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ32 悲壮物語

「う~む、そうであったか、すまぬ...だが承知した。もう余計な口は挟まぬゆえ続けてくれ」 聖天座真如の言うことももっともだと判断した仙花は素直に謝り、欲しい情報に辿り着くまでは我慢しようと話の続きを促した。 「...儂はのう。十八という若さで田舎…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ31 仙女になる方法

店の中から湯呑みの乗ったお盆を片手に、団子屋の娘が慌てて勢い良く飛び出してくる。 「お茶を忘れてました~!ほんっとうに申し訳ございませ~ん!出来立てアツアツですのでお気をつけて呑んでくださいまし〜」 と、聖天座真如の目の前で急停止した彼女は…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ30 唖然

「ほ、本当にいいのかえぇ?天界から堕ちた仙人の物語なぞ滅多に聴けるものではないぞい」 「うむ、ちとしつこいのう。其方の堕ちた話しは『なし』の方向で構わんよ。それより何より仙女になるにはどうすれば良いのか教えてくれぬか、真如様よ」 仙花にして…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ29 堕仙女 聖天座真如(せいてんざしんにょ)

「ガシャャン!」 老婆の度肝を抜く行動を目の当たりにした団子屋の娘が、店内に戻ろうとし矢先にお盆を落として割ってしまった。 皿の割れた音など耳に入らぬほど驚いた仙花一味も、皆が驚愕の表情で硬直し絶句する。 老婆の信じられない動きはそれほど衝撃…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ28 百本

老婆に痛いところを突かれたお銀が冷静になるよう集中する。 昨日遭遇した仙女の即蘭眉雲峡から情報を得る機会を自ら逸して彼女は、滅多にないであろう情報源を逃したくはなかった。 「お婆さん、こちらにおわすお方は水戸光圀様の娘で仙女になる素質を持っ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ27 怖いもの知らず

「くっくっくっ...年寄りには優しく接して大事にせぇと、親から教わらんかったらしいのう」 「...ふた~つ」 老婆の言葉など完全に無視して雪舟丸が二つ目をつつがなく数える。 「ちっ!仕方が無いのう...」 「バサッ!ゴロゴロゴロ...」 雪舟丸が三つ目を数…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ26 何処からともなく

彼の「久しく見ていない可愛い娘」という言葉に過剰反応を示すお銀、禍々しい気を放ちながら「キッ!」と九兵衛を睨みつける。 主の仙花に関してだけは寛容なお銀であったけれど、どちらかというと完璧主義な彼女は、うっかり九兵衛の言動などには必要以上の…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ25 串団子

「うぉぉぉぉーーーっ!!!」 「なっ!?」 仙花は抜き去ったお銀をあっという間に抜き去り突き放してしまった。 一ヵ月ほど前、橋の上で芥藻屑の悪党に襲われる夫婦を助けようと、疾風の如く駆ける仙花を追いかける場面があり、脚力に自信のあるくノ一のお…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ24 出雲国(いずものくに)

はてはて、語り手の暴走は誠に勝手ながらではあるけれどさておき。 仙花達は、かつてお雛と夫と娘の三人が幸せに暮らしていた家で一晩ぐっすりと眠り、お天道様も晴れやかな新しい朝を迎えていた。 昨晩宣言した仙花の言った通り、あの居眠り侍の雪舟丸を含…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ23 人生とは...

ところで、怪異の闇雲に命を奪われたかに見えた九兵衛が、何故生き伸びたのか不思議ではなかろうか? 余計なお世話かも知れないけれど、簡単に解説しておいた方が今後のためである。かもなので少々解説するとしよう... 実際、闇雲に九兵衛が包み込まれた瞬間…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ22 ひとくち

「で、でか過ぎる...」 最も至近距離から眺めていた蓮左衛門。彼の身体は驚きと恐怖から硬直し、石のように固まっていた。語尾に「ござる」を付け忘れるほどに... 人の脳が処理できぬ現実離れした事象と直面した場合、大抵はこのようになってしまうのではな…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ21 伝説の巨人

本気で棒っきれを打ち込んでいた九兵衛は肩透かしを喰らい、大勢を崩して前のめりによろめき... 「おっとと!?うっ!?うわぁっ!!??」 闇雲に全身を包まれた九兵衛の叫び声が辺りに響いた! 「九兵衛ぇっ!!」 救援に間に合わなかった蓮左衛門が名を叫…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ20 止まらぬ九兵衛

