僕達の世界線は永遠に変わらない [何者]
「ヒーリングS!」
葵が掌を仰向けで眠る美琴の身体にかざし、お馴染みの治癒能力で気絶から回復させる。
「ん...」
再び美琴が気絶から目覚め葵と柴門の顔に焦点を合わせた。
「おっ!永い眠りから姫様のお目覚めだ」
「葵さん、柴門さん...ここは?」
二人の名を呼び、今いる場所を特定しようと辺りを見渡す美琴。
「トカゲの居た家の隣家よ。柴門君の邪魔にならないように避難したの」
「トカゲ...あっ!?あの巨大なトカゲは!?」
見ただけで気絶するほど苦手な生物の名を聞き、条件反射的にガバッと身を起こして二人に尋ねた。
ニコッと笑みを浮かべて葵が答える。
「あのね。強くてやばいトカゲだったけどぉ、柴門君がたった一人で倒してくれたのよ♪」
「そ、そっか。良かったぁ...柴門さんありがとう。それに今回は役立たずでごめんなさい」
「いやいや謝る必要は無いし礼にも及ばねえよ。なんせ暴れまくってストレス発散にもなったからな」
美琴に申し訳なさそうな顔でそう言われ、照れるように頭を掻きながら柴門は返した。
三人は揃って知らぬ人の家を出て、サバンナモニターの出現した家があった土地へ移動する。
もはや更地に近い有り様となった土地を目の当たりにした葵が、さっきまでの喜びの表情から呆れ顔になって言う。
「柴門君...あんた馬鹿なの?中に人が居たらとか考えなかった?もうちょっとやりようってもんがあったんじゃない?」
「ちっ、うっせえなぁ。俺だって少しは反省してるっての。でも家の中に人は居なかったと思うぜ。その証拠にあれを見てみろ」
葵に後付けの釘を刺され、柴門が気を悪くしたのか拗ねたように言い返し、数十分前まで家のあった場所を指差した。
葵と美琴が息を合わせるかのように指差す方向を注視すると、陥没したフローリングに人間の白い頭蓋骨が3つほど転がっていた。
「柴門君の仕業じゃ無いわよね?」
「ったり前だろ!俺の技じゃあんな風にはならねーよ!」
「確かに...確かに爆発で人はあんな姿にならないわね。この家の家族は巨大トカゲに襲われたと考えた方が自然の流れだわ...」
ようやくいつもの調子を取り戻した様子の美琴がそう分析した。
それから、三人が戦闘により荒れてしまったこの土地に、火事の元となる火種が残ってはいないか手分けして確認していると...
「カァーッ!カァーッ!カァーッ!」
いつの間にか現れた5羽の化け物カラス達が土地の真上上空で旋回しつつ激しい鳴き声を上げる。
カラス達が旋回する円の中心には、他の化け物カラスとは明らかに違う人の形をした何者かが、空中に浮き、腕を組んで地上の柴門らを睨みつけているのであった...
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