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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ6

「余り急いで歩かないでおくんなましよ~。あっしは体力に自信が無いのに自信があるんでさぁ」

 九兵衛は一行になんとか食らいつくも一里と歩かぬうちに弱音を吐き出した。

「ならば身体を鍛える良い機会ではないか?ほれ!もっと速く歩くでござるよ九兵衛!」

「ひゃっ!?」

 喝入れのため蓮左衞門が不意に背中をバンと叩く。が、九兵衛は情けない声を上げるだけでこれ以上素早くは歩けないらしい。

「はぁはぁはぁはぁ、や、やっぱりあっしは駄目な男でさぁ...こんなことならもっと体力をつけておけば良かったでさぁ...」

 泣き言を積み重ね、疲労からか歩く速度が徐々に落ち、一行からかなり離されつつあった。

「駄目でござるなぁ九兵衛。う~む、よかろう、拙者がお主の荷物を引き受けるゆえ渡すでござるよ」

「い、いやいやいや。蓮さんはあんなに重い千両箱を背負っている上に仙花様やお銀さんの荷物まで抱えていやす。あっしの荷物まで預けたらいくら蓮さんでも堪えるってもんじゃございやせんか?」

 九兵衛の言う通り、既に蓮左衞門は自身の身の丈ほどの荷物を背負い、その中には滝之助がやっとこさ持ち上げた千両箱まである。どう見積もっても常人では考えられない荷物の量であった。

「な〜に、心配には及ばぬ。拙者には今背負う荷物量の倍はいける自信があるでござるよ」

 蓮左衞門は平気な顔をしてそう告げた。お銀や雪舟丸に比べてやや影の薄い人物かと思いきや、やはり光圀が手間をかけ呼び寄せただけあり、この男の怪力もまた常軌を逸している。

「そ、そうでやすかぁ...ではお言葉に甘えさせてもらいやしょう」

 九兵衛が背負っている薬や材料の入った大きな木箱を地に下ろし、遠慮がちに蓮左衞門へ渡した。

「ほいっと」

 蓮左衞門はその木箱を軽々と持ち上げ、荷物群の上に積みヒョイっとまた背負う。

「これで身軽になったでござろう?しかしこのようなことをしょっ中やっていたのでは九兵衛のためにならぬ。できる限り早々に体力をつけるべきでござろうな」

「も、もちろんでさぁ蓮さん。幸いなことにあっしはまだ若い。毎日鍛えていれば体力もつくでやんしょう」

 薬師の九兵衛は職業柄人体については殊の外詳しい。ゆえにしっかりとした根拠があっての言葉である。

「さて、豆粒ほどに見えるようになった先を行く三人に追いつくでござるよ」

「へい!行きやしょう!」

 背負う荷物が無くなり、手ぶら状態になった九兵衛は元気を取り戻していた。

 それから二人は遠くの前を行く三人に追いつくため、大急ぎで走り出したのであった。

 

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