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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ91

 はてさて、大悪党芥藻屑の頭領であり、鬼武者である韋駄地源蔵の残酷な過去物語にいつの間にやらどっぷり浸かってしまったけれど、その頃より六十年近くもの時が経過した今へと戻ってみようではないか...

 芥藻屑の領地である蛇腹の二階建ての中央社、その屋根上で彼と武器を突き合わせ対峙するは、天下に名を轟かす水戸光圀の養子にして仙女への覚醒を当面の目的とする十六歳の美少女水戸仙花。

 仙花の所持する特別な刀「鳳来極光」によって、韋駄地の刀は最も容易く叩き折られ、彼は一度手放した長槍を拾い上げ仙花に向けて構え立つ。

「...ん?其方。今しがた、何か申したか?」

 彼女の耳に突如として、誰かの声が届いたような気がして問うたのだった。

「?...何も申さぬ」

「そうか?儂の空耳かのう...ん~、まぁ良い。いざ!参るっ!!」

 サッと頭を切り換えた仙花が風のように駆け一気に間合いを詰めた!

「ビュッ!」

 彼女の顔面目掛け、長槍による閃光の如き突きが放たれた!

「ギィン!...キン!」

 仙花は長槍を刀で払いのけ、すぐさま韋駄地の面頬へ一刀を入れる!
 先日から戦闘を繰り返す仙花の武術の腕前は驚愕の早さで成長していた。
 
 韋駄地が間合いを取るため後ろへ退がると、顔に着けていた面頬が真っ二つに割れ素顔が晒け出される。

 顕れた顔面は少年の頃よりも禍々しく、もはや目鼻の数が人と同じというだけの、怪異に対し確定的な言葉は相応しくないのかも知れないけれど、紛うことなく怪異の顔面となっていた。

「其方の姿、もはや人に在らぬな...さぞや辛く、悲惨な人生を歩んで来たのであろう...」

 まるで韋駄地を哀れむかのような仙花の表情たるや、戦いの真っ只中にあって厳しさとは程多く、子を見守る母の如き優しささえ含んでいた。

「...哀れみなど不要。しかも敵から言われようとは不愉快極まりなし」

 韋駄地が仙花の哀れみに対し無礼千万とばかりに吐き捨てた。

「ハハハ、それもそうであろうな...悪かった。では、其方を長く暗い苦しみから儂が解放してやろう!」

 仙花の仙花の顔付きが一瞬で真剣そのもののとなり、韋駄地に向かって再び斬りかかる!

「ギッキィン!!!」

「ッザン!」

「ぐっ!?」

 仙花渾身の一振りを両手で支え持つ長槍で防ごうとした韋駄地だったが、長槍は鳳来極光の刃に耐えきれず両断され、そのままの勢いで右腕を付け根から斬り落とされた。

「ズザン!!」

「っ!?」

 勢いの止まらない仙花はその場で身体を回転させ、韋駄地のもう一方の腕も斬り落とす!

「ズン!!」

「がぁっ!?」

 さらにはとどめとばかりに彼の心臓を狙い、煌めく鳳来極光の剣先を突き立てたのだった!!

 

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