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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ56 カルデラ

「きゃははははは♪ん~、それにしても爽快だわね~♪底なし沼の泥を根こそぎ放出させるってのはぁ♪」

 底なし沼をすっからかんのカルデラの如き地形へと変形させたことに雲峡は満足していた。

 仙花らと出会った場面においても30メートルはあろうかという崖の上の道を、海面が眺められるほどに削り取ったことのある雲峡。

 彼女がもし本気の本気で技を繰り出せば、小さな山の一つくらいなら木端微塵に破壊出来るのかも知れなかった。

「さぁて、なぜか人助けなんて性に合わないことしちゃったわねぇ。うん、たまったまよ、たまったまこの娘を助けてしまったけれど、どうしてあげちゃ追うかしらぁ♪」

 周りには話し相手など一人として居ない状況で、一人で身体をくねくねさせながら顔を赤らめ、百年に一度くらいしかしない人助けをしたことを恥じらう雲峡であった。

 きっと、普段の仙人相手の関係も上手くいっていないのであろう...当の本人は否定するであろうが、それもまた不憫に思えてならない...

 そんなことはさておき、羅狗佗が何処へと消え去り、雲峡の所為で気絶したまま地面に横たわっている伊乃。

 雲峡は彼女の耳元まで近づき、耳元で「ふぅ~」っと吐息を吹きかけた。
 すると...

「う、うん...」

 眉間に皺を寄せて苦しそうにして伊乃が目覚めた。

「おっ!気が付いたようだねぇ♪良かった良かった♪おっと~!命を助けたのは我だけれどお礼なんぞ無用だよ~♪」

「うん、お礼は言わない」

「ほぇっ!?あっ、そう...そっかぁお礼はなしかぁ...べ、別にいいんだけどねぇ、最初から求めてはなかったしぃ、そ、そっかぁ...」

 伊乃にハッキリと真顔で言われ、雲峡は明らかにテンションが落ち凹んでいた。

 そんな雲峡の可哀想とも云える姿を見て流石にバツが悪くなったのか、伊乃が仕方ないといった表情で口を開く。

「望んではいなかったけれど、折角助けてもらったのにごめんなさい。言いたくはないけれど、改めてお礼を言わせてください...この度は命を救ってくださり、ありがとうございました」

 首を垂れ、複雑な言い回しを交えつつ、無理矢理感満載で彼女はお礼の言葉を述べた。

 世の中のまともな者なら、このようなお礼を言われても「嬉しい」とはならない筈である。が、まともでない変人、敢えて付け加えるなら人格破綻者である雲峡の反応は違った。

「きゃははは♪もう♪お礼なんていいってば〜♪て、照れてしまうじゃないかぁ♪」

 先ほどまでの凹んだ顔は何処へやら、整った美形な顔面を存分に緩ませて喜ぶ仙女の雲峡であった。

 

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