orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第105話 生卵

「もうすき焼きの方はお召し上がりなれると思いますので、お好みでそちらの卵を使ってください」

 若女将(仮)がそう言って僕達の場を去ったあと、未桜は即座に土鍋の蓋を開けた。

 土鍋の中はすき焼きのスープが沸騰グツグツと音を立てて沸騰しており、美味しそうな牛肉や椎茸、白菜や人参などの野菜たちが小躍りしているかのである。

「わぁ♪美味しそう♪」

「よし、めちゃくちゃ腹も減っていることだし、ビールがまだだが食べてしまおう!」

「うんうん♪食べよう食べよう♪」

 僕達は「お好みで」と勧められた卵を躊躇なく割ってお椀に投じ、職人が手作りで作ったであろう上等な箸をグルグルと高速させ大急ぎでかき混ぜた。

 ところで、すき焼きのお供としてすっかりお馴染みの卵だが、いったいいつ頃から生卵を使って食すようになったのかご存知だろうか?
 所説あるらしいのだが、どうやら江戸時代後期が有力なようである。
 といっても、当時は現在のような完成形の「すき焼き」の姿ではなく、様々な料理名で呼ばれていたらしいのでハッキリとしたことは分からないという結論に至る。
 自分で振っておいてなんだけれど、なんともしまりのない答えになってしまって申し訳ない。

 などとまたもやどうでも良いことを考えている間に、僕の視界に入っている助手でうら若き乙女の鈴村未桜は、大量の牛肉を一気に口の中へ放り込み、まるでリスのように頬を膨らませ、口の端から黄色い生卵の一筋を覗かせていたのだった...

 

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