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一輪の廃墟好き 第52話 生活臭

 何はともあれ、彼女の突飛な奇行が曲がりなりにも功を奏し、僕達は淀鴛家の居間へ入ることが出来た。

 雨風などの様々な要因によって汚れに汚れまくった畳張りの居間は、30年という長い年月と風が通り抜けていた所為か、人が住んでいた頃の生活臭は完全に消えていた。

 生活臭で思い出したのだが、僕が大学生の頃、とある事情があって賃貸の転居先を探す際、不動産業者の方が同行し案内する幾つかの物件の中には何故かクリーニングが済んでいない、前住人の生活臭がこれでもかと漂う部屋があった。

 どちらかと言えば清潔好きな僕からしてみれば、案内される物件でクリーニングがされていないのは完全にアウトである。

 よほどの好条件であれば考える余地もあろうけれど、清掃業者などによるクリーニングがされておらず、前住人の垢や抜け毛の塊などが残った風呂場を見せられた日には、その物件で決めることはまず持ってあり得ないし考えられない。

 どんな理由があるにせよ、出来れば物件のクリーニングは優先的に済ませていただきところである。

 こと廃墟に関しては、ほとんどの場合クリーニングされるようなことは無いのだが、人が利用しなくなって数年しか経過していないものは別として、大抵はこの家のように生活臭は無くなっているのが普通であった。

 

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