orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第61話 例の方

「未桜、とても細やかな頼み事があるのだけれど、僕には視えない何かを、僕が視たくない何かを君が見かけたとしてもそこは黙し、よしんば現場検証が済んだあとで伝えてくれないだろうか?」

 例えば、霊感の強い未桜がこの不気味な雰囲気の裏庭で何か視たことを知ったとして、僕はとてもじゃないが焼死体のあった現場を冷静に集中して観察する自信が無かった。

「ハハ...ったくぅ、いいよぉ。たださぁ、さっきあっちで視えた人がこっちを凝視しているんだけどねぇ...まぁあとで詳しく話してあげる」

「っ!?だ、だからそういう情報は後にしてくれと言っているんだ。しっかり人の話しは聞いてくれ。特に雇用主である僕の言葉は聞き漏らさず理解するんだ。あと、そのお方が何処に立っているかは絶対に云うんじゃないぞ」

「ふぁ~い、了解っす」
 
 適当に返事をした彼女の口角が、微妙に上がったのを僕は見逃さない。
 こいつ、此処ぞとばかりに楽しんでやがる...
 
 というか、敢えて口にしなかっただけで何処となく感じてはいたけれど、やっぱり「例の方」がいらっしゃるようで...

 何度も繰り返し云っているが僕はこれっぽちも臆病な人間では断じて無い。しかし、頭脳は人より飛び抜けて良いとしても中身は至って普通の僕である。人の霊や怪異といった非科学的な類のものにはできれば遭遇したくないし、視たくもないのが本心であった。
 
 とりあえず事が済むまでは彼女の目を見るのは避けよう...

 

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