一輪の廃墟好き 第6話 井伊影村の豆苗神社
さて、まだ話していなかったが今回の廃墟探索の目的地は「井伊影村」という村だ。
事務所から車で約3時間以上はかかろうかという僻地にあり、元々の数も少なかったらしいが現在の人口は150人を割るほどの過疎地でもある。
田舎を絵に描いたような「井伊影村」のことは偶然SNSで知ったのだけれど、アップされていた画像とコメントを見る限り、自然がおりなす美しい景観に囲まれ、子供達が水遊びできるほど綺麗な川が村の中心を流れているらしい。
今はほとんどお目にかかることのない大きな木製の水車の画像もあり興味をそそられたので、廃墟を訪れたついでに時間があれば寄ってみようと思う。
因みに水車の歴史は意外?にも古く、日本でも平安時代には登場し、農作物の加工などに利用されていたというから僕は畝ったものだ。
原材料が自然の産物である木材だとしても、その技術が現存する機械にも使われていると考えればこれはもう驚かずにはいられないだろう。
おっと!水車の話しは早々に伏せて置き、肝心な廃墟の話しをしておかなければ。
僕達が目指す廃墟は固有名詞なのだからひねりも何も無いけれど、ズバリと云
云って、無人となり管理する者が居なくなった神社である。
「神社」といえば神が祀られているだけに、荘厳で心が落ち着き身の引き締まるようなイメージを僕は持っているのだが、これとイメージが酷似するものとして「寺」がある。
神社と寺では信仰や作法に違いがあり、神社が信仰しているのは日本で生まれた民族宗教の「神道」、寺が信仰しているのは中国やインドから伝導された「仏教」なのだ。
流石に「作法」について話すと長くなりそうなので自粛しておこう。
とここで、車内に:流れる「ビートルズ」の曲を外の景色を眺めながら黙って聴いていた未桜が、くいっと僕の方を向いて口を開く。
「そう言えばぁ、今日行く神社の名前ってなんだったかな?確か笑っちゃいけないけれど笑っちゃうような名前だったような気がするんだけど」
「そう言えば」にあたる会話をした覚えはなかったが、ツッコミを入れるのも面倒だったので未桜の質問に即答する。
「『豆苗神社(とうみょうじんじゃ)だ』
僕の即答を聞いた直後、未桜は口に手をあててクスッと笑った。
あまり数多くの神社を知っているわけではないけれど、大抵の神社の名称はその存する地名などに由来したものが多い気がする。
井伊影村に在るのだから「井伊影神社」が妥当で適当な気もする。
果たしてどういったおもしろ経緯で「豆苗神社」などと野菜の名を付けたのだろうか...
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