刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第225話 辞儀
「では今より御食事のご用意をさせていただきますが、ご存知の通り、この宿は私一人で切り盛りしておりますゆえ多少のお時間をいただきとうございます。手が行き届かず汚い部屋にございますが、食事の準備が整うまでごゆるりとお過ごしくださいませ」
淀が丁寧にそう言うと微笑を浮かべたお銀が口を開く。
「淀さんや。何か手伝えることがあれば遠慮なく言っておくんなまし、ここは歴とした宿屋かも知れぬが五人の客を相手にたった一人では大変であろうに」
お銀の思いがけぬ言葉に淀が初めて笑顔を見せる。
「ご心配によるお気遣い、大変嬉しく存じます。しかしながらお客様に手伝いをされたとあっては申し訳無さすぎて私めの気が収まりませぬ。そのお気持ちだけで十分に嬉しゅうございます。ではこれにて一旦失礼致します」
淀はお銀に向かってお辞儀をし、さっと踵を返すとそそくさと一階へと降りて行った。
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