仙花一味の中でも間違いなく戦闘に不向きな医師の九兵衛。 体力的なことは勿論だが、悪く云えば「うっかり呑気者」、良く云えば穏やかにして優しい性格ゆえに不向きと云えよう。 その戦闘に不向きな者が数多いる怪異の中でも危険度の高い闇雲に向かってまっ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ19 怪力乱神の真土間(まどま)

「まさか闇雲が背後に居るのか!?」などと唐突に頭をよぎった蓮左衛門が背後を振り向むくと... 「ぬっ!?もしやあれが仇の闇雲ではござらんか!?」 直ぐ近くというわけではなかったけれど、20mほど離れたポツンと一本立つ大きな木の上に、霧状の黒い物体…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ18 怪異の闇雲(やみくも)

「わたくしの家族に起こった話しは此処までにございます......手前勝手ではありますけれど、あなた方を只者では無いと見込んでお願いしたいことがございます」 お雛が申し訳なさそうに言うと、蓮左衛門は袖で涙を拭い、九兵衛が手拭いで顔を拭いて彼女に目を…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ17 屍と過ごす

「あんたぁぁ!吟ぁぁ!返事をしておくれよぉぉ!」。お雛は喉が張り裂けんばかりに声を上げ、二人に何度も呼びかけるが返事はやはり返っては来ない.. 涙をいっぱいに浮かべた彼女の目には、ぐったりと横たわる夫の姿は映っていたけれど、幼く小さな身体の娘…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ16 尊い命

彼女の眼にかつて見たことのない物体が映り込む! 黒く濃い霧のような物体は、一太郎と吟の乗った船の後方付近、海面から3mほど浮かび上がり、ウヨウヨと不規則な動きを繰り返していた。 そのおぞましい姿にお雛はゾッとして青ざめたものだったが、なんとか…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ15 嵐

一太郎と吟の二人がひとしきり釣りを楽しんでいると、空を見上げた一太郎の表情が俄に渋くなった。 晴天だった空が嘘のように変わり出し、暗い灰色の雨雲がどんどん広がっていくのが目に入ったのである。 漁師を十年以上続ける一太郎は天候を読むことに長け…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ14 幸せな家族

「...わたくしは「お雛(おすう)と申します。大切な家族についてお伝えたいことがあり、あなた方の前に姿を現しました...聞いておくんなまし...」 お雛は二人に対して名を名乗り、あまり喋る印象の無い幽霊ではあったものの、否、長々と語る幽霊など皆無か…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ13 幽霊という怪異

その不可思議な存在ゆえ、時には怪異と同一視されることのある「幽霊」。 幽霊というものは江戸時代以前から語り継がれ、この時代には「雨月物語(うげつものがたり)」や、「牡丹燈籠(ぼたんどうろう)」、「四谷怪談」などが怪談噺(かいだんばなし)とし…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ12 不気味

外は降り注いだ地面がぬかるんではいたものの、先程まで続いていた嵐は過ぎ去り、しんとしたいつもの静けさを取り戻していた。 だが空を見上げれば、未だ雨雲に覆われて月明かりもなく、普段よりも足下が覚束ないほど暗い空間が不気味さを醸し出す... 「まる…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ11 風が止む

九兵衛の倒れるすぐ横には古びた囲炉裏があり、くべられた残り僅かな巻にお銀が火球を投げつける。 「ボウッ!」 薪が音を立てて一気に燃え上がり、部屋の中に暖かな光が立ち込めた。 しかしたったこれだけの薪ではあっという間に燃え尽きてしまう。 仙花達…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ10 蜘蛛の巣

「おぉぉわぁっ!!??」 最初に足を踏み入れた仙花が裏返る声で悲鳴をあげた! 「仙花様っ!?大丈夫でござるかっ?」 心配した蓮左衛門が瞬時に仙花の安否を確かめる。 「いやぁ、すまぬな...恥ずかしい話、ねっとりとした蜘蛛の巣が顔面に纏わりつき、不…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ9 死んだ家

「おっ!?左手の丘に見えるのは民家ではござらぬか?灯りは点いておらぬようだが...」 蓮左衛門が指差しながらそう言うと、疲労困憊のお銀が左手の丘へ向けて目を凝らす。 「確かに民家があるねぇ。取り敢えず人が居るか否かは別として、中に入れてもらって…