orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ10

弓幹(ゆがら)と弦(つる)へ込める力が伝わりピンと張った。 「これも一期一会の類に入るかのう...さらばだ四谷流甲斐」 「バシュッ!!」 放たれた矢が弾丸の如く凄まじい速さで一直線に四谷流甲斐へ飛ぶ! 「ゴシュッ!!」 「っ!!??」 後頭部へ到達…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ9

「うむ、ギリギリではあるがな...」 仙花が蓮左衞門に応じるあいだに雪舟丸がまた動いた。 三人が一瞬で斬り捨てられ、怯んだ雑魚衆の中へ飛び込み斬りかかる! 「ヒュヒュヒュヒュン!ヒュヒュヒュン!」 太刀筋の見えない剣捌きを繰り出し雑魚衆全員の隙間…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ8

「おお!?雪舟丸が目覚めたぞ!いよいよ本領発揮と言ったところかのう♪のうのうお銀♪ウズウズが収まらぬゆえ参戦したいのだがぁ、良いであろうか!?」 「駄目です」 お姉色の濃いお銀に猫撫で声作戦で挑んだ仙花は冷ややかに瞬殺されあえなく撃沈した。 そ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ7

「チーン.............」 無慈悲にも味方から足蹴にされ、突如として前に出てきた居眠り侍に否が応でも目のいく芥藻屑の面々は、何事が起こっているのか理解できず時が止まったが如く固まる。 「なっ!?何をするお銀!?放せっ!儂は奴らの身体で風鳴りを試…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ6

間が悪いというか運が悪いというか、否、ともすれば幸運だったのかもしれないが、全部で十二人の男達は揃いも揃って芥藻屑の象徴である『下衆』の文字が刻まれた黒い布を首に巻いている。 下衆な生き方をする集団自ら「下衆」の文字を象徴として掲げる行為は…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ5

お銀の話しから記憶の引き出しが一つ開いた蓮左衞門が喋る。 「韋駄地源蔵の名なら聴いたことがあるでござる。確か元々は武家の者だったらしいが、ある事件をきっかけに家と身分を失い、いつの間にやら地元から姿を消したとか。戦場で他の者を救った武勲は数…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ4

また暫くのあいだ歩を進めていると、仙花が手を「パン!」と叩き何かを思い出して喋り出す。 「な~んか引っかかっておって気持ち悪かったのだが、云わねば成らぬことがあったのをたった今思い出したわい!蓮左衞門、九兵衛、それに雪舟丸よ聞いてくれ。儂は…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ3

「ほう、何か考えがあるのだな?」 「左様にございます。若干不本意ではありますけれど、手っ取り早く済ます方法がございまして...仙花様、少々この場から離れて頂きたいのですが...」 「ん?離れれば良いのだな。承知したぞ」 仙花は素直に言うことをきき、…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 芥藻屑との戦 ノ2

仙花とお銀の二人が立つ川に架かった橋へ、蓮左衞門は荷物を背負い、九兵衛は仙花の旅装束の残りと下着を持ち、雪舟丸は言わずもがな居眠りしながら駆けて来る。 「仙花様~!ご無事で何よりでござる!」 「お助けになった娘はもう大丈夫でやすよ~!これを…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 芥藻屑との戦 ノ1

仙花の言葉を聞き、半ば信じ難しといった表情をした夫婦は互いの顔を向け合い。 「あ、あんた!?」 「おっ、おおう!?」 「ははぁぁ。御無礼を致しましたこと、こ、この通りお詫び申し上げますぅ」 夫婦は違う意味で再び土下座して許しを乞うた。 仙花がキ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ12

「ふぅぅぅ....」 ほんの僅かな時間の中にて、夜叉の如く野盗の四人を全滅せしめたお銀が息を整える。 鍛え抜かれた忍びの殺人術たるやげに恐ろしいものであろうか。 無論、忍者であれば誰でも出来ると言った芸当ではなく、忍者界隈の中でも特殊上忍であるお…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ11

僅かな時間で橋の麓へ辿り着いた仙花が床板を颯爽と走り抜け、ひれ伏す女子の両親と立ちすくむ野盗らのあいだに躍り出た。 橋の床板に転ぶ射られて屍と化した男を指差し仙花が告げる。 「野党ども、此奴のようになりたくなければ後ろを向きこのまま立ち去る…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ10

「其方、なぜ一人で川などに入ったのだ?見るにまだまだ幼いではないか」 溺れかけた幼い女子(おなご)は疲弊した様子であったが、どうしても伝えなければならないことがあり声を振り絞る。 「橋から落ち、て...お、おっとうとおっかあが、お、襲われ、る」…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ9

そのまま川を横断するように真っ直ぐ泳ぐ。 彼女の水泳経験は何度か光圀に川へ連れて行かれ泳いだ程度だったが、経験の浅さを感じさせない素晴らしい泳ぎっぷりであった。 突拍子もない仙花の行動に唖然とした表情だった一同。 うち、両目を塞いでいた蓮左衞…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ8

お銀がぽかぽか陽気の日に氷の如く冷たい視線を雪舟丸へ送る。 「ああそうかい。あんたの噂は以前から時折り耳にすることがあったれど、拍子抜けさねぇ。てんで的外れだったみたいだよ」 早くも握り飯をムシャムシャと食べる雪舟丸が眉をピクッと動かして訊…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ7

