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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ18

 仙花に光圀の言い分が伝わりにっこりと屈託の無い笑みを見せる
 やはりこの娘には笑顔が一番似合う。

「儂のことを大切に想ってくれているのは十分伝わった。本当に嬉しいぞ、じっさま♪...しかしだな、一つわがままを言わせてもらおう。儂はのう、出雲の仙人に会い試練を受けたとして、たとえそこで仙女になれずとも、そのまま薩摩の地を目指し旅を続けようと想っておるよ」

 驚いた光圀が間髪入れずに言う。

「馬鹿なことを申すな。お主が強いとはいえまだまだ中途半端だと言ったであろう。念を押しておくが、仙女になることが叶わねば必ず帰って来るんじゃぞ。良いな!」

「うむ、こればかりは断じて断ずるぞ」

 仙花は正座の姿勢のまま真っ直ぐ視線を合わせ老人の願望をバッサリと断ち切った。
 光圀は一瞬言葉を失ったがなんとか気を取り戻す。

「..........頑な、じゃな。仙花よ」

「そうだな、じっさま。だが聞いておくれ。不思議じゃが百鬼夜行の話を聞いてからというもの身体ウズウズしてしょうがないのだ。儂が旅に出て怪異どもとやり合うことは宿命なのかもしれん」

「......そうか....」

 真剣な目で話す仙花を前にして偉大な人物が肩を落とす。年齢は離れているが、光圀は彼女を実の娘とも孫ともいえるほど大事にし可愛がり育てて来た。その娘が命をかけて言うわがままに気落ちした彼を誰が責められようか。

「お主の心中は察した。だが....」

 気落ちした光圀が心を決め何かを伝えようとしたその時。
 二人のいる寝室の襖が静かに開き、黒い人影が部屋に入って来た。

「おやおや、まだおやすみではございませんでしたか?余計なことかもしれませぬが光圀様も仙花様も明日のためにもそろそろご就寝された方が良いのでは?」

 人影の正体は宴の席だというのに、少し飯を食った時以外はずっと眠り続けていた「居眠り斬りの雪舟丸」であった。

 意外な人物の登場に引くほど驚いた二人だったが、話す雪舟丸の行動により無理矢理声を押し殺す。

 彼は二人に話しながら左手の人差し指を口元に立て、「静かに」といった合図を送り、もう片方の人差し指で天井を指し、何者かが侵入していることを知らせたのである。

「ささ、水入らずの大事な会話を終わらせてしまうのは心痛いが、今宵はこの辺で終幕と致しましょう」

 雪舟丸はそう言いながら天井の一点を見つめて長刀の柄に手をかけた。

「何処の大鼠か知らぬが、折角の親子水入らずの会話を盗み聴きするとは万死に値するぞ!」

「ザン!」

 天井を目にも止まらぬ抜刀術で突き刺したのだった!

 

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