orutana2020のブログ

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沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい! [千歳の才能]

 毎年想う...厳しく寒い冬を乗り越え、その名残が無くなり生命の息吹を感じる4月はとても心地良い。

 本日はたいへんお日柄も良く、絵画を描くには上々の環境だった。

カリカカリカリ」

 隣に黙って座る千歳が、紙の上で手を休めずに鉛筆を走らせる音が聴こえる。

 彼女は小さい頃から絵を描くことが大好きで、その腕前は大人の絵師顔負けと言っていいほど上手かった。

 一方のわたしはというと、絵を描くことは苦手でも得意でもなかったのだけれどなかなか手が進まない。

 千歳が集中して黙々と描いているものだから会話は無く、春のポカポカ陽気と相まって、まだ午前中だというのに眠くなってきた。

 そのうち鉛筆を握るわたしの手が止まり、頭の重さを感じながらコクリコクリとし出したところへ…

「あらぁ、加賀美さん。全然進んでないわねぇ」

「っ!?」

 突然背後から神楽坂先生の声が聴こえ、反射的に背筋がピン!と伸びビクッ!となってしまった。

「す、すみません。余りにも春の陽気が心地良すぎてつい…」

「フフフ、その気持ちは十分わかるわ。だけど今は授業中だという事を忘れないでね」

「はい!以後気を付けますぅ…」

 神楽坂先生は苦笑しながらわたしに注意すると、今度は一所懸命になっている千歳の方に目を向けて絵を見るなり…

「う~ん、相変わらずの素晴らしい腕前ねぇ、穂波さん」

 話し掛けられた千歳の手がピタッと止まり、神楽坂先生の方を向いてニコッと笑う。

「ありがとうございます。先生」

 それだけ返すと、サッと紙の方に向き直ってまた絵をカリカリと描き出した。

 神楽坂先生はそんな彼女の様子を見たあと、わたしに目配せしてこの場を去って行った。きっと、「今は邪魔しちゃ駄目ね」といった意味合いだったのだろう。

「取り敢えず自分の絵を完成させないと」

 わたしはそう呟き絵描きを再開した。

 暫くして上手くはないけどそれなりの絵が完成に近づいた頃、少し離れたところから甲高い声が聴こえてくる。

「遂に完成しましたわぁ!」

「わぁ、宝城さんは本当にお上手ねぇ」

 声からして宝城さんと花山さんだという事は直ぐに分かった。

 昼食時と同じように取り巻きが二人を囲み、完成した絵のお披露目会のようなものが始まっている。

「羨ましくはないけれど、あそこはパーティでもしているかのように賑やかねぇ。それより司!どうかな今回のわたしの絵は」

 絵を描く最中ずっと黙っていた千歳がそう言い、完成した絵を胸のあたりに掲げてわたしに披露する。

「凄いわ千歳!貴方はやっぱり絵の天才なんだわ!」

 その絵は、絵師の絵画展に並んでいても不思議でないほど素晴らしいものだった。

 

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