一輪の廃墟好き 第101話 上の中
改めて言うのも何だが、僕は日頃から上の中くらいのイケメンだと自負している。
上の上だと言い切ってしまわないところに、僕が決して鼻につくようなナルシストではないという事実と、ささやかなる哀愁を感じ取っていただきたいのだけれど、そんな上の中のイケメンである僕をもってしても、男が更衣室、もとい脱衣場で服を着用する様を事細かく語っても、仕方が無いというか面白味も何にもあろう筈もない。
というわけで、僕達はたった今しがた「民宿むらやど」へ戻って来たところであった。
玄関で若女将(仮)が素敵な笑顔で迎えてくれる。
「お帰りなさいませぇ。如何でしたか?井伊影温泉は?」
「いやぁ、本当に最高でしたよ。井伊影村にあんな素晴らしい温泉があるなんて羨ましい限りです」
僕は素直に思ったままの感想を述べ、続けて隣にいる未桜も温泉について何か言うものだと思いきや。
「あのぉ、すみません。お腹がペコペコで死にそうなんですぅ、お料理の方はぁ?」
井伊影温泉から出た直後は、死人が生き返ったかのように元気だった彼女が、また疲労しきった顔をして一応申しわけなそうに訊いた。
若女将(仮)が待ってましたと言わんばかりに即座に応じる。
「あらあら、御心配には及びません。ちゃ~んと準備してありますよぉ♪部屋に荷物を置いて奥の居間までお越しください」
僕達は居間の場所の簡単な説明を受け、荷物を置きに階段を上がり二階の部屋へと向かったのだった。
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