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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ71

「...こやつ...己の世界に浸っておるのか...」

 寂しいかな。完全に存在を忘れられた仙花。黙して足元の瓦屋根の瓦を徐に一枚抜き取り...

「こらこらこら、儂を無視するでなーーーいっ!!」

「ブン!」

 一人ごとを続ける韋駄地に狙いを定めて思い切り瓦を投げつけた!

 瓦には彼女の力が十分に伝わり、風の如き速さで一直線に「ゴォォッ!」と音向かい韋駄地の頭へ直撃する直前!

「パッキィン!!」

 間髪反応した韋駄地は手刀で最も容易く瓦を真っ二つにしてしまった!

「...徳川光圀の娘とやら、いったい何をしてくれるのだ...俺が何十年振りかに過去の記憶を呼び戻すことがどれだけ貴重で稀なことだと思っている?」

 彼の意外すぎる反応と言葉に、「えっ!?なんだなんだ!?芥藻屑との戦の佳境の場面だというのに鬼武者は何を言っておるのだ!?ひょっとして天然が入っているのか!?」というような表情をする仙花が。

「そんなもん知るか!早よう儂の質問に答えい!」

 と、蛇腹中に響く大きな声でこれだけ言い放った。
 先ほどまで命のやり取りをしていた場面とはとても思えぬほどに場の空気は緩んでしまっている...

「貴様の質問?..............」

 どうやら韋駄地は一時的な物想いにふけっている間に、仙花の質問は完璧に忘れてしまったようである。

「お主は本当に人間なのか?それとも別の何かなのかという質問だ!」

 黙り込む鬼武者に痺れを切らし、面倒臭いと思いつつもわざわざ質問を教えてあげる仙花であった。
 改めて質問を聞いた韋駄地が元の怪しげで不気味な雰囲気を取り戻し、重々しくも口を開く。

「...そうだったな...俺が己のことを人に話すことなど何十年振りだが...かつて天草し」

「おい、待て!!!また物想いにふける気か!もう『天草四郎』とやらのことは思い出さんでよし!さっさと質問に答えよ!話しが進まぬではないか!」

 本来、島原の乱にて百人斬りまであともう少しというところまでいった鬼武者こと韋駄地源蔵には、仙花の一方的な質問に答える義理など微塵も、加えて言うならミジンコほどの義務や義理など無い筈である。だが、そんなことを語り手が言ってしまっては元も子もなく、本当に話しが進まないのは明瞭なる事実であるわけだが...

 それを知ってか知らずか、否、当然知るよしもない韋駄地がようやくやっとこさ返答する。

「俺は人間であって人間ではないのだろう...なんせ、身体に『鬼』を宿しているのだからな」

 

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