orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第46話 愚痴

 霊感の強い未桜が目撃したであろう何かは取り敢えず放っておくとして、やっとこさ廃墟探索の始まりである。

 っと、その前に一つだけ云っておかねばなるまい。

 廃墟探索というものは基本的に、というか99%以上は人が利用していた建造物であろうと思われ、その廃墟が廃墟となる以前は個人や集団や団体の生活空間だったわけである。

 そのような生活空間に人が一人でもいれば、人生という名のドラマが確実に存在するだろうし、もし二人なら各個人のドラマとその二人が絡む別の種のドラマが生まれ、人数が増えれば増えるほど複雑なドラマが生まれることは深く考えずとも必然と云って良いだろう。

 僕が数ある廃墟の中から探索したいと思う廃墟を選択する際は、事前にその廃墟に関する情報を調べ、心霊スポットとされるものや事件、取り分け悍ましい殺人事件などのあった廃墟は避けて来たわけで...

 今回も気軽と云って良いほど呑気な意気込みで燈明神社を訪れたのである。

 だが此度は想定外にも程があるだろ!などとツッコミを入れたくなるレベルの情報を仕入れてしまった。
 しかも廃墟探索の現場を訪れた直後に。

 これが僕にとってどのような影響を与えるかというと、「嫌なドキドキ」がずっと止まらない状態で廃墟探索を行わなければならないといった次第であろうか。
 
 とどのつまり、心臓に悪いことこの上ないのである。

 さっきは何とか空元気を振り絞り、「探索を楽しもうじゃないか」と言えたのだけれど、霊感の強い未桜の余計な言葉によって僕のハート折れずとも、葉っぱの筋くらいの細い亀裂が入っていた。

 「此処で退いては男が廃る」、のは日本男児の端くれとして一向に構わないのだけれど、時間と経費がもったい無いし、淀鴛さんにも少しだけ悪いような気もする。

 それに何より興味だけは格別に湧き上がっていた。

 果てさて、まるで愚痴の如き内心を同じく内心で散々と暴露してきた今の僕は、廃墟と化した燈明神社の拝殿に入ってとっくに探索を始めていたものである...

 最初に目に入ったのは、拝殿前にある木製の大きな賽銭箱、だったであろう粉々に砕かれた木材だった。
 どう見てもハンマーか何かの鈍器によって破壊された賽銭箱は、箱として機能していた頃のお陰は微塵も感じられず、心無い者の仕業に違いないという虚しさだけが残る。

 拝殿の戸は辛うじて形を成していたが、同一人物にでもやられたのであろうか、骨組みという骨組みがバキバキに折れまくっていた...

 

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