刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ6
皆がひとしきり笑い場も和み、友人同士の集まりではないかと疑うほど宴会は盛り上がりだした。
うっかりが売り?の九兵衛が持参してきたひょっとこ面を被り、見たこともない型にはまらぬ奇妙動きで踊り出す。
するとお銀が着物の袖から笛を取り出し楽しげな音を奏でる。実はこの笛、本来の用途は人を殺傷するための吹き矢となる筒だったのだけれど、そんなことは誰も知らないし知る必要もないだろう。
最悪とも言える初顔合わせの場で一悶着あった二人の共演は、以外や意外、まるで何年も連れそう旅芸人のように息がピッタリ合っていた。
二人に合わせ他の者もさも楽しそうな笑顔で自然に手拍子を弾ませる。
そのうち蓮左衞門と仙花も酔った勢いで踊りだし、最後には光圀まで参加して宴もたけなわな時を迎えたのだった。
されど居眠り斬りの雪舟丸だけは、これだけ騒がしい場にいながらすやすやと眠っていたのだから、もはや病気と言っても過言では無いかも知れない。と言うかある意味病気なのだが...
踊りが終わると今度は酒の呑み比べが賑やかに始まった。
ご機嫌な光圀が「ど奴が最高の呑兵衛か決めてみよ」と煽ったのがことの発端。手を挙げたの見た目にも酒に強そうな蓮左衞門をはじめ、これまた強そうなお銀、お主はいける口なのか?の伏兵的な存在である滝之助、そして齢十六の刀姫こと仙花であった。
四人が横一列に並んで座り、各々の目の前にはお猪口では埒が開かぬと紅色の盃が置かれた。
盃に酒を注ぐは絹江と九兵衛の二人。
呑んだ数を数えるは光圀といった役回りである。
「拙者は未だかつて負け知らずの酒豪、蓮左衞門でござるにこの勝負自信あり!」
「あら、奇遇ね蓮さん。あたしも酒の呑み比べとくれば負け知らずで通っているのよ」
「まっ、負けませんよう」
「ほほ~皆自信があるのじゃなぁ。だが残念。勝つのはこの仙花よ。儂は既に殊の外呑んでおるが何故だか全くもって負ける気がしないのう」
と各々が意気込みらしい言葉を吐き、まるで試合をするような雰囲気の中、光圀がニカッと笑って号令を掛ける。
「良いか。この勝負、皆手抜きなどせず本気でかかるのだぞ。勝者にはとっておきの家宝を与えてやるでのう。では....いざ尋常に!始め!」
こうして、明日の朝早くから旅立つ予定の者達を含めた無謀極まりない呑み比べは開始された。
呑み手の四人は豪語しただけあって凄まじい勢いであたかも水を飲むようにガブガブと呑みすすめる。
四人の勢いはとどまることを知らず、あっという間に十杯を超えていく。
だが永久に酒を呑み続けることは当然不可能であり、早くも最初の脱落者が出ようとしていた。
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