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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ12 不気味

 外は降り注いだ地面がぬかるんではいたものの、先程まで続いていた嵐は過ぎ去り、しんとしたいつもの静けさを取り戻していた。

 だが空を見上げれば、未だ雨雲に覆われて月明かりもなく、普段よりも足下が覚束ないほど暗い空間が不気味さを醸し出す...

「まるで台風の過ぎ去った跡の静けさのようでやんすねぇ...」

「そうでござるなぁ...こういった夜には何か不可思議なことが起こり得る。さっさと済ませて寝るとしよう」

 二人は就寝前の用を足すため、揃って防風林の在る方へと歩いて向かった。

 嵐もおさまった静かで暗い防風林付近には、家の中の床に並んでいた三体の白骨死体を埋葬した場所が在る。

「ちょっと肌寒いでやんすねぇ」

「確かに...涼しいを通り越して冷えるでござるなぁ...」

 などと言いながら即席の墓の横を通り過ぎ、二人が草むらを的に用を足していると...

「........うう..」

「ん!?九兵衛、何か言ったでござるか?」

「いやぁ、蓮さんこそ...」

 微かに聴こえた声が双方のものだと思い声を掛け合ったが、相手の反応からしてどうやら違うことを知る。

「嵐が去って狐か狸でも出て来たでござるかな?」

「どうでやんすかねぇ...てっきり蓮さんの呻き声だと思ったんでやんすが...寒っ!身体冷え切る前にとっとと家に入りやしょう」

「そうでござるな...」

 用を終えた二人が身なりを整え、歩いて来た方をほぼ同時に振り返ると...

「のわっ!!??」

「ほうっ!!??」

 二人の視界に予想だにしていなかったものが映り退けぞった。
 九兵衛はガタガタと震え出し、蓮左衛門は動かざる石像のように固まる。

「れれれ蓮さん...みみみ見えてるのはあっしだけじゃ...ああありやせんよね?」

「...........あ、あああ。せ、拙者にも見えているでご、ざる...」

 急に渇きを覚えた喉から声を絞り出し、辛うじて言葉を交わす二人...
 
 彼らが思いもよらず目の当たりしているのは、骨と皮だけと云っても過言ではないほど痩せ細り、死人のような顔つきをした黒い長髪の女性の姿であった。
 幾ら不気味な闇夜にバッタリと出会したとはいえ、彼らもただの女性を見ただけではこんな不様な格好にはならない。
 そう、彼らの目の前に居るのはただの女性ではなく、身体が半透明な上、両足が膝のあたりから消えており、まごうことなく「幽霊」そのものだったのである...

 彼らがこの世の者ではない幽霊なる者と遭遇したのは、これが生まれて初めてのことであった。

 

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