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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ3

 お銀の語る「座頭市」の話しを「うんうん」と相槌を打ち真剣に聞く仙花と蓮左衞門を他所に、薬師の九兵衛は持参していた書物を読み始める。武術については余り関心が無いらしい。

 その九兵衛の背後を四、五歩ほど間を置いて眠りながら歩く雪舟丸に至っては、無駄に立派な鼻風船を膨らませていた。

「どのような経緯があったのかは分からぬが相手は三人だった。片や盲目の剣士『座頭市』はただ一人。盲目の剣士一人に三人が三人とも刀を抜き囲むような位置取りをしてたっけ。まぁこの時点で浪人どもの腕前はたかが知れるけれど、あたしの目を惹いたのは『座頭市』の方さね」

 確かにたった一人の、しかも盲目で杖を頼りに歩くような男一人に対し、全員が刀を握り袋にするような輩の実力など総じてたかが知れているというものだ。

「腰に帯びた刀の柄を右手で握ったまま居合抜きの構えを取っていたが......あたしゃその姿を観て心底ゾッとしたよ。なんせ離れたあたしのとこまで『座頭市』の圧が届いてたんだからねぇ。雑魚な浪人どもは気付いちゃ居なかったようだけど...」

 昨夜、西山御殿に侵入した抜け忍「雲隠れの磨伊蔵」と一戦を交えたお銀。

 名は間抜けな雰囲気漂う磨伊蔵だったが、剣の腕前は相当なものであったのは事実である。その手練れを相手に全く引けをとらなかったお銀をして「ゾッとした」と言わしめた座頭市

 九兵衛と雪舟丸は相変わらずであったけれど、仙花と蓮左衞門の二人はお銀の話しに夢中なり聞き入っていた。

「結末は、結末はどうなったでござるか?」

 蓮左衞門もここまでの話しで結果は概ね予想できていた。しかし、彼はその結果よりもどうやって座頭市が勝利したのかを知りたかったのである。

「フフフ、嬉しそうに訊いてくれるねぇ。そんな顔されたらあたしも話し甲斐があるってもんだ。よしよし、結末を教えてあげようかねぇ...でもまあ勝負は一弾指で決着したよ。最初に座頭市の正面で構えていた男が気合の言葉を吐き斬りかかろうと動いた。そして...本当の『目にも留まらぬ速さ』ってのはああいうのを云うんだろうねぇ。座頭市が動いたのは分かった。分かったんだけど太刀筋がほとんど見えなかった。座頭市の周囲から一斉に斬りかかった三人の浪人どもは皆、腹のあたりから真横に両断されていたよ。振りかぶった刀を振り下ろすことも出来ずにねぇ」

 お銀が話し終え、沈黙する仙花と蓮左衞門の顔を覗き込むと、驚きと興奮からか二人は揃って目を輝かせていた。

 

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