蓮左衞門と九兵衛の二人が程なく合流しても暫くのあいだ仙花の早歩きは止まることを知らない。 その甲斐あってか一行は予定より早く旅路を進めることができた。 あと幾ばくも歩けば常陸と下総の境目に差し掛かろうとしたところで昼飯時となり、一行は出発の…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ6

「余り急いで歩かないでおくんなましよ~。あっしは体力に自信が無いのに自信があるんでさぁ」 九兵衛は一行になんとか食らいつくも一里と歩かぬうちに弱音を吐き出した。 「ならば身体を鍛える良い機会ではないか?ほれ!もっと速く歩くでござるよ九兵衛!…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ5

「何処かに手頃な棒っきれはないかのう...おっ!あったあった♪」 道端に落ちている足の長さほどの竹箒にも使えそうな棒っきれを拾いあげ、嬉しそうに雪舟丸に近づく仙花。 そうとは知らずに居眠りを続ける呑気な雪舟丸。 斯くして一方的では甚だ迷惑な腕試し…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ4

原因不明なのだが仙花には光圀に拾われる以前の記憶が無い。よって、降りしきる雨の中、なぜ山道に倒れていたのか本人も知らないし、生みの親の顔なども当然覚えていなかった。 光圀としては人生最後の我が子とし、蝶よ花よと育て上げ、いずれは何処かの名高…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ3

お銀の語る「座頭市」の話しを「うんうん」と相槌を打ち真剣に聞く仙花と蓮左衞門を他所に、薬師の九兵衛は持参していた書物を読み始める。武術については余り関心が無いらしい。 その九兵衛の背後を四、五歩ほど間を置いて眠りながら歩く雪舟丸に至っては、…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ2

「拙者も初見あればときめいてござるよ」 「僭越ながらあっしもでやんす」 「う~む、儂も皆に同感じゃな」 先に口を開いたお銀に続き、蓮左衞門に九兵衛、それに仙花を加えた四人は、雪舟丸の「居眠り歩き」を目の当たりにし、揃いも揃って興味津々のようで…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ1

遠く離れた道を歩く仙花達の姿を、視界から消えるまで見届けた光圀の背に向け絹枝が声をかける。 「行ってしまわれましたねぇ。仙花様」 その場に立ち尽くす光圀の脳裏には、仙花と出逢った日から六年間の思い出が走馬灯のように流れていた。 辛うじて絹枝の…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ24

「印籠ねぇ...確かに人へは天下の徳川一族であることの意味は大きかろうな。しかし怪異を相手どって印籠を呈しても意味は無かろう。鬼や天狗のキョトンとする様が目に浮かぶわ」 仙花のずれた価値観から、徳川家紋入りの印籠が泣いてるようにも見える。つい…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ23

仙花が口にした「座頭市」の名は、近頃水戸藩周辺の地域に出没している盲目の旅人のものである。 西山御殿まで伝わった風説によれば、盲目でありながら杖を突きつつ徒歩で一人旅をしており、見たものは僅かであったが、恐ろしく剣の腕が立つ者らしい。 これ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ22

暗い闇夜を越え、新しい朝の光を浴び目覚めることは、今も昔も変わらず何処か新鮮で気持ちの良いものである。 寝不足や酒を呑み過ぎて二日酔いによる激しい頭痛に襲われる者は別として... 「スコォーン!」 「ふぁっ!?」 「旅立ちの朝ぞ!雄鶏の如くとっと…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ21

煙玉の濃い煙が薄くなり、立ち尽くすお銀の元へ仙花が駆け寄る。 「お銀!曲者は逃げてしまったのか?」 「申し訳ございませぬが左様にございます。手前としたことがまんまと逃げられてしまいました」 お銀がその場で屈み頭を下げて恭しく陳謝した。 「いや…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ20

忍者の戦闘スタイルは侍のそれより多様である。 しかも相手が同じ忍者となれば忍法合戦もアリの状況で刀を手に取った磨伊蔵。 「ほ~、これは面白い。忍者にしては珍しく先に刀を出すとは...よほど自信があるんだねぇ...じゃああたしもお付き合いしちゃおう…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ19

突き刺した長刀を天井から抜き雪舟丸が零す。 「手応え無し...逃げられたか....」 ゆっくり納刀する雪舟丸に光圀が訊く。 「曲者か?もしや儂と仙花の会話は最初かられていたのかのう?」 「恐らくは。しかしいつから天井裏にいたかは残念ながらわかりませぬ…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ18

仙花に光圀の言い分が伝わりにっこりと屈託の無い笑みを見せる やはりこの娘には笑顔が一番似合う。 「儂のことを大切に想ってくれているのは十分伝わった。本当に嬉しいぞ、じっさま♪...しかしだな、一つわがままを言わせてもらおう。儂はのう、出雲の仙人…

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ17

光圀が微妙に目を細め、重要な話しをする際に時折見せる真剣な表情を作り出す。 「無論じゃよ。お主も知っておるとは思うが...妖怪、いわばこの世の者とは思えん怪異の存在をお主も一度や二度は耳にしたことがあるであろう?」 「.......うむ。絹江や滝之助…