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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ39

 四人は仙花の策に同調し各々が了承の意思を示す。が、護るべき仙花の単独行動となるこの策に、お銀や蓮左衞門の心中は正直なところ穏やかではなかった。
 仙花の考えた策は、各個人の圧倒的戦力と不確かな敵情報を踏まえての確率論からのものであろう。
 同じ想いであると推測したお銀と蓮左衞門の二人は目を合わせ、「此処は致し方なし」と意思疎通を図る。

「お銀と九兵衛は囚われの者共と蛇腹より離れた場所で待機せよ。戦が終わるまではそこで民を護れ。ことが上手く運んだ暁には蛇腹に残る物資を民に配布するつもりだからのう...つまり、敵の主戦力には儂と蓮左衞門、それに雪舟丸の三人だけで当たることになというわけだ。作戦は以上だが異論のある者はおるか?」

「ございませぬ」

「無いでござる」

 お銀と蓮左衞門は口に出して応じ九兵衛は無言で頷いた。
 ただ一人何も反応を示さなかった雪舟丸が申し出る。

「その作戦では仙花様の負担が余りにも大きいかと存じます。西の門番は拙者にお任せ頂き、仙花様は蓮左衞門と共に東へ向かい、そこから単独で正面の門へお周りください」

「......よかろう。西の門は其方に任せたぞ」

 雪舟丸の実力を十分に心得ている仙花は申し出をあっさりと受け入れた。

 道中気絶していた九兵衛と眠りながら移動していた雪舟丸を除き、仙花、お銀、蓮左衞門の三人は夜通し歩き駆け続け、確実に睡眠不足であり体力も削られている。
 だが、少数で圧倒的多数の敵を相手にするならば、奇襲するのが定石というものであろう。
 よって、大多数の芥藻屑の賊共がまだ起きぬ、朝陽が昇る前の今をもって攻撃を仕掛けなければならないことを察する仙花が動く。

「時間的猶予は無い。早速やるぞ」

 そう言って素早く弓を構え、遠距離な中でも一番近い西の見張り台に立つ者に狙いを定める。

「バシュッ!」

 放たれた矢は凄まじい速さで真っ直ぐに飛び、威力も弱まることなく見張りの者の頭を貫き、声を上げることなくその場に倒れた。

「お見事にございます」

 と、お銀が称賛する間に仙花は東の見張りを狙い矢を放つ。

「バシュッ!」

 西の見張りと同じように東の見張りも倒れた。続けて南の見張りも撃破したかと思うと手を休めず、最後に最も遠い北の見張りに狙いを定め矢を放つ。

「バシュッ!」

 最後の見張り台の者も一発で射抜いてしまった。
 仙花がいとも簡単にやってのけた神業は、達人の粋に達した弓引きでも百発百中で完遂するのは不可能であろう。

 背後で眺めていた一行の方を振り返った仙花が告げる。

「いよいよ戦の幕開けだ。さっさと片付けてゆっくり寝ようぞ!其方らの武運を心より祈る!」

 

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