刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ11 風が止む
九兵衛の倒れるすぐ横には古びた囲炉裏があり、くべられた残り僅かな巻にお銀が火球を投げつける。
「ボウッ!」
薪が音を立てて一気に燃え上がり、部屋の中に暖かな光が立ち込めた。
しかしたったこれだけの薪ではあっという間に燃え尽きてしまう。
仙花達は寝ている雪舟丸も起こし、追加の薪やその代わりとなる物を総出で集めたのだった。
床にあった三体の白骨死体は蓮左衛門と雪舟丸、それに九兵衛を加えた男衆で丁重に扱い庭へ埋めた。雨の降る中の埋葬も済み、ようやくひと段落したところで全員揃って囲炉裏を囲み、保存のきく猪の干し肉を取り出し口にする。
皆がちびちびと酒を飲みつつ黙々と食べていると、外の風が強くなったのか、家の戸が「ガタガタ」と揺れ始めた。
「なんだ?今宵は嵐にでもなるのかのう?」
「嵐になる兆候は特にありませんでしたけれど...たまにはこんな日もございましょう...」
「何はともあれ宿が見つかって良かったでござるなぁ...」
「でやんすねぇ」
「...........だな」
暗い闇夜に白骨死体のあったボロ屋、おまけに外は嵐といった如何にも何かが起きそうな雰囲気が漂う...
そんな雰囲気など気にも止めず干し肉と酒で空腹を満たした仙花達。雪舟丸が定常運転で最初に寝始め、疲労困憊だったお銀が続き、仙花も珍しく早めのご就寝となり、残った蓮左衛門と九兵衛が静かに語りながら酒を呑む...
外の嵐は激しくなることは無かったが、揺れる戸の音が鳴り止まぬ程度に吹き荒れていた。
「蓮さん、皆んな早々に寝てしまったでやんすねぇ」
「ああ、常に寝ている雪舟丸殿は別として、仙花様とお銀は疲れている様子だったでござるからな。拙者達も今宵はほどほどにせねば...」
「確かに...でも蓮さん。あっしは埋めた三体の白骨死体が気掛かりなんでやんす。家族だったのかどうかすら不明でやんすが...やっぱり何者かに襲われたでやんすかねぇ?」
「う〜む。拙者も殺しの線は考えたでござるが...手掛かりになるものが何も無いゆえ、何とも言えぬでござるなぁ...」
九兵衛が白骨死体の件について話しを持ち出し、蓮左衛門が応じたあと、二人は互いに一考し黙り込む...
この時、今まで「ガタガタ」と鳴り止まなかった戸の音がピタッと止まり、暫くのあいだ無音の状態が続いた。
「...急に風が止んだでやんすねぇ」
「のようでござるな。丁度良い、外で小便を済ませて寝るとするか」
もう寝ることに決めた二人が仲間を起こさぬよう、そろりそろりと歩き静かに外へ出た...
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