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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ12

「ふぅぅぅ....」

 ほんの僅かな時間の中にて、夜叉の如く野盗の四人を全滅せしめたお銀が息を整える。   
 鍛え抜かれた忍びの殺人術たるやげに恐ろしいものであろうか。
 無論、忍者であれば誰でも出来ると言った芸当ではなく、忍者界隈の中でも特殊上忍であるお銀だからこそなし得た所業だったであろう。

 兎も角、彼女の凄まじい働きによって野盗の面々は一掃された。
 あたり一面の床板に赤い血が飛び散っているのを眺め、意図せぬ結果に憤りを覚え顰めっ面の仙花が怒鳴る!

「お銀!なぜ野党どもを全員斬ったのだ!?儂は此奴らに正しい道を選ぶ機会を与えようとしておったのだぞ!それを無惨に殺すとは......今すぐ理由を説明せい!」

 怒りの圧を肌で感じ取ったお銀が仙花の目の前まで近寄り、神妙な面持ちをもって片膝をつき恭しくも弁解を始める。

「僭越ながら申します。仙花様の人の命を尊ぶお気持ちは極めて貴重であり、手前も痛く感心する所存。されど、斬り捨てたこの野盗どもは、此処らの地で幾たびも人の命と財貨を奪い奴隷として連れ去る「芥藻屑(あくたもくず)」なる集団の片鱗にございます。首に巻く黒い下地に白文字で『下衆』とあるのが何よりの証拠。例え天下の将軍による言葉とて、此奴らを改心させるはまず間違いなく不可能かと...」

 お銀の弁解を聞くうち、怒りで上がっていた息が平穏を取り戻しつつある仙花。

「う~む。そのようなこととは知らなんだ。だがのう...」

 捨てきれぬ想いを伝えようとした仙花だったが言葉を飲み込み、お銀の言った悪党集団「芥藻屑」のことが気に掛かり意識を切り換える。

「まぁよい。して、その『芥藻屑』の溜まり場に心当たりはあるのか?」

「.....まさかとは存じますが。『芥藻屑』の一団を成敗しようなどとお考えでしょうか?」

 質問の内容と口調から察し、質問には答えず聞き返す。

「無論だ。其方の話しからすればその『芥藻屑』とやらを世のため人のためにも懲らしめてやる必要があろうからな。して、知っておるのか?」

 お銀は余りにも心変わりの激しい仙花の言葉に少なからず動揺していた。
 此処で真実を話してしまえば一行を巻き込んでの大事となることは確定的であろう。

「お銀、少しばかり待っておれ」

 なんと答えるべきか思案するお銀に仙花がそう言い、平伏したまま怯えている女子の父母に近づく。

「お主のらの大事な子どもは彼方で保護しておる。行って安心させてやるがいい」

 「子ども」に反応した父母が同時に顔を上げ父親が訊く。

「まっ、誠にございますか!?あ、ありがたや、ありがとうございます。差し支えなければ命の恩人である貴方様のお名前を頂戴したいのですが」

「儂か?儂は徳川光圀の娘して徳川仙花と申す者ぞ」

 

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