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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ57

「蓮左衞門!無事かっ!?」

 射られた蓮左衞門を気遣い今度は逆に仙花が前面に立つ。

「骨には当たっておらぬゆえ心配無用にござる」

 骨に当たっていなければ擦り傷。とはいくまいが、蓮左衞門はさほど痛そうにもせず左腕に刺さった矢を軽く引っこ抜き、身に付けていた襷(たすき)を素早く解いて腕に巻きつけ止血する。

 矢の飛んで来た方向、中央社の屋根上から重厚感のある男の声が響き渡る。

「雷角よ!その部下どもの屍の山はなんだ!?俺は夢でも見ているのか!?」

 鷲尾雷角が紅の鎧に身を固めた男の方を振り向き、僅かに緊張した声で応じる。

「も、申し訳ございません韋駄地様。釈明のしようもなく...情けながら、そこの二人に皆やられてしまいました...が、この二人は拙者が片付けますゆえ、どうかお許しくだされ!」

 鷲尾雷角が詫びを入れた男こそ、今の今まで姿を現さなかった芥藻屑の大将「鬼武者の韋駄地源蔵」であった。
 蓮左衞門を射たのは弓を持つ姿からして彼で間違いないだろう。

「...現実味のない朝だが、やはり夢ではなかったのか...若い娘とたった一人の侍にに...我が軍は壊滅させられたのか...」

 不気味な漆黒の面頬(めんぽお)の奥で目を光らせた韋駄地源蔵が呟きながら弓を引き、仙花を狙ってギリギリと弓をしならせ矢を放つ!

「バシュッ!」

 凄まじい速さの矢が屋根上から一直線に仙花に突き刺さらんと向かったが!

「キィン!」

 彼女は風鳴りのハラで矢を軽く弾き飛ばしたのだった。

「お見事でござる!」

 仙花は韋駄地源蔵を睨んだまま目を離さず、背後から称賛の言葉を掛けた蓮左衞門に告げる。

「蓮左衞門。此処は其方に任せて良いか?というか任せたぞ。儂は奴を、鬼武者の韋駄地源蔵を殺る。絶対に勝つから余計な心配はするなよっ!」

「仙花様っ!」

 言葉尻を過ぎた瞬間、引き留めようとする蓮左衛門の声を無視した仙花が鷲尾雷角に向かって疾風の如く駆け出す!

「なんだなんだ!?」

 虚を突かれる形となった鷲尾雷角が仙花を砕かんと六角金棒を全力で水平に振る!が。

「トン!トン!」

「なっ!?」

 六角金棒の攻撃をヒョイと跳んで回避し、彼の脳天を足蹴にした仙花はその勢いのまま韋駄地源蔵の元へ向かった。

「あらら、行ってしまったでござる。こうなったらデクの棒のお主をさっさと倒して先を急がねばならぬ」

「そんな簡単に行かせるものかよ...ん?、いやおや、これでは俺が負けてしまう流れではないか!?死んでも行かせるか?いやいやこれも俺が死んで...ふぅ、侍!お前が此処で死ぬんだよ!」

 なかなか台詞が決まらず締まらない鷲尾雷角であった。

 

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