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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ70

 頭領同士である仙花と韋駄地の戦いは何十合と打ち合っても尚続いていた。

 「島原の乱」の終結後より歳を重ね、今や七十近くである筈の韋駄地の剣術は歳相応と成らず、年齢を重ねて鈍るどころか技や体術はより洗練され、「鬼武者」という二つ名の広まった当時と比べ明らかに強さが増していた。

 仙花が韋駄地の強さをどれほどのものと思って挑んだのかは分からない。無論、韋駄地の方も同じであったが、この勝負において彼女は劣勢に立たされている。

 それは彼女の姿にも顕れており、深くはないけれど腕や脚には切り傷が無数ある上、旅装束も刀によって数カ所が切り裂かれていた。

 片や韋駄地の鎧に古傷はあれど真新しい傷は見当たらない。つまり、仙花は此処まで韋駄地に対し一太刀も入れられずにいたのである。

 彼女は悪敵に興味は持たぬが強者とあれば話しは別だ。化け物じみた強さを持つ韋駄地に興味が湧き語りかける。

「...お主、驚異的に強いのう。芥五人衆の連中とは比べものにならん」

「くくく、そう言ってくれるな。普通の人間と俺を比較すること自体が間違いなのだ。あれでも俺は可愛い部下達だと思っていたよ。誰も寄り付かぬ化け物のようなこの俺に従い、付いて来てくれたのだからな」

「ほう、これは意外だな。人を思いやる気持ちがお主にもあったとは...ところで、戦っていてずっと気になっていたのだが...お主は本物の人間か?」

「.............」

 韋駄地は目を細め、仙花の疑問に黙して答えない。
 こうなってくると黙っていられないのが彼女の性分である。

「当たらずとも遠からず...か、それとも的のど真ん中を射抜いてしまったかのう。仮にお主が人間で無ければ何者なのか気になって堪らん。殺し合う敵に話すのもなんだろうが聞かせてはくれぬか?」

 仙花の問いかけに韋駄地の兜が微妙に動いた。

「.........貴様をあの世に送る前に語るのも一興、かも知れぬな...俺は七十年近く生きて来たが、己のことを話したのは島原の「天草四郎」ただ一人。...あの時死んだと聞いたが俺は信じておらぬ。だが生きていたとしても今は流石に死んでいるだろうな...」

 韋駄地は記憶を辿る途中で「天草四郎」のことを思い出し、仙花の質問とは無関係なことを呟き出した。

「おいおい。儂はお主が何者なのかを訊いておるのだぞ。さっきから何をぶつぶつ言っておるのだ?」

 さらに訊くが彼の耳には仙花の声は届かず、一気に記憶が蘇ったのかぶつぶつと独り言を続ける韋駄地であった。

 

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