orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

僕達の世界線は永遠に変わらない [美琴の窮地]

 だが残念なことに、ガラスの破片による目隠しの効果が予想より短かったため、美琴が別の家屋に隠れようとするところをカラハグに目撃されてしまう。

 家屋に走って入ろうとする美琴の正面へ、カラハグが翼を広げ一っ飛びして立ちはだかった。

「カッカッカッ。惜しかったな人間の娘」

「ハァハァハァ、そ、そうね、ハァハァハァ...」

 獲物を見据えるようにして掛けられた言葉に、息を切らしながら一言返した美琴だったが、その顔は絶望感と疲労で血の気を失い青ざめていた。

「安心しろ。苦しまないよう一撃で殺してやる」

 殺そうとしている相手に向かって安心しろと言っても、殺される側からすれば心が落ち着くわけがない。
 しかし、もはや全てを出し尽くし、能力を使うことはおろか、抵抗する体力と気力も無くなってしまった美琴は、死を覚悟して立ったまま瞼を閉じた。

 無表情なカラハグが、人間の倍の大きさはあろうかという拳を振り上げ、無慈悲に美琴の頭部へ振り下ろしたその時!

ドガッ!」

「ガァッ!?」

 起きたのは美琴の悲鳴ではなく、予測していなかった衝撃を、我が身の頭部に突如として受けたカラハグの声だった!

「ふぅ、何とか間に合ったようだな。大丈夫か?美琴」

 そう言ってポンと軽く左肩を叩かれ、瞼を開けた美琴が目にしたのは苦笑いをしている飛鳥井の姿。

 瞬間移動でカラハグのすぐ横に現れた飛鳥井が、頭に強烈な蹴りを放ち、無防備だったカラス王の身体を数メール吹き飛して窮地を救ったのである。

「遅いよぉ...」

「おっと!?」

 一瞬安堵の表情を浮かべた美琴がそのまま気を失い、倒れそうになるのを飛鳥井が抱くように支える。

「頑張ったな美琴...」

 両腕で眠る彼女の横顔を眺めながら呟いた。

 蹴られて吹き飛んだカラハグが体勢を整えて二人に近づく。

「貴様。やってくれたな。だが気配を感じさせないとは...どうやって我に近寄った?」

 カラス王には蹴りを食らったダメージが残っていないのか痛がる様子は無く、その言い方は何事も無かったかのように冷静で淡々としていた。

「ハッハッハッ!だ~れが教えてやるもんか。それより全力で入れた蹴りなのに効いてないなんてショックだなぁ」

 飛鳥井の表情には余裕があり笑ってもいたのだが、実のところ心中穏やかではなかった...「全力」と言った言葉に嘘偽りなどはあらず、カラハグの首をへし折ってやるつもりで放った蹴りが、全く効いていないという現実に恐怖すら感じていたのである。

===============================
過去の作品はこちらにまとめてあります!
https://shouseiorutana.com
===============================