刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ93
「助太刀無用!儂一人でこの鬼は片付ける!元の位置へ戻り動くでないぞ!」
「えっ!?あっ!?えーーーっ!?」
明らかなる窮地に助太刀を断られた蓮左衛門が、しどろもどろになり立ち止まる。
「おっっ!?」
雪舟丸によって腰の帯を後ろへグイッと引っ張られ、蓮左衛門が驚きの声を上げた。
「蓮左衛門。あのご様子ではもはや言うことは聞いてくれまいよ。ここは仙花様の意思を尊重し、黙って高みの見物をさせてもらおうではないか。なに、いざとなれば拙者の『取って置き』でなんとでもしてみせるさ」
「そ、そうでござるか...ならば...」
今回も仕方なく助太刀を諦めたちょっと可哀想な蓮左衛門であった。
既に二人の存在を忘れた仙花が鬼に言う。
「鬼めが韋駄地のことを都合良く『友』と呼ぶか。戯言以外の何物でもないのう、どれだけ韋駄地の心を蝕んで来たことやら...ところでお主、なぜ現実世界で身体を得ることができたのだ?」
この時仙花は、光圀に出会う以前の失われた記憶の一部が甦り、朧げながら昔見たことのある怪異の映像が頭をよぎっていた。
「ガガガ。簡単なことよ。儂はこの数十年のあいだ源蔵が死なぬ程度に少しずつ生命力を奪っておったのだ。具現化できたこの身体はその賜物というわけさ」
「...まぁ、そんなところだろうとは踏んでおったが案の定だったな。俄然、お主が韋駄地を『友』と呼のは些か可笑しかろうて...もう消えてしまえ、鬼よ!」
怒りを露わにした仙花が鬼の身体を貫通している鳳来極光をぐるりと回し、地へと向く刃を鬼の頭の方へ向けた!
「グゥエッ!?」
もはや韋駄地の魂は此処に在らず、完全に鬼のものとなった肉体を内部から傷つけられ鬼が悶え、目下の仙花目掛け伸ばした両腕で反撃に転じる!
「握り潰してやるわーーーっ!!!!」
「遅い!」
「ヒュッ!ズバッ!!」
「オガッ!!??」
鬼の叫び声に全く動じず、仙花は両側から迫る両腕の攻撃を跳躍してかわす!と同時に鳳来極光を鬼の頭まで斬り上げ上半身を真っ二つに両断してしまった!
鬼の身体が自らの両腕の重さにより、両断された部分から大きく両側へ分かれて開き、そのまま「ズズン!」と音を立てて瓦屋根の上倒れる。
そして鬼の身体が禍々しい濃い紫色の蒸気をあげ徐々に消えていき、最後には跡形も無く消え去った...
「初の怪異退治、此処に完了...ふぅ〜、ちと疲れたわい...」
郷六の村から夜通し走って蛇腹へ辿り着き、ほとんど睡眠を取らずして戦い続けた「芥藻屑との戦」はようやく終焉の時を迎えたのである...
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