沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい! [ひとめぼれ]
因みに千歳のお兄様の名は穂波一朗太(ほなみいちろうた)。年齢はわたしの一つ上で18歳の学生。キリッとして端正な顔立ちをしており、千歳から以前聞いた話では女性にモテているとのことである。
でも、わたしが昨年お会いした時の印象は単に剣術の上手い殿方というだけで、交際相手として見るにはイマイチ決めてに欠けていた。
仕方がない、千歳の気分を害さない程度に正直な気持ちで答えよう...
「千歳のお兄様は素敵な方で十分魅力的な方だと分かっているのだけれど、もし交際を申し込またとしてもお断りさせていただくことになると思う。だって今は気になる殿方がいるんですもの...」
あっ!?わたしったらまた余計なことをつい口走ってしまった...
千歳がニンマリとした顔をして言う。
「あら司、昨日お見合いの話を聞かされたばかりなのに、それとは別で気になる殿方が居ると言うの?」
「しーっ...」
わたしは咄嗟に顔の前へ人差し指を立て声を小さく話すよう促した。
昨日のように宝城さんや花山さんに聴かれたらめんどくさい事になるのは目に見えている。
「あっ、ごめんごめん。だって司が驚くような話をするものだから...で、その殿方はどんな人でいつ出逢ったの?親友のわたしには教えてくれるわよね」
「も、もちろん話すわよ。でもちょっと待って、頭の中を整理するから...」
当然いつかは千歳に話そうとは想っていたけれど、こんなに早く樹様のことを話すような場面は予定外だった。
たくさん困惑させられた昨日に引き続き、今日も朝からこんなに苦労する羽目になるとは...トホホ。
しかし、どう話したものか...
「あのね、まだ気になってるだけだから、そこは勘違いして欲しくないのだけれど、実は昨日、学校が終わって屋敷へ帰ると、冷泉樹という殿方が試合の申し込みに来てたの。それで、色々あってわたしとではなく師匠と樹様が試合をしたんだけど...」
「へ~、殿方は樹様とおっしゃるのねぇ。いきなり下のお名前で呼ぶなんて、司にしては珍しいわね」
話の途中でそう言われ、恥ずかしさで自分の顔が火照っていくのが分かった。
「う、うん。その方がそう呼んでくれとおっしゃったのだから仕方がないじゃない...と、とにかく、師匠との試合で樹様の闘う姿に見惚れてしまって、試合後の笑顔を見た時から胸が騒ついて気になり出したの...」
「それってさぁ、あれじゃないかしら?ひ・と・め・ぼ・れ」
千歳からその五文字の言葉を聞いたわたしの顔は、蒸気が出るのではないかと想うくらいに熱く火照ったのでした。
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