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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編 最終話

「よし、皆揃ったな...では、最後の締めを始めようか」

「「「御意!」」」

 同時に三人の返事は聴こえたがもう一人の返事が足りない。仙花が返事をしない主の方を見ると、居眠り侍は我慢できなかったのか案の定爆睡中であった。

「すぴ~、すぴ~、すぴ~」

 雪舟丸の寝息が一味全員の耳を打つ。
 
 お銀が殺人的手刀で叩き起こそうとしたけれど、仙花が首を横に振り「寝かせておけ」とそれを止めた。

 残った四人が屋根上の裾へ横並びに立ち、下で待つ人々へ向け語りだす。

「皆の者!聴いてくれ!儂は徳川御三家にして水戸藩の元藩主徳川光圀の娘、徳川仙花である。此度は囚われの身となっていた其方らを解放し、苦しめていた芥藻屑の連中も全て儂らが滅ぼした」

 「徳川」の名を出すことは出来る限り控えるよう言われていた彼女であったが、民衆の注目と信用を得るためには「徳川」の名を用いることが手っ取り早いことを知り、今回も躊躇うことなく名乗ったものである。

 横に並ぶお銀も、「善行」ならば光圀の名を汚すことはあるまいと黙認していた。

 やはり「徳川」と「光圀」の名は下総の人々にも轟いており、下から仙花を見上げる民衆の目の色が瞬時に尊い者を見るようなものに変わる。芥藻屑を滅ぼしたことについては少なからず響めきが起こった。

「うむ、その響めきは最もだな。だが正真正銘まごうことなく芥藻屑は滅ぼした!そこでだ、この蛇腹に残る金銀財宝や食料を各々持てるだけ郷へ持ち帰るが良かろう。おっと!物の奪い合いだけはしてくれるなよ!ハッハッハッ」

 下から仙花の粋な計らいに歓声があがる。

 仙花はその歓声を聴きながらくるりと後ろへ踵を返す。

「これで役目は果たした...陽も昇り、春の陽気が心地よいのう。儂はこのまま屋根上で日向ぼっこしながら暫く寝ようと思うが、皆はどうする?」

 蓮左衛門と九兵衛は「やっと休める」と即座に賛同し、忍びの者として抵抗感のあったお銀も「今だけはお付き合い致しましょう」と一緒になり、屋根瓦の上に四人は寝転んだ。

「美しい空だのう...zzzzzz」

 春もうららなぽかぽか陽気の中、戦いで疲れきった身体を休める仙花一味は、気を緩め程なく深い眠りに入ったのだった...

 

 こうして、百鬼夜行の目撃された薩摩の地を終着点とし、その途中、仙女へ覚醒するため出雲の地を目指して光圀の元を発った仙花一行は、初日と二日目にして多くの人命を救うも、激しい戦を経験する前途多難たるものとなった。

 とはいえ、仙花の世直し旅はまだ始まっばかり。
 この先の旅路にて、彼女は奇想天外かつ摩訶不思議な冒険を経験することになるのだが、それはまた別のお話し...


刀姫in 世直し道中ひざくりげ
鬼武者討伐編 完


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