orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

僕達の世界線は永遠に変わらない 9〜10話

[ちょっとしたサバイバル]

 

 二階建ての我が家にある親父の書斎は一階東側に位置する。

「親父~!母さ~ん!居るなら返事をしてくれ!」

 書斎を出て居るか分からない両親に呼び掛けるが返事は帰って来ない。

 それから一階と二階の全ての部屋も隈なく探したけれど、両親の姿は見えず気配も全く感じなかった。

 家の中は物音一つせずシ~ンと静まりかえっている...

「あれっ!?」

 普段は気にも留めないが、余りにも静かな家の所為かある異変に気付く。

 家電などの稼働音が全然聴こえない…

 確認するためキッチンに入り冷蔵庫をガバッと開けると、中にあった生ものが腐っているのだろう、たちまち途轍もない異臭が鼻を襲った。

「くっっさぁーっ!」

 残念ながら予想通り冷蔵庫の電源は切れていた。
 停電かブレーカーが落ちてしまっているのだろうか?
 急いで廊下にある分電盤を確認しに行くと、ブレーカーのスチッチはONになったままだった。

 とすると停電か…あっ!スマホは?

 最後にスマホを使用したのは自分の部屋だ!

 二階の自分の部屋へ向かい、最後に置いた記憶がある机の上を見ると。

「あった!良かった~」

 手に取って親父に電話をかけようとするが、スマホの画面は真っ暗のままで起動しない。

「なんだよ。電池切れか…停電してるみたいだしなぁ…おっ!そうだ地下室に持って行けば」

 コンセントの差込口に刺さったままの充電用アダプタを抜き取り、地下室へと駆け足で移動する。

 何処かにコンセントの差込口がないものかと、人体万能治療ポッドとデスクのある場所から探してみたが見つからない。

 しかし諦めずに探していると、大型蓄電池よこの操作装置の下に差込口があるのを見つけた。
 直ぐに充電アダプタを差込んでスマホに繋げる。

 すると、スマホの画面に充電中を知らせる絵柄が浮かび上がった。

「よーし、これで暫く待ってから電話をかけてみるか…」

「グルルルルル…」

 一安心したところで僕の腹が鳴り急激な空腹感が湧き出す。

「そう言えば治療に入る前から何も食べていなかったな…キッチンに戻ってみるか」

 誰も居ないキッチンに戻ると、さっき冷蔵庫を開けた時の異臭がまだ漂っていた。

 ダメ元で換気扇のスイッチを入れてみたが、やはり何の反応もなく微動だにしない。もう停電してしまっているのは間違いないだろう。

 キッチンにある三カ所の窓ガラスを全て開放し換気をすると、異臭は徐々に薄れていった。

 さてと、この空腹を満たすために今度は食糧を探さなければ…もうちょっとしたサバイバルだな。

 冷蔵庫の中にも何か食べらる物が残っているかも知れないが、異臭を嗅ぎたくなかった僕は、缶詰のような保存食がないものかとキッチンを見渡した。

 

 

[止められたライフライン

 

「確かこの辺に直してるのを見た事があるような...お、あったあった」

 三ヶ月くらい前に母が買い物から帰った時、缶詰めを棚に直していたことを想い出してその棚を漁ると、数個の鯖と桃の缶詰めが見つかった。

 鯖缶を食べるなら白ごはんが欲しいところだな...

 米のある場所は覚えていたので直ぐに取り出し、水で研ごうと水道の蛇口を捻る。
 
「えっ!?嘘だろ!?」

 パイプの先端からは一滴の水も出て来なかった。ムキになって蛇口を何度捻ってみるがやはり同じ結果になってしまう。

 電気と同様に重要なライフラインの水道も止められているらしい。

 これはいよいよ不味くないか...
 
 仕方なく桃の缶詰めを缶切りで開けて食べることにする。
 缶詰めの中には大きい桃の果肉が四切れあったが、一切れを一口で食べ、計四口を数秒でペロリと食べ終わってしまった。

 空腹は僅かに満たされものの、ある程度の満足感までは到底及ばない。

 何処かに菓子系の食べ物があるはず...

 缶詰のあった場所の横の棚を開けると未開封のポテチがあった。
 しかしこれだけ塩分の多いスナック菓子を食べてしまえば、喉がカラカラに渇いてしまうだろう。

 水を気軽に飲めない今は安易に食べない方が身のためか...ん!?待てよ。あそこに置いてあるダンボール箱は!?ミネラルウォーターじゃないか!?

 冷蔵庫の横にあるダンボール箱に近づき蓋を開けると、中にはミネラルウォーター入りのペットボトルが5本残っていた。
 
 貴重な飲料水だけどポテチを食べるためには必須!今回だけは贅沢に行ってしまうか!

 とにかくこの空腹をどうにかしたかった僕は、ポテチをバリバリと音を立てて一気に食べ終わり、ミネラルウォーターをゆっくりと丁寧に喉へ流し込む。

「ぷはぁ~っ。これで暫くは大丈夫だな」

 余り味わってはいなかったが空腹はほとんど満たされた。

 そろそろスマホの充電が少しは出来てるかもな...地下室に行って電話をかけてみるか。

 家の中の気温が時間の経過と共に上昇しているのを感じ、汗をタラタラ掻きながら地下室へ歩いて戻ると、冷房が入ったままで冷んやりしており生き返った気分になる。

 充電アダプタに繋がったままのスマホを手に取り、様々な事を案じながら電源スイッチを押す。

 スマホには見慣れた起動画面が表示され心配をよそに何事もなく立ち上がった。

 しかし、電波の通信状況を確認すると全く繋がっていないことが判明してしまう。地下室を出て他の場所へ移動してみたけれど、無情にも電波が繋がることはなかった。

 

 

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