orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第149話 放置

 不運にも指を切って痛がっている未桜。
 そんな傷ついた女性を放置し一目散で新川頼子の遺体へ歩み寄る。

 僕にとって彼女の指が切れてしまったことは、野生の象が道を歩く過程において、無造作にもアリを踏んづけ全く気付かないのと同様レベルで関心が向かなかった。

「未桜、悪いがそこに座って切れた指を舐めていてくれ。それくらいの傷なら数分で血もおさまる筈だ」

 身体的に傷ついた彼女に対して無情とも言える声かけだったけれど、彼女がなぜ指を切ってしまったのかという疑問を解く方に99%の興味が湧いたのだから仕方がない。

「このろくでなし〜っ!鬼〜っ!あとで覚悟しなさいよ〜っ!」

 未桜が立て続けに罵声と捨て台詞を吐いてきたが僕は完全に無視して新川頼子の長く白髪混じりの髪に触れた。

 紙で指を切ってしまうことは自らも経験済みだしよく聞く話ではあるけれど、髪で指を切った経験も無いし今のところ聞いたこともない。

 未桜が遺体の髪を手でといていただけで指を切ったとあれば、長く多い頭髪の何処かに指が切れるほどの鋭利な何かが埋もれていると考えた方が至極妥当であろう。

「一輪君、俺が調べようか?」

「いえ大丈夫です。丁寧にやりますのでご心配には及びませんよ」

 勝手な推測に過ぎないけれど、淀鴛さんが女性の髪に触り慣れているとは思えない。まぁそれを言ったら僕もそうなのだが、どうしてもここは自分の手で遺体の髪を調べたかったのである。

 

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