orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第25話 YouTuber

 豆苗神社へはもはや手の届く距離まで近づいたが、ここで少々僕達の環境というか状況を説明しておかねばならない。

 僕が探偵の他に副業として、顔出しNGでやっているYouTuberなのは周知の実事だろう。
 
 実は今回の廃墟探索でも民宿に着いた時点からずっとカメラを回し続けていたのである。

 因みに僕の両手は何も持っていない素手の状態であり、助手の鈴村未桜も同じく手には何も持っていない。
 
 では僕が回し続けるカメラは一体何処に仕掛けているのか?

 別に勿体ぶる気もないし大した仕掛けでもないので答えを云ってしまうと、僕の着ているジャンパーの胸ポケットに仕込んであるのだ。

 ポケットのボタンに目立たない程度の装飾を加え、その部分に小型カメラのレンズがカチッと固定されているので、録画ボタンを押しさえすれば、あとは手ぶらで勝手に何もせずとも動画を撮り続けてくれるといった寸法である。

 人にはよほど注視されない限りまずバレることも無い。

 全てを自己の視点と同様の絵を撮りたければ、胸より頭に付けた方が妥当ではないのかという考えもあるかも知れないけれど、頭の何処かに小型カメラを付けるとなると結構問題が多いのである。

 例えば耳とこめかみ辺りの谷間へ鉛筆を挟むように付けたとすると、レンズ部分は良いとしてカメラの本体を別の部分へ取り付けねばならないし、本体とレンズを繋ぐコードも邪魔で仕方がない。
 もっともその方法は耳が全開する短髪の人限定であり、ロン毛では無いが耳が半分以上隠れてしまう僕にはまず持って不可能だ。

 他にもアイディアを考え色々試してみた結果、たどり着いたのが胸ポケットだったとい訳である。

 これならば人と接する時にも相手に違和感を与えることは無いし、歩いた振動でブレないように工夫してあるので安定感も抜群と云って良い。

 無論、この方法は盗撮をするには不向きであることも付け加えておこう。

 僕は盗撮する気など微塵も無いが、世の中には傘や靴などにカメラを取り付けて、下から盗撮する卑怯で鬼畜な輩も世には居るようなのでお気をつけあれ。

 そうだな、僕のYouTube 動画用の小型カメラのイメージは、最近すっかりお馴染みとなった車両に搭載するドラレコと思って頂ければ健全であろうし、幸いである。

 ところで、このカメラは民宿到着後からずっと回り続けていたわけだから、未桜が森で行った、角度を変えて見れば「破廉恥」とも取れる行動もバッチリ記録されているわけだ。が、当然その場面はYouTube 動画編集担当でもある彼女がカットしてくれるに違いない。


「此処まで色々ありましたがやっと、やっと豆苗神社に着きました〜」

 僕はyoutube向けに声色を変えてそう言った。

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