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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ8

「ふぅん、何だか犬の遠吠えのように聞こえるわねぇ。あたしはもう三十杯目を呑み終えたところだけれど、蓮さん、貴方は未だ二十五杯目よぉ。ちゃぁんと数えていたのだから間違い無いわぁ♪」

 多量の酒を呑みながらもまだまだ意識のしっかりしているお銀は、蓮左衞門に冷たい視線を贈りお可笑しそうに鼻で笑った。

 蓮左衞門が「まさか!?」と驚きの顔をし、お銀を指差しながら数を数える光圀に無言で訴える。

「確かにお銀は三十を超えておる。お主とは五杯以上の差がついてしまったぞ」

 小さく頭を振り光圀は答えた。

「ぬぅぉおおおーーーっ!男として!いいや大酒豪の誇りに賭けて負けるわけには如何でござるよーーーーっ!!!九兵衛!もっと!もっと早く酒を注いでくれい!!」

 普段の蓮左衞門からは想像できないような雄叫びをあげ、盃の酒を一気呑みで片付けていく。

 だがこれがいけなかった。

 一気呑みを始めてからは九兵衛が立て続けに五杯の酒を注ぎ、それを豪快に呑み干した蓮左衞門は白目をむいて前のめりに倒れ意識を失ったものである。

「あらあらあら、大酒豪が聞いて呆れちゃうわねぇ。結局残ったのがあたしと仙花様の二人とは、笑えるやら笑えないやら......」

 蓮左衞門を見下す目をしたお銀が辛辣な言葉で吐き捨てた。
 
 そして一騎討ちの相手となる仙花の方を向き絹江に問う。

「絹江さん。仙花様は今で何杯目でしょう?」

 額に汗を垂らしながら仙花の盃に酒を注ぐ絹江が目線を盃に向けたまま言う。

「信じられないでしょうけれど今注ぐ酒で四十八杯目にございます。お銀さん。もうどうか白旗を揚げておくんなまし。わたしは仙花様のことが心配で心配で...」

「まっ!?えええええええっ!?......」

 そのあり得ない数を聞き、自信たっぷりであったお銀の脳裏にバリっと電撃が走ったお銀は余りの衝撃に事切れたのか、手に持っていた盃をポロリと落とし、座ったまま気絶し眠りについたのだった。

「おっ!?お銀も逝ってしまったか!この勝負、儂の圧勝であったなぁハッハッハッ〜!」

 絹江が注いだばかりの酒をグイッと呑み干した仙花が上機嫌で単独の勝鬨をあげた。
 ここぞとばかりに絹江が仙花から盃を取りあげる。

「ささ。仙花様勝負事は終わりにございます。絹江は今より片付けに入ります故、明日のためにも寝る準備を始めてくださいな」

「なにっ!?儂はまだまだ大丈夫!もっともっと呑むのじゃ〜っ!」

 急に盃を取り上げられ、口を尖らせて駄々を捏ねる仙花であった。

 

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