orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

僕達の世界線は永遠に変わらない 5〜6話

[告白]

 

「…………が…す…」

「ん!?ガス?声が小さくて聴き取れないんだけど」

「……………」

「お~い、何にも聴こえないぞ」

「あなたのことが好きだって言ってるのよーーーっ!」

「おわっ!?」

 僕は電話越しの大声に驚きスマホを落としてしまう。

 でも、結月の言った「好きだ」という言葉はしっかり聴き取れていた。

 スマホを拾いながら何を結月に言おうかと考えたけれど、予想外過ぎて上手く言葉が思いつかない。

「えっと、結月。いま、「好きだ」って言った?」

「…言ったわよ。でも、匡にわたしの気持ちを伝えておきたかっただけだから。すぐに返事しなくていい…」

「そ、そうか?何かごめん。急に言われて言葉が何も思いつかないんだ」

「だからすぐに返事はしなくていいって言ってるでしょ」

「…そうだな。でも嬉しいよ。ありがとな結月」

「な、何だか恥ずかしくなって来たからもう切るわよ。とにかく病気を治すことに集中して。じゃあね」

「あ、ああ必ず治すよ。それじゃあ」

 そう言ってゆっくりと指を動かし電話を切った。

 まさ幼馴染みの結月から告白されるとは…でも「好きだ」と言われて嬉しいと感じたことは事実。
 僕はあいつにどう返事をしたらいいのだろう?全く分からない...
 今日から最低1カ月は会えないんだし、病気が完治してから考えても遅くはないかな…

 取り敢えず、治療に入る前に二人への連絡は済ませた。

 夜まではまだ時間がある。
 さて何をしようか…
 …だめだ、特にやるべきことが思いつかない。

 人間不思議なもので、いや、僕だけかも知れないけれど、こんな特異なケースでは何も思いつかないし手に着かない。

 僕はなぜか途中で投げ出していたプレステ7のRPGをやり始め、結局夕方まで続けてしまった。

 夢中でゲームをプレイし続けていると、部屋に白衣姿の親父がやって来て言う。

「匡、そろそろ地下室に行くが心の準備は良いか?」

「えっ!?夕飯は?ゲームに夢中で昼飯も食べてないから腹が減ってるんだけど」

「いや、それで良い。できるだけ体内に異物は無い方が良いからな。それに眠ってしまえば空腹は感じなくなる」

「それもそうか。良いよ、とっくに心の準備は出来てる」

 僕には意外にもなかなかの度胸があるみたいだ。

「よし、じゃあ行くぞ」

 親父の後ろを歩きついて行った先は書斎だった。

「ここに地下室の入り口があるのか?」

「そうだ。ちょっと待ってろ」

 親父はそう言うと、本棚の右上に並ぶ医学の本を数冊取り出し、その出来た隙間にスッと手を入れた。

 
 
[秘密の地下室]

 

 すると二つ並んでいた本棚が、それぞれ左右逆方向へ「ズズズズ」と音を立てゆっくりと移動し、ドアの無い地下室への入り口が姿を現す。

 入り口から続く急勾配の暗い階段を降りると、気持ち程度にライトアップされた鋼板製のドアがあった。

 親父がドアを開け一緒に部屋の中へ入った瞬間に僕は目を見張る。

「なっ!?何だよこの部屋。治療室というより、まるで科学室じゃないか?」

「そう見えるのも当然だ。実際ここは医療室じゃなく科学室だからな」

 僕の驚いている顔を見た親父が満足そうな顔をしながら宇宙旅行の映画に出てくるような機械装置をポンポンと叩く。

「匡、これが人体万能治療ポッドだ。お前は一カ月のあいだこの中に入って病気を治す」

 その仰々しいポッドの中を覗くと、薄い青色の液体が浴槽のお湯のように溜められていた。

「僕は何をしたらいいんだ?」

「何もすることはない。ただ素っ裸になってこの中で眠っていればいいだけだ。そうだな、治療中はノンレム睡眠と同じで夢を見る事も無い」

「一カ月のあいだほぼ脳死状態になるってことか?」

「そう思ってもらって結構だ」

 僕は説明を受けてホッとした。もし意識があれば発狂しそうな状況だと想っていたから。

「このポッドについてもう少しだけ説明するぞ。最初の詳細な設定をしてひとたび治療が始まれば、コイツは全自動で動き続ける。患者の病気が完治したことを確認すると人体治療モードから人体維持モードに切り替わり、設定した期限まで稼働するようになってるんだよ」

 凄い機械装置だと感じる反面、機械と言えば気になることがある。

「あのさ、もし停電とかなったらどうなるんだ?」

「おっ!良い質問だ。この部屋の電源は全てそこにある大型蓄電池で賄われている。今は一年くらい充電しなくても大丈夫だぞ」

 なるほどね。しっかり考えられている訳だ…

 親父から治療の説明を受けていると部屋のドアが開き、母がゆっくりとこちらに近づいて来る。

「あなた、説明は終わったの?」

「概ねな。そろそろ治療に入ろうかと思っていたところだよ」

「匡、治療中は意識が無くなって何も感じないから心配しなくて大丈夫よ。それにわたしの治療が終わってポッドから出た時は、頭がスッキリして身体も軽く感じたわ」

「...ありがとう母さん。経験者がそう言ってくれると心強いよ」

「よし、匡。服を全部脱いでこのポッドの中に入ってくれ」

「分かった。でも恥ずかしいから母さんはあっちを向いてくれるかな」

「フフフ、思春期だもんね。了解」

 母が逆方向を向いてくれたあと、僕は着ていた服を全部脱ぎ捨て素っ裸になった。

 

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