刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ74
「特別な怪異を身に宿す...おもしろいな」
蓮左衛門の返答に疑問に思える部分が他にもあったけれど、仙花はやはり特別な怪異」に喰い付き興味を示した。
そもそも「怪異」とはいったいどのようなものなのだろうか?
怪異という言葉は現実にはあり得ず説明のつかない「物」や「現象を」指すらしいが、怪異を可視化したのものが妖怪や化け物にあたるということも踏まえ、この物語では総じて「とにかく不気味で正体不明な存在」とでも解釈しておこう。
「おっと!仙花様に間違った解釈をして頂いては不本意にござりまするゆえ先に申しますが、無論、我ら四人はまごう事なく歴とした人間にござりますのでご安心くださいませ」
「うむ、それは言われずとも重々承知しておる。其方らの魂は人間のそれと何一つとして変わらぬからのう。だがなぜ儂が訊くまで隠していたのだ?」
蓮左衛門に代わり、目を開いた雪舟丸が落ち着いた口調で話す。
「別に隠していたわけではございませぬ。光圀様より『頃良い時が来るまでは話さぬ方が良かろう」とのお達しがあり黙っておりました。かなり早目の段階にあれど、その『頃良い時』が今になっただけに御座います」
「...じっ様がのう。しかし思うに、そのような気遣いをする必要が何処にあるというのだ?...」
「それについては様々な理由が考えられましょうが、光圀様からすれば仙人と怪異の相性なるものを最も危惧されていたように存じます。人間にとっての仙人は神に最も近く尊い存在であり、怪異とは人間に恐怖を与え害を成す悪を想像させるような存在で知られておりますからなぁ...」
「...なるほどのう。言わんとしていることはある程度理解したわい。して、一つだけ抑えておきたいのだが、其方らはその身に宿す怪異を制御できておるのだろうな?」
「...未だハッキリと申せませぬが、一人を除けば完全に...」
ここまで澄まし顔で話していた雪舟丸の表情が僅かに曇り、心にある迷いを感じさせる口調で応じた。
「其方の云う怪異を完全に制御できないであろうその一人とは誰だ?」
「...仙花様、詳しい話しはまたの機会というわけにはいきませぬか?この先を話すとなると拙者も慎重に考え言葉を選んで申さねばなりませぬ。今すぐに事が起こるのはあり得ぬと断言し約束致します。今は芥藻屑との戦に終止符を打つ事こそが先決かと...」
雪舟丸の重くなった顔を見てとった仙花が先程までの厳しかった表情を和らげる。
「...そうだな。終わりの近いこの戦。残った鬼を討ち幕引きとしようぞ」